儚い想い
今回も楽しんでくれると嬉しいです。
ガタンと強い振動が体に伝わった。
「うっ……」
その強い衝撃で蓮は目を覚ました。
寝起きのせいでぼうっとしていた蓮だったが、なんとか自分の置かれた状況を確認すると一言言葉を発した。
「ここは……馬車の中?」
どうやら自分は移動している馬車の中にいるようだった。
だが馬車に乗った記憶など無い蓮は、酷く戸惑い混乱した。
取り敢えず外を確認しようと思って、窓を開けてみたがやっぱり何もわからない。
そうしてますます戸惑っていく蓮だったが、不意にメルヴィスの姿を見つけて目を輝かせた。
「メルヴィス!」
その叫び声にメルヴィスは気付くと、馬を上手く操りながら此方に近寄って来た。
「レン様!良かったです、目を覚まされて!」
そう嬉しそうに言葉を発するメルヴィスに、蓮は微笑みながら疑問を投げかけた。
「ねぇ、メルヴィス……どうして僕は馬車に乗っているの?それにこの馬車は何処へ向かっているの?」
その言葉にメルヴィスは微笑みながら答えた。
「私が意識のないレン様を馬車の中へとお運びしたのです。そしてこの馬車はアミュリデス帝国へと向かっております。」
アミュリデス帝国、その言葉に聞いて蓮は唐突に思い出した。
……エルがアミュリデス帝国の皇帝だった事を。
蓮はその時の苦しみを思い出してぽろぽろと涙を零した。
そんな蓮の様子を見たメルヴィスはギョッと目を剥くと慌てた。
「レ、レン様!如何なさったのですか!私が何か無礼でも……」
そう言ってあたふたするメルヴィスを他所に、蓮は何も言わずに窓を閉めると独り声を上げて泣いた。
『レン……愛している』
その言葉を思い出して、酷く胸が締め付けられた。
真実を知った時はいろんな感情がごちゃ混ぜになり、我を忘れて彼を強く責めてしまったが、冷静に考えれば蓮にだって分かっていた……エルが自分を騙していた訳ではないと。
きっと言い出しにくかっただけ……でも……
皇帝である彼がただの平民である女を……こんな僕を本当に愛してくれているのだろうか。
……彼の愛がわからない。
そんな事を考えていた蓮だったが、不意に酷く咳き込んだ。
その後の口内は鉄の味がして、思わず口元に当てた手を見るとその手は真っ赤に染まっていた。
……吐血したのだ。
「……はっははは」
それを見て思わず乾いた笑みが漏れた。
分かっていた……彼の愛がどうであれ、この恋の先には未来なんてないと。
もう時期僕は死ぬ……それに奇跡が起こって長く生きられたとしても……身分が違いすぎる。
……結局、彼とは……己の命よりも大事なエルとは結ばれないのだ。
でも……それでも……
僕は彼の傍に居たい。
そんな切ない想いを抱きながら、蓮は己を掻き抱くと静かに涙を零し続けた。
次回も読んでくれると嬉しいです。




