叫び
今回も楽しんでくれると嬉しいです。
残虐皇帝がエル……その衝撃の事実は蓮を狂わせた。
蓮は胸を押さえると顔を歪めた。
大好きな人に騙されていた……心を弄ばれていた……
この時何故か蓮はエルディアルトが真実を隠していた理由について、酷く歪んだ風にしか考えられなかった。
……悲しくて苦しくて……堪らなく彼が憎い。
そのエルディアルトに対しての憎しみが、蓮自身を犯してどす黒く染めた。
だがエル……残虐皇帝エルディアルトはそんな事は露知らず、膝をついている蓮にゆっくりと近づくと嬉しそうに笑った。
「ああ、レン……余はずっと……」
「来ないで!」
だが蓮はエルディアルトの言葉を遮って叫ぶと立ち上がり、涙を零しながら彼を睨みつけた。
「ずっと……ずっと!僕の事を騙していたんだね……」
その思いもよらない言葉にエルディアルトは目を見開いた。
そんな彼に向けて蓮は悲しげに話し続ける。
「ねぇ、僕を騙して遊ぶのは楽しかった?どうせ僕の事を騙されて馬鹿な女だと、心の中で嘲笑っていたのでしょう!」
「違う、余は……」
「今までの言葉も……僕に囁いた愛もどうせ全て偽りだったのでしょう!身分もない小娘なら何をしても良いと思って!僕は……」
そう言葉を続けようとした時、突然胸を鋭い痛みが襲った。
「うっ……」
余りの痛みに蓮は胸を押さえながら頽れた。
「レン!どうしたのだ!」
エルディアルトはそう叫ぶと蓮に駆け寄り、抱き起こした。
蓮は痛みと悲しみで涙を零しながらも言葉を紡ごうとした。
「僕は……本当に……エルを……」
愛しているのに。
その言葉は声にはならず、蓮は意識を失った。
目を開けると蓮はふわふわと浮かんでいた。
ああ、これは夢か……と一人納得すると共に、蓮は浮かびながら気ままに移動し始めた。
頬を撫でる風がやけに生々しい。
だが蓮はそんな事は意に介さず、現実ではありえない状況を楽しみながら移動し続けた。
そうしてどれ程経っただろう。
ふと人々の声が聞こえて来て、蓮は好奇心で其方に向かった。
最初は何があるのか楽しみで心浮かれていた蓮だったが、次第に人々が何を叫んでいるのかはっきりと分かり眉を顰めた。
「殺せ!殺せ!殺せ!」
「悪女を殺せ!」
その誰かをひたすら罵倒する声に蓮はかなり嫌な予感がして、さらに近づこうかどうか迷ったのだが……好奇心を抑える事は出来なかった。
そうして蓮は好奇心と恐怖を抱きながら移動し続け、遂に人々の騒ぎの中心をはっきりと目で捉えた。
そして言葉を失った。
騒ぐ人々の中心には断頭台があり、其処には汚れたぼろぼろの少女が一人立っていた。
人々はその少女にひたすら石を投げ、罵倒する。
「殺せ!殺せ!殺せ!」
その耳を塞ぎたくなるような言葉に蓮は顔を顰めた。
蓮は自分の姿が誰にも見えない事を利用して、少女の側に近づいた。
そして間近にその少女を見て、蓮は限界まで目を見開いた。
顔で判断出来なくとも……髪の色やその雰囲気から、その少女があの夢に現れた少女だとはっきり分かった。
自分より僅かに年下であろうその少女が何故、悪女などと呼ばれているのか。
蓮はそれを不思議に思うと同時に、この彼女を助けなければと強く思った。
絶対に君を助けるから!
そう思いながら必死に少女に触ろうとするが、空を掴むばかりで触れられない。
「どうして!どうして!」
血が出る程唇を噛み締めて焦る蓮を置いて、少女の死は近づいていく。
遂に少女は跪かされ、断頭台に無理やり両手と首を置かされた。
そして偉そうな一人の男が、屈辱的に顔を歪める少女に向かって吐き捨てた。
「何か言い残す事はあるか?」
その男の言葉に少女は必死に前を向きながら声を張り上げた。
「私はこの国の女帝!セルティア・レバン・アミュリデス!例え死のうとも、我が想いが消える事はない!」
そういうと少女は目を閉じた。
夢ならばどうか自分の思い通りに彼女を助けてほしいと蓮は心から願い、必死に叫んだ。
「やめて!殺さないで!」
だがそんな願いも虚しく刃が落とされ少女の首に……というところで蓮は目が覚めた。
蓮は勢いよく起き上がると手で強く胸を押さえた.
胸が苦しくて心が悲しくて……涙が溢れて止まらない。
あの少女が一体何をしたというのか。
『殺せ!殺せ!』
あの悍しい言葉が耳から離れず、少女の顔が忘れられない。
どうして……殺したの?
「あっあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
蓮は絶叫すると再び意識を失った。
次回も読んでくれると嬉しいです。




