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残虐皇帝の花嫁  作者: 雪斗
15/26

今回も楽しんでくれると嬉しいです。

残虐皇帝の前で舞を披露してから一週間が経った。

今夜も蓮はエルとあの前の場所で会う約束をしていた。

 

蓮は頬を緩ませるとエルに想いを馳せた。

何故か彼の笑顔が頭から離れなくて、胸が高鳴る。

彼は今何をしているのだろう……そんな事ばかり考えてしまう己に戸惑うと共に頰が染まった。


そんな風にぽやぽやしていた蓮だったが扉がノックされる音にハッと我に返ると、急いで表情を引き締め口を開いた。


「どうぞ、入ってください。」


扉から現れたのはエマだった。

蓮は親しい友であるエマの登場に喜ぶと微笑んだ。


「エマ!」


そう声を弾ませたが、いつも以上に真剣な表情をするエマに蓮は眉を顰めた。


「……どうしたのエマ?」


そんな蓮をエマはじっと見つめるとゆっくりと口を開いた。


「……二週間後、私達は此処から追い出されるわ。」


その言葉に蓮は衝撃を受けて固まった。

……考えても無かった。

だが突然だ……こんな王宮にずっと居られる筈がない。


衝撃を受けて目を見開く蓮を見ながら、エマは話し続ける。


「私やリサ、レメイアは大丈夫よ。この世界の事についてよく理解しているし、頼れる家族も居るから此処から追い出されても生きていける……だけど、レン……貴方は違うわ。貴方は召喚された身。それ故に身寄りもいなければ、この世界の事について何も知らないでしょう?」


その言葉に蓮は目を見開いた後、悲しげに目を伏せた。

エマの言う通りだ……自分でも理解していた……だけど……

考えたく無かったのだ……身寄りもなくてお金もない……そして住む家も無い。

そんな自分の事など考えたく無かった。


そんな蓮をエマは心配そうに見つめた。


「レン……貴方はこれからどうする気なの?」

「分からない……」


何処まで行っても暗闇しか広がっていない自分の未来に思わず目眩がした。

そうして暗い表情をする蓮をエマはじっと見つめ、ふわりと優しく笑んだ。


「レン……貴方さえ良ければ、私と一緒に暮らさない?私が嫌ならリサでもレメイアでもいい……私達と一緒にこの世界で生きましょう。」


その言葉に蓮は目を見開いた。

そんな蓮をエマは愛おしそうに見つめると抱きしめた。


「レン……何も心配しないで……私達が傍にいるわ……」


それを聞いてとうとう蓮の涙腺は崩壊した。


「エマっ……エマぁぁぁぁ」


涙が止まらない。

胸が苦しくて温かくてよくわからない。


蓮はエマの胸の中で子供のように泣きじゃくった。

そんな蓮の背中をエマはいつまでも優しく撫でていた。



















綺麗な月が闇を照らし、冷たい夜風が吹く。

そんな肌寒い外を蓮は一人で歩いていた。

思い出すは今日の昼間の出来事……一緒に生きようと言ってくれたエマのこと。


蓮はそれを思い出して温かな気持ちになり微笑んだ。

だがその時のエマの優しげな表情が元の世界の両親を思い出させ、唐突に蓮は郷愁にかられた。


「元の世界に帰りたい……父さん……母さん……」


そう呟いて蓮はぽろぽろと涙を零した。

僕はこんな泣き虫では無いのに……そう思いながら蓮は袖で涙を拭った。


だが涙は全然止まってくれず、より溢れてくる。

……両親に会いたい……元の世界に帰りたい。

久しく忘れていたその感情に囚われて酷く胸が苦しい。


そうして蓮が泣いていた時……


「……泣いているのか……レン。」


背後からの聞き覚えのある声に蓮はハッと目を見開いたが、振り返らなかった。

どうか今だけはこちらに来ないで欲しい……貴方にこんな顔は……こんな弱々しい姿は見られたく無い……


そんな蓮の思いも虚しく、声を掛けた男……エルは蓮に近づくとその腕を掴んだ


「レン、どうして泣いているのだ……何かあったのか?」


その言葉に蓮は何も言わず首を横に振った。

……止まってくれないこの涙が恨めしい。


そう肩を震わせ静かに泣く蓮にエルは沈黙すると、優しく蓮を抱き寄せた。

そしてとても優しく言葉を紡いだ。


「レン……何も聞かないから思う存分泣くが良い……私は何も見ていない……だから大丈夫だ……」


その優しい気遣いと言葉に蓮の涙腺は本日二度目の崩壊を迎えた。

蓮はエルの胸の中で子供のように泣きじゃくった。

そんな小さな子供のような蓮を、エルはいつまでも愛おしそうに見つめていた。









次回も読んでくれると嬉しいです。

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