第8話「魔法適正①」
=== 第一校庭 ===
体力測定一種目・・50メートル走
この世界の10歳児平均のタイムはどのくらいだ?
速すぎず遅すぎずでやらねば・・・。
真也は前で走る組をよく観察。
真也のステータスが他の者と次元が違う為、力加減のコントロールが難しいのである。
「うしし、シンヤ!俺と同じ番だな!負けねぇぜ!!」
運よくゼルと同じ走る番となった。
これはありがたい・・。
教官の掛け声と同時にスタート。
ゼルが先頭で突っ走る。
ゼルの速さは島の時から知ってる。
だからゼルより少し遅めで走っとけば・・ん?
ゼルの後ろを走っていた真也が周りを見ると誰もいなかった。
ゼルの足の速さは群を抜いており、真也以外誰もついてこれずにいた。
あ!!ミスった!!
ゼルに合わせたらダメなやつだ!!
結果、真也の50メートルのタイムはクラスで上位となる。
体力測定二種目・・・砲丸投げ
鉄の球を投げるのだが・・・10歳児にとってこの球は重い。
だが・・今の真也にとって鉄の球は綿あめを持っているかのように軽く感じる。
真也の番になり真也は深呼吸。
力の加減・・力の加減・・・加減をミスるな・・
軽くチョイって投げるように・・だがわざとらしく無いように投げないと・・
「アズモンド!早く投げんか!」
「!?・・あっ!」
真也はシリウス教官に急かされてしまった為慌てて投げた。
その結果、力加減を誤り歴代最高距離をマーク。
「すごーいシンヤ!あんな遠くまで投げれるなんて!!」
「お前そんな力持ってたのかよ!!知らなかったぞ!!」
「あ・・た、たまたまだ。たまたま・・・」
やってしまった・・・目立ちたくなかったのに・・・。
だが、もう目立たないようにする。
俺の平穏ライフのために・・。
—————その後も体力測定は続き、
「だはははッ!!また一番になったぜ!!」
ゼルが高笑いをする。
体力測定での種目は全部で九種。
そのうち真也たちは七種目終了。
ゼルは七種目中六種目でクラス一番の記録を出した。
「ゼルすごいなぁ~。」
関心するパイロ。
前から思っていたけどゼルの身体能力って周りと比べても結構高いんだな。
「ハァ・・ハァ。」
疲れた・・・
「シンヤ大丈夫?シンヤも頑張ってるね。」
頑張ってる・・・手を抜くのをな。
力を制御して臨むのって結構集中力と体力使うから疲れるんだな・・。
「やるではないかゼル君!!僕も負けていられないなッ!!」
「おうよトラ!!かかってこいや!!」
「ライカ君ももっと頑張りたまえ!!」
「・・・うるさい。」
「ゼルもトラも凄く頑張ってるね~。」
このクラスを見てて分かったことがある。
うちのクラスの人数は40人。
①超絶意識高い系・・・1割
②真面目に頑張る系・・・6割
③淡々とそつなくこなす系・・・2割
④そもそもやる気ない系・・・1割
といったように分類される。
ゼルやトラは①に該当。
パイロは②、俺は③。ライカは・・・④だ。
さっきゼルに絡んでたあの子は③。
今の世界の状況が状況だからな・・・この歳で既に危機感を持っている子が結構多い印象を受けた。
このクラスから何人が戦場へ出て生き残れるのか・・・。
————こうして実技訓練前半の体力測定は終了した。
結果的にゼルが九種目中八種目で一番を獲得。
「くそーー!!全部一番獲れなかった!!」
「でも凄いよ。さすがゼルだね。僕なんか全部下から数えた方が早いよ。」
「なーに言ってんだよパイロ!お前が運動苦手なのは知ってるけど、それでも一生懸命やってたじゃん!!どんな事でも真面目にやるお前が俺は好きだぜ!それにパイロの得意分野は違うとこだろ?」
「・・・うん。」
ゼルは結構ガサツな部分あるけど島にいた時から友達思いでもある。
「おーし!次は魔法適正に入るぞ!順番に並べー!!」
続いては魔法適正。
この世界の魔法の属性は火・水・雷・土・風・氷・光・闇・特殊の九属性。
只、全員が魔法の資質があるとは限らない。
むしろこの世界では魔法の資質がある者の方が少ない。
それが人類が魔物に侵攻され続ける原因の一つでもある。
魔法が扱える人間ていうのは希少なのだ。
「今からお前たちに9枚の紙を渡す。この紙にはそれぞれ各属性の魔法を発動できるよう特殊な魔法を施してある。その紙に一定量の魔力を込めれば自然に紙から属性魔法が放たれる仕組みだ。これは各自に見合った魔法属性を見繕うものでもある。」
「シリウス教官、質問いいですかー?」
「なんだ?」
「魔力ってどうやって込めればいいんですか?やったことないです。」
「よし、いいか?見ていろ。」
シリウス教官が紙を手に取る。
「紙を持ったら集中するのだ。この時の集中は目を開けてても閉じてもいい。紙に集中しろ。この紙の真ん中に目印がついているだろ?この一点の目印に神経を集中する。すると・・・・。」
ボアッ!!
教官が持っている紙から突如炎が飛び出す。
「「「オオオッ!!!」」」
「このようにこの紙を持って集中すれば誰でも簡単に魔法を放つことができるようになっている。だが、お前たちも知っているように魔法を扱える者は少ない。今回お前たちの中でも魔法が使用できる者は多くないはずだ。だが、今回使えなくとも今後魔法を使える可能性は十分にあるからできなくても気を落とさなくていいからな。」
「すっげー!魔法なんて初めてみた!!」
「それでは順番にやるぞ。」
「俺が最初にやりたいッ!!」
真っ先に手を上げたのはゼル。
「見てろよ~。」
ゼルは紙を手に持ち、集中する。
だが・・・・
「・・・・だぁ~!何にもでねぇッ!!」
「まだあと8枚ある。何かしら引っかかるかもしれんぞ。」
その後全ての紙で試すも魔法は出なかった。
「がーん・・・俺・・・魔法の才能ないのか・・・?」
結構ショックを受けている様子。
次にトラが挑戦。
ビリリッ!!
「「「おおおッ!!」」」
「ほう、お前は雷属性が使えるな。」
「うおおおおおッ!!僕に魔法が使えたぁーー!!」
「なにーーー!?トラが使える・・・だと!?」
トラはその後他の属性を試すが・・使用できたのは結局雷の1属性のみであった。
「1属性のみか!!悔しい!!」
「でもでも凄いや!魔法使えるなんて希少だよ!」
その後次々に生徒が魔法を試す。
だがやはり魔法を使用できる者は少なく、30人試したがそのうち3人しか魔法を使用できなかった。
「次、メッシーナ・パイロ。」
「・・は、はい。」
「パイロ頑張れ!」
パイロが紙に集中。
すると・・・
ボアッ!!
「!!」
「火属性が使用可能だな。」
「パイローーーー!!!すっげーー!!」
「僕が魔法を・・・?」
「次の紙を試してみろ。」
続いて別の紙を手に取り集中。
すると・・・
ヒュウ~
「!?」
「風属性も扱えるようだな。」
「2属性!!すごっ!!」
続いて水・氷・雷と試すが反応は無かった。
「あと4枚だ。」
「は、はい・・。」
パイロが手に取った紙は土属性の紙。
集中する・・・・すると、
ボコッ!
紙から土の塊が出現。
「「「うおおお!!」」」
「これで3属性か。」
「パ、パイロ凄すぎだぜ!!」
その後光・闇・特殊を試したが反応は無かった。
だが、この世界で3属性の魔法を扱える者は貴重である。
「やったなパイロ!!お前の得意分野は魔法ってことだな!!」
ゼルがパイロの肩を組み自分事のように嬉しがる。
「パイロ君!素晴らしいぞ!!」
トラは大きな拍手を送る。
「こ、こんな僕でも魔法・・使えるんだ・・・。」
パイロは両手を握りしめて嬉しさを噛みしめる。
「では次—————」
その後も順々に適正を行っていき、魔法適正の残りはシンヤ、エルザの2人となった。