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残虐皇帝の花嫁  作者: 雪斗
13/26

心惹かれる

今回も楽しんでくれると嬉しいです。

エルは白い服を着ていたので、蓮からは白くぼやけて見えました。

闇の静寂が心地よくて月の淡い光が美しい。

蓮は手を繋いでいるエルに微笑みかけた。


「気持ち良い夜ですね。」


その言葉にエルは無表情のまま何も答えなかった。

そんな無愛想なエルは気にせず、蓮は変わらず話し続けた。


「僕は月が好きなんですよ……エルさんは?」


きっと答えてくれない……そんな蓮の予想は外れてエルは無表情のまま答えた。


「よ……私に好きなものなど無い。」


その冷たいエルの声音に蓮は少し悲しくなったが、それと同時にある人物を思い出した。


「……エルさんを見ていると何故か残虐皇帝を思い出します。」


唐突なその言葉にエルは僅かに眉を動かしたが、やはり変わらない無表情で蓮を見つめた。


「……何故だ?」


その言葉に蓮は柔らかく微笑むと月を見上げながら答えた。


「何故でしょう……ただ貴方の冷たい声音や人を寄せ付けない雰囲気……そして何処か虚しそうなところが残虐皇帝とそっくりで……」


それを聞いてエルは訝しげに眉を寄せた。


「残虐皇帝が虚しいだと?権力も美貌も有して尚且つ賢帝と誉れ高い……そんな全てを持つ男の何処が虚しいというのだ。」

「……ですが彼は何にも心動かさないのでしょう?」


その言葉にエルは微かに目を見開いたが、直ぐに顔を歪めた。


「心が何だというのだ?それに一体どんな価値がある?」


そんな馬鹿にしたような響きに、蓮はムッとすると言い返した。


「心はとっても大切ですよ!心動かされない人生なんて悲しい……エルさんは何かに心動かされた……心惹かれた事は無いのですか?」


それを聞いてエルは少し考えた後、ゆっくりと話し始めた。


「心惹かれる、それが私にはよく分からない……私は今までそんな感覚を味わった事など無かった……だが……」

「だが?」

「……つい最近初めて心騒めくような不思議な感覚を味わった……これは一体何なのだ?私には分からない……殺されそうになった時でさえ、私は何も感じなかったというのに……」


それを聞いて今までのエルの人生が非常に気になったが、蓮は変わらず微笑んだ。


「それがきっと心惹かれる……心動かされる感覚ですよ!」

「心惹かれる?この感覚が?」


それに未だ不思議そうな……実感の湧いていない表情をするエルに蓮はため息を吐いた。


「しょうがないですね……まだ理解できていないのなら、僕が再現してあげます。そうすれば心惹かれたかどうかはっきりと分かるでしょう?さあ、何ですか!一体何に……どんな事に心騒めいたのですか!」


そう言って勢いよく詰め寄る蓮にエルは後退りながらも答えた。


「ま……」

「ま?」

「ま……ま……ま、前髪を撫でて貰った時だ。」


そのまさかの返答に蓮は思わずずっこけそうになった。


「えっ……前髪?」

「……そうだ、前髪を撫でて貰った時。」


それの一体何処に心惹かれる要素があるのか蓮は甚だ疑問だったが、エルがそう言うのならば再現せねば。


蓮はエルの手から己の手を離すと、エルの前髪に手を伸ばした。

……だが少し届かない。


「エルさん少しだけ屈んで下さい。」


蓮はそう言ったのだが……何故かエルは蓮を横抱きにした。


「うわっ……えっ?」

「……これなら届くだろう。」


蓮は突然の事に暫し目を白黒させていたが、我に返ると頬を真っ赤に染めて叫んだ。


「何考えているんですか!下ろしてください!」

「どうでもいいから早く前髪を撫でろ……再現するのでは無いのか?」


自分だけ酷く戸惑ってエルが無表情というのがかなり癪に障った蓮は、エルの前髪を乱暴に撫でた。


「……痛い。」

「別に良いだろう!あんたが悪いんだからな!」


その突然雑になった蓮の口調にエルは驚いて目を見開いていたが、その後微笑んだ。


「お前……レンはその方が良い。」


蓮はそのエルの美麗な微笑みに暫し見惚れてたが、我に返るとフンとそっぽを向いた。


「で?今の髪を撫でる謎の行為には心騒めいたか?それでその心騒めく感覚が心惹かれる……心動かされる感覚だって理解した?」


それにエルは嬉しそうに答えた。


「ああ、理解した……これが心惹かれる感覚なのか。」


そう言って甘く笑うエルを見ていると、何故か顔の火照りが止まらない。

そんなエルに暫し蓮は見惚れていたが、我に返るとそっぽを向いた。

……そして小さく呟いた。


「ま……またあんたに会ってあげても良いけど?」


そう照れ臭そうに呟いた蓮に、エルは心の底から嬉しそうに笑うと頷いた。


「ああ、また会おう……レン。」


その言葉に蓮はそっぽを向いたまま花咲くように笑ったのだった。








次回も読んでくれると嬉しいです。

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