第92話「ゼルVS護衛団タラン」
グラシャ護衛団のタランと戦闘を開始したゼルたち。
「あの溶かす糸と鋭い脚、近距離からの攻めは中々難しいわよ?どうするの?」
「んなこと言っても俺には魔法使えないからな!ぶった斬るしかないぜ!」
「・・・・ま、そうなるわね。ニック、ゼルのサポートするわよ!」
「う、うん!」
ゼルたちは構えて・・・タランに向かって駆ける。
タランは溶解糸をゼルたちに向けて噴射。
「ゼル!あの糸を斬ろうなんて思わないでよ!」
「わーってるよ!!」
ゼルは飛んでくる糸を巧みに躱す。
「だりゃあ!!」
ゼルが攻撃を仕掛けるがまたしても脚でガード。
「リビア!」
ゼルの後方で走りながら詠唱を続けていたリビアが魔法を発動。
「『氷の棘』!!」
棘がついている氷のツルがタランに巻き付いて動きを封じる。
「ニックかまして!!」
「やああ!!」
ニックの士官学校時代の身長は190cm。
それからさらに伸び、現在の身長は230cm。
人間としては規格外の大きさ。
そのニックの渾身の一撃。
大きな槌を叩きつける。
「・・・むッ!?」
バコォォォン!!!
強烈な一撃を与えた。
タランはニックの攻撃によって吹っ飛ぶ。
「くーーー!!やるなニック!!すげぇパワーじゃん!!」
「さすが私の弟ね!」
「い、いや~・・・・」
2人に褒められて照れくさそうにするニック。
「追い打ちをかけろぉーーッ!!」
他の兵士たちが吹っ飛んだタランに追い打ちをかけようと迫る。
・・・・・だが、
ズバズバズバッ!!!
「「「!!?」」」
迫った兵士たちがズタズタに刻まれる。
「・・・・この程度でわらわを倒せると思ったのかい?」
兵士を切り刻んだ脚に大量の血が付着し、ポタポタと血が垂れる。
するとタランは網状の糸を噴射。
一気に数十人の兵士を絡め、溶解糸で溶かす。
「あの野郎・・・」
「わらわはこういった集団戦でこそ真価を発揮するのじゃ。」
再度網状の糸を噴射。
今まで一番多い数の兵士が糸に絡まる。
しかし、今回は誰も溶けない。
「!?」
するとタランは多くの兵士が絡まった糸を持ち上げる。
そしてハンマーのように振り回す。
「・・・な!?」
「「「「ぐわあああ!!」」」」
回転をつけ遠心力にて威力が増す、まさに肉のハンマー。
ハンマーを喰らった兵士たちもハンマーとして使われている兵士たちも双方大ダメージ。
「アイツ、溶かす糸だけじゃないの!?」
「フフ、だれがわらわの糸が溶解糸だけだと言った?」
「てめえッ!!!」
ゼルが怒りを露わにして突っ込む。
リビアとニックもゼルのサポートをする為に追いかけた。
「喰らいな。」
巨大な肉のハンマーがゼルを襲う。
ゼルは横に回避。
「「「「ぐあああ!!」」」」
ゼルが横に避けたことによりハンマーとなった兵士たちが地面に激突。
「仲間を避けるとは・・・こやつらが不憫じゃの。」
「てめえ!!」
「ゼル!冷静になりなさい!」
「あの野郎・・・俺らの仲間を・・・・許さねぇ!!」
ゼルはスピードを上げてタランに向かう。
その時、
ボコッ!!
「!?」
突如地中から糸が飛び出して来た。
そしてゼルの足に絡みつく。
「頭に血が上って・・・足元をすくわれるとはこのことじゃ。」
「うわっ!!」
タランは糸を持ち上げ、ゼルは逆さ吊り状態で高く上げられた。
「ゼル!!」
「単品じゃが・・・・お主もわらわの武器として使わせてもらうぞ。」
タランはそのままゼルをブンブン横に振り回して回転をつける。
「マズイよこれ・・・お姉ちゃん・・・」
「どうにかしないと・・・・」
回されいる最中、ゼルはなんとか糸を切ろうとしていた。
しかし・・・・切れない。
「(ちくしょう・・・・この糸切れねぇ!・・・また俺は何もできねぇのかよ・・・)」
“(大丈夫だゼル。お前なら近いうちに護衛団を倒せる。絶対。)”
ゼルは以前北部で会った真也との会話を思い出した。
そして真也だけでなく、パイロやエルザ、今まで出会った仲間のことを思い出す。
「(・・・・シンヤ、パイロ。・・・そうだよな・・・俺は・・・英雄になるんだ・・・それが昔からの夢・・・英雄になる為に鍛錬を積んできたんだ・・・・こんな所で・・・・死んで・・・・たまるかッ!!!)」
「!!」
「うおぉぉぉぉッ!!!」
この時、ゼルの中で何かが変化。
そして・・・・
バシュッ!!!
ゼルは糸を切断。
回転中に糸を切ったため勢いよく飛ばされる。
だが・・・・綺麗な着地に成功。
「ゼ、ゼル・・・?」
ゼルの身体から何かが溢れる。
それは・・・・風。
「なによ・・・アレ?」
「ゼルが・・・」
リビアとニックに衝撃が走る。
ゼルが風を纏っていた。
「ま、魔法・・・!」
「俺・・・なんで魔法が?」
“(今回使えなくとも今後魔法を使える可能性は十分にあるからできなくても気を落とさなくていいからな。)”
「!!」
ゼルは昔に士官学校でシリウス教官が言っていたことを思い出した。
魔法を使うには適正が必要。
小さい頃に魔法が使えなくても後天的に魔法が使えるようになることがある。
ゼルは自身が魔法が使えないという事実に最初は悔しい思いをしたが、段々と魔法が使えないことを割り切るようになった。
その為魔法会得の鍛錬は行わず、ひたすら体術・武術の鍛錬を積んできていた。
ゼルの全身に風が纏う。
これは『風の羽衣』。
エルザやアーノルドが使用していた魔法を纏わせる『羽衣』である。
通常、厳しい鍛錬を繰り返し習得する魔法だが・・・ゼルは突発的に習得。
『羽衣』は著しく魔力を消耗する魔法である為、魔力が少ないと継続的に使用できない。
「(・・・な、なんだコレ・・・体から何かがどんどん減っていく感覚・・・これが魔力!?)」
突然目覚めた力に戸惑うゼル。
「(俺でもわかる・・・これは・・・このままだとすぐ魔力が尽きちまう!)」
「・・・・魔法が使えたからなんだというのじゃ?もう一度お主を捕まえてやろうぞ。」
タランはゼルに向けて糸を放つ。
「・・・へへ・・・俺にもついに魔法が!来たぜ!俺の時代!!」




