第77話「天界裁判②」
=== 天界裁判所 ===
「・・・へ?証拠?」
「では、こちらをご覧ください。」
モニターに映し出されたのは一冊の本。
「この本の題名は・・【勇者のパッシブ一覧】。この本は女神ディーテの家の書庫にあった一冊になります。まずこの本の67ページ。」
モニターが切り替わるとそこには・・
「「「!!」」」
「・・ご覧ください。この67ページには【経験値倍】のパッシブ詳細の記載があります。そしてこの【経験値倍】の文字を囲む赤い丸が記されております。」
「・・・あッ!」
「さらに、89ページには・・・」
再度モニターが切り替わる。
「【ステータス上昇幅UP】の文字を囲む赤い丸が記されております!」
「「「!!」」」
「さらに93ページの【成長速度倍】にも赤丸が記されてます!!」
「「「!!!」」」
「【経験値倍】【ステータス上昇幅UP】【成長速度倍】、赤い丸を記した箇所、これは明らかに今回追加されたパッシブと一致します。」
「(それは昔に「このパッシブがあったらいいな~」と思って適当につけたやつ・・・)それは・・」
「異議あーーーーりッ!!!」
「「!?」」
突如弁護人が立ち上がり、異議申立ての言葉が発せられた。
「検察官、それは「本は女神ディーテの家の書庫にあった一冊」と言いましたね?」
「そうですが。」
「女神ディーテが住む家は他に女神ニケ、女神エイレと共にルームシェアをしてます。その為、その本に記されている赤い丸が女神ディーテ本人が書いたものであるという証拠とはならない!!」
「・・・確かに、この丸だけでは誰が記したのか分かりませんね。」
弁護人はドヤ顔。
「・・・次の画面をご覧ください。」
モニターが切り替わる。
「「「!?」」」
「・・・これは【経験値倍】【ステータス上昇幅UP】【成長速度倍】の詳細の下部分に書いてあったメモのような直筆の赤い文字。まず【経験値倍】の下部分に書いてあるのを読み上げますと「これマジ使える!絶対あった方がいい!」。次に【ステータス上昇幅UP】の下部分に書いてあるのは・・「経験値倍と組み合わせたらヤバい!」。【成長速度倍】の下部分には「これ半端ないって!3つ合わせたら無敵じゃん!このコンボ最強!」・・と記されてします。この記されている部分、筆跡鑑定をしたところ・・・女神ディーテの筆跡であることが判明しました。」
「・・・・。」
弁護人は論破され、しゅんとして静かに座る。
「弱ッ!!なんか余計不利な状況になっちゃったじゃない!!」
「裁判長、これはもう明らかに女神ディーテが意図してパッシブを追加したという紛れもない証拠です。」
「・・・被告人、どうなんですか?発言を許可します。」
「これは・・私がまだ勇者様を担当していない時、担当したらこういうパッシブをつけたいと妄想して書いただけです!偶然真也様の持つパッシブと私の妄想が合致しただけで・・」
「見苦しいわよディーテ!」
検察側から大声で叫ぶ女神エニュ。
「なッ!?アンタこそ何でっち上げて訴えてんのよ!」
「静粛に!!」
「アンタの方こそ焦ったんじゃないの!?確かに真也様はいかに平穏に暮らそうか考えて過ごしてたわよ!魔王を討伐する気は無かった!それは認めるわ!だけど力がバレたお陰で魔王を倒すことを決心したの!それに対してステータス的にも圧倒的上をいく真也様に自分の勇者様が先を越されると不安になってこんな事起こしたんでしょ!!あーやだやだ、そんなのただの嫉妬でしょ?アンタの方が見苦しいわよ!」
「こ・・・・の小娘がーー!!」
女神エニュは急に席から飛び出し、女神ディーテに掴みかかる。
取っ組み合いの喧嘩に発展し、全員で止めに入る。
「一時休廷!!一時休廷!!」
裁判は一時休廷。
双方取り押さえられ、2時間後に再開した。
「それでは続きを開始します。」
「この物的証拠がある以上、女神ディーテが勇者様のパッシブを追加したのは明白。裁判長!判決を!」
「(・・どうする?どうすればいいの?真也様が勝手に身につけたパッシブで・・このままじゃ濡れ衣を着せられてしまう!)」
「あの~宜しいでしょうか~?」
「「!?」」
傍聴席から手を上げる女性。
それは・・女神エイレだった。
「貴方は?」
「私はディーテちゃんと一緒に住んでおります女神エイレと申します~。」
「どうされましたか?」
「少し~お話させて頂いても宜しいでしょうか~?」
「検察側、彼女に話をさせても宜しいですか?」
「・・ええ。問題ありません。」
「・・では女神エイレ、前へ。」
女神エイレが法廷内中央に立つ。
「あの~、私は小さい頃からディーテちゃんと一緒に過ごしてきましたが~、今回のような事はしない子であることは間違いないですわ~。」
「・・・エ、エイレ~~。」
うるうる涙を浮かべる女神ディーテ。
「だがしかし、それはあくまでも貴方の女神ディーテに対する個人的な印象・感情です。何も参考になりません。こちらには女神ディーテが女神エニュの勇者様に負けないよう【勇者のパッシブ一覧】からレベル・ステータスが上がりやすいパッシブを探して見繕っていたという物的証拠があるのです。」
「・・え~と・・・」
女神エイレはポケットから何かを取り出す。
取り出したのは・・携帯。
「・・・なんですそれは?」
「これは私の携帯です~。小さい頃から機種変更してなくて~ずっと同じ携帯を持ってます~。」
「・・・それが・・なんですか?」
「え~と・・・」
携帯をポチポチ操作。
そして・・・
「私~、昔から写真を撮る事が趣味でして~。」
「?」
「小さい頃からず~っとディーテちゃんやニケちゃんを撮ってきました~。・・それでこれなんですけど~。」
女神エイレは携帯の画面を見せる。
その画面に映っていたのは小さい頃の女神ディーテと女神ニケ。
「これは・・・部屋で撮った写真ですか?」
「そうなんです~、この頃のディーテちゃんとニケちゃん可愛いですよね~。ウフフ。」
「は、はあ・・・」
「この頃からディーテちゃんはぐうたらでニケちゃんは活発な子だったんですよ~。」
「・・それが何か?」
「ここです~。」
女神エイレが写真のある部分を指さす。
「・・・・んん?・・・・ッ!!?」
突然驚く検察官。
「え?なに?」
「どうしたの!?」
「こ・・これは・・・」
「検察官、何を見たのですか?モニターに映し出して頂けますか?」
「・・は、はい・・」
女神エイレの携帯とモニターを接続。
携帯の写真をモニターに映し出す。
その写真には部屋で遊ぶ女神ニケ、そして漫画や本を散らかしてカメラに向かってピースをしている女神ディーテ。
「・・・・なに?この写真がなんだって言うの?・・・・ッ!!!」
「お、おい・・アレって・・」
法廷内がざわざわし始める。
「嘘でしょ・・・」
女神エニュが青ざめた表情となる。
モニターに映し出され、全員が見た写真。
注目したのは女神ディーテが何かを手に持っている部分。
手に持っていたのは・・・・一冊の本。
その一冊の本は見開いている状態。
女神ディーテが持っている本・・・それは【勇者のパッシブ一覧】。
さらに開いているページは・・・【ステータス上昇幅UP】のページ。
そのページには赤い丸と赤で書かれた「これ半端ないって!3つ合わせたら無敵じゃん!このコンボ最強!」という文字。
「これを撮影したのが大分昔なんです~。この頃のディーテちゃんは何かと落書きするのが趣味みたいなもので困ってたんです~。」
「そうだとしたら・・・今回追加する為に書いたものではないということ・・・だが、これだけはパッシブを追加していないという事にはならない!」
「う~ん、そもそもディーテちゃんはまだDランク女神なので~、本来勇者様を担当できないんですけどね~、それにDランクだと複数のパッシブ与えるのは無理だと思いますが~。」
天界に住まう神・女神にはランクがE~Sまで存在しており、
ランクが高いほど複数の勇者の担当が可能。本来勇者を担当するのはCランク以上である。
そして神・女神の能力の1つであるパッシブ付与もE~Dランク相当だとパッシブ1つを付与するのが限界。
ちなみに、
女神エイレ→Aランク
女神エニュ→Cランク
女神ニケ→Dランク
女神ディーテ→Dランク
となっている。
「・・なッ!?Dランク・・だと!?」
「エ・・・エイレ~~~~ッ!!!」
「・・ふむ。検察官、これだと女神ディーテが複数のパッシブを付与するのは不可能、立証もできず証拠不十分ということですな?」
「・・・は、はい。」
「では、判決を言い渡す!・・女神ディーテ・・・検察側の証拠不十分により・・無罪!」
「やったーーーー!!」
万歳して喜ぶ女神ディーテ。
一方悔しそうな顔を浮かべる女神エニュ。
「ただ~・・・」
「?」
「ディーテちゃんは最近食べては寝て~食べては寝て~の繰り返しだからそこは改善してほしいかな~。」
女神エイレのポッと出た発言で法廷内が静まる。
「・・・あれ?そういえば・・女神様の公務怠慢ってダメじゃなかったっけ?」
「たしか・・天界法第11条【神・女神はいかなる場合においても定められた公務を従事し、それを怠ってはならない】・・じゃなかったっけ?」
「あー、たしかに・・」
法廷内が再度ざわざわする。
「・・・え?いや、ちょ、ちょっと待って・・・」
「コホン、・・・女神ディーテ、この度の【勇者多重パッシブ罪】は無罪となりましたが・・」
「ちょっと待って!!一応転生の仕事はしてますよ!!」
「女神の公務は多岐にわたる。転生だけが公務ではない。それによってそなたを天界法違反により・・・」
「ままま待ってーーー!!」
「有罪とする!」
「えええええーーーッ!!?」
この日、天界中に女神ディーテの叫び声が響いた。
女神ディーテは公務怠慢の違反となり、禁固刑と罰金が科せられた。




