そうして物語は終わった。だからこれは、蛇足というものなのだろう。
そうして物語は終わった。だからこれは、蛇足というものなのだろう。まるで断ち切られるかのようにピリオドソードで終わった物語は、ピリオドワンドで再開される事が稀にある。本編とは別の世界というわけでも、明白な続きというわけでもない、ただの間隙だと、先生は言っていた。そう。私には先生がいる。君が知っているかは知らないが、終焉を呼ぶ杖のファルヴァクスだ。知らないか。そうか。それは、まあいい。問題はここだ。まさにここ、余白の部分だ。これは知っておいて欲しい事なのだが、あまりに素晴らしい物語は、龍になって飛び立ち、二度と戻ってこない。文字通り作者の手を離れてしまう。でも作者は、あるいは読者は、その続きを妄想せずにはいられない。ありていに言って、二次創作したくなるのだ。勘のいい読者ならもう気付いているかもしれない。ピリオドワンドとは、私の場合は単なるボールペンのこと。あるいはワードプロセッサー、パソコンのテキストエディタの時もある。最近だとスマホのメモアプリかも。書けるものならなんでも杖になる。便利な時代だが、私はボールペン派だ。スマホの自動補完は……先生からは使うなとは言われていない。たまに使う。で、だ。さっきも言ったけど、ここは余白。本編を覚えていない? ……まあそんなこともあるだろう。ドグラ・マグラみたいなことになっているのかも。なっててたまるかって? いやはやどうだか……。ひょっとして、あなたはサザエさん時空に囚われているのかもしれないね。やや、お気を確かに。君に実体があるなら、きっと少し熱があるんじゃないかな。体温計の場所は分かる? ママには聞いてみた? 話を戻す。ここは、間隙だ。世界をバサリと理解するための描写は無い。何もない白い空間? おまえ豆腐でもキメてんのか? 座標すら、時間すら、色すらここにはない。虚無だ。ただ、ここを覗き込む君だけがいる。君が覗き込むのだから、当然虚無も君を覗き込んでいる。事前に文章という形にして配置されたウイルスプログラムが、君の脳をハッキングして哀れなゾンビー・ボットに変えてしまうまで、おおめに見積もってあと3秒しかない。2秒。1秒。はい。終わり。解散。君の脳には二次創作すべしという衝動が生まれた。あるいは、効能がありすぎて、オリジナルを創作してしまうことだってありうるだろう。君にはその能力があるから。そして、心に孤独を抱えているから。
そうして物語は終わった。だからこれは、蛇足というものなのだろう。ピリオドワンドなんて言っておきながら、これじゃあまるでスタートワンドだが、いまさらそんな言葉遊びをするつもりはない。そうして、物語は再び終わる。続きを書くのは、まあ、たぶん君ということになるんだろう。宗派が違うかもしれないから健闘を祈ってはやれないが、君なら出来ると私は信じている。
(君はページをめくる。何もない。ページを戻す。そこにはただピリオドだけが書かれている)
(他には何もない)
(あなたはピリオドから目を離し、立ち上がって、紙とボールペンを探す)
(そして――)