比翼連理
楽しんでくれると嬉しいです。
表現するのは男女の深い愛の契り。
蓮は柔らかく微笑むと曲に合わせて舞い始めた。
この舞は初めて見た天上の舞で、蓮が舞を習い始めるきっかけとなったものだ。
元の世界で生きていた時、蓮は何にも心惹かれる事なくただ代わり映えのない日々を送っていただけだった。
そんな中、蓮は死んで初めて知ったのだ……心惹かれる喜びを。
だから何にも心動かさないという残虐皇帝の話を聞いた時、蓮は哀れだと思った。
彼にも教えてあげたいと思った……心惹かれる喜びを。
だから今舞っているのは残虐皇帝の為でもある。
どうかこの僕の想いが彼に届きますように。
蓮はふわりと笑むとくるりと回った。
それによってスカートがふわりと揺れて、金属がシャランと音を立てた。
長い銀髪が陽光を受けて煌めいて、蓮のその美貌が華々しく輝いた。
蓮は全身を使い、優雅に美しく愛の契りを表現した。
しなやかな体故にどのような動きも艶かしく見えて、美しくなる。
蓮は場の全体を大きく使い、羽のように軽やかに薔薇のように艶やかに美しく舞った。
だが、ただ妖艶なだけで無く少女の可憐な美しさも含まれていて周囲に不思議な魅力を醸し出していた。
そうして何度も柔らかく美しく回り、その美しい肢体を妖艶かつ可憐に動かした。
皆が蓮の舞に魅せられているのが場の雰囲気で分かる。
蓮は嬉しくて幸せで本当に美しく微笑んだ。
そして蓮は舞いながら心の中で言い放った。
……刮目せよ。これが天上の舞である、と。
曲は終盤を迎えた。
蓮は今まで以上に大胆かつ激しく舞った。
大胆に白い足が曝け出されて全身が激しく動く。
だがそれでも艶かしさは消えず……否、より艶かしくなった。
そんな中突如として蓮の天上の舞に共鳴し、辺りの魔素が輝き出した。
そうしてその輝いた魔素が蓮を覆い、より華やかに蓮の舞を飾った。
それを見ていた皆は驚きと余りの美しさで、限界まで目を見開いた。
蓮はそれを横目で見ながら、更に扇を使いその魔素を操った。
煌びやかに魔素が舞って、それと共に蓮も激しく美しく舞った。
その蓮の舞の余りの美しさに皆が言葉を失った。
蓮は不敵に笑うと最後に扇を投げ上げて、膝をつき天を見上げて腕を掲げた。
その瞬間今まで以上に魔素が輝き、蓮の周囲に舞い落ちた。
そうして曲は終わり、天上の舞は終わりを告げた。
蓮は息を整えてから立ち上がると頭を下げた。
皆は暫し呆然としていたが、我に返ると盛大な拍手を蓮に送った。
蓮は残虐皇帝を見遣ると微笑んだ。
「如何でしたでしょうか……私の舞は。」
残虐皇帝は何も語らない。
それに対して蓮は不安を感じた。
……まさか天上の舞が……女神達にも勝ると言われた僕の舞が気に入らなかったのか?
そんな事を考えた時だった……突然背後に気配を感じて蓮は振り返った。
そこに居たのは、此方に刃物を向けた変態王だった。
どうやら刃物を隠し持っていたようで、皆が蓮の舞に見惚れている時に縄を切り此処まで来たようだった。
刃物を向けられる、という今まで経験したことのない状況に蓮は体を震わせた。
変態王は目を血走らせて蓮に怒鳴った。
「お前は私の為だけに舞えばいいのだ!」
その謎すぎる執着に蓮は鳥肌が立った。
……何故逃げずにわざわざ此方に来るのだ。
そうして変態王が刃物で蓮を刺そうとした時……突然背後から腕を引かれ、抱きしめられた。
変態王は蓮を抱きしめた人物を見て、顔を青褪めさせると刃物を落とした。
蓮は驚いて己を抱きしめた人物を見ようとしたが、突然襲ってきた眠気に意識を失った。
意識を失う直前に感じたのは、力強い人の温もりだった。
魔法があるなら魔素もあります……多分……
次回も読んでくれると嬉しいです。