第76話「天界裁判①」
=== 天界 ===
天界の市街地から遠く離れた位置にある浮遊島。
この浮遊島は【天界裁判所】。
そして今、ある者がこの裁判所にて審判にかけられていた。
その者とは・・・
「ちょっと!!なんで!?私が何したのよ!!」
法廷の真ん中に立っているのは・・女神ディーテ。
「静粛に!」
「ひぃぃ!!」
「・・これより、女神ディーテの審判に取り掛かる。」
「ちょっと待ってください!なんで私がここにいるの!?」
女神ディーテが周囲を見渡すと検察官の横には女神エニュが座っていた。
「エニュ!!アンタ何でそこに座ってんのよ!!」
「被告人!静粛に!!」
「ひ、被告人!?」
「女神ディーテ、現在貴方にかけられている容疑は・・【勇者多重パッシブ罪】です。」
「・・・・へ?」
この裁判は女神エニュが告訴したものである。
法廷内にあるモニターに紙が映し出された。
すると検察官が席を立ち、女神ディーテに近づく。
「女神ディーテ、モニターに映っている物、これが何かわかりますね?」
「私が担当している・・勇者様のステータス表ですけど・・」
「そうです。これは紛れもなく女神ディーテが担当している勇者、小鳥遊真也様のステータス表になります。」
「・・これが何か?」
「このステータス表は勇者様がエスティアに転生する前のステータス。・・・次をご覧ください。」
モニターの画面がパッと切り替わる。
「そして・・これが最近の勇者様のステータス表です。」
「「「おおお・・・」」」
傍聴席がざわざわする。
「勇者様のステータスも気になるところですが・・・問題はここです。」
モニターに映し出されたステータス表をズームアップ。
「「「!!」」」
「・・・御覧になられた様に、勇者様のパッシブが・・・5つあります。」
「げっ!!」
「天空議会にて天界と魔界の双方で合意し、取り決めした法があります。それは・・・“一人の勇者に対してパッシブスキルは一つのみ”というものです。」
「いや、これは・・・」
「だが!この勇者様のパッシブは5つ!明らかに法に背いており、女神ディーテが意図的にパッシブを勇者様に与えた違法行為であるということです!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
「被告人は静粛に!!・・では被告人は席に、原告は前へ。」
「はい。」
女神ディーテは被告人席に座らせられる。
すると女神エニュが立ち上がり真ん中へ向かった。
「現在、私女神エニュが担当する勇者様と女神ディーテが担当する勇者様は同一世界に居ります。以前、私が女神ディーテの自宅に伺い、互いの勇者様の進捗をお話したところ・・・彼女はそれはそれは大層悔しそうな表情をしていました。というのも正直、女神ディーテが担当する勇者様はやる気が無く、世界を救う素振りも全く見せないお方でした。ですが!その後です!女神ディーテの勇者様は急激にやる気をみせてエスティアで活躍し始めました。」
「(・・・いや、やる気を見せたっていうか・・力がバレて腹をくくっただけなんだけど・・・)」
「よほど私の勇者様に先を越されるのが悔しかったのでしょう・・女神ディーテの勇者様のパッシブが規定数以上と発覚したのは私が彼女の自宅に行った後でした。これは紛れもなく先を越されまいとして女神ディーテが勇者様のパッシブを追加したに違いありませんわ!」
「ちょっとアンタ何言ってんのよ!!」
「静粛に!!!」
「さらに女神ディーテは女神らしからぬ行動も目に余りますわ。公務を惚けて自堕落な生活を続け、勇者様の転生作業しか行わない。先ほどの勇者様のステータスを見て分かりますように圧倒的なステータス。この小鳥遊真也様は今回も含めて10回もの転生をしております。しかも転生のスパンが異常に短い。皆様もご存知の通り、担当した勇者様が転生し魔王を倒すことによって女神にはポイントと報奨金が手に入ります。本来勇者様を担当する女神とは、勇者様のメンタルケアを行うことも公務の一つ。魔王を討伐した後はその世界で余生を過ごさせたり、天界に招いたりなどして一定期間休暇を与えるものです。・・・ですが!彼女はポイントと報奨金に目がくらみ、勇者様のメンタルケアはおろか、ろくな休暇も与えず直ぐに転生させています!」
「あちゃ~、痛いところ刺されたな~。」
女神ニケと女神エイレは傍聴席に居り、裁判を聞いていた。
「・・・ぐぐぐ。」
「己の私利私欲で勇者様を馬車馬の如くこき使い、女神本人は何不自由なく自堕落な生活を送る毎日。これが許されるのでしょうか?」
女神エニュの言葉に傍聴席にいた者たちは女神ディーテに冷たい目線を送る。
「被告人、前へ。」
女神ディーテは立ち上がり真ん中の席へ向かう。
その後検察官が女神ディーテに近寄る。
「女神ディーテ、貴方は女神エニュに先を越されまいとして勇者様にパッシブを追加した。間違いないですね?」
「ちょっと待って下さい!たしかに私は勇者様を直ぐに転生させていましたが、パッシブを追加するなんて行為は一切してません!むしろ皆様がご覧頂いたように小鳥遊真也様のステータスはもともと最初からチート級!過去現在の勇者様含めてステータスは歴代最高です!それに追加されたパッシブは全て成長促進系のパッシブ!今更成長促進するパッシブなんて追加する必要ありません!」
「・・・・たしかに。」
傍聴席がざわざわする。
「では何故小鳥遊真也様のパッシブが1つから5つになったのですか?」
「それは・・・真也様が自らパッシブを身につけたとしか・・・」
「勇者様が自らパッシブを?・・・それはあり得ません。パッシブとは神・女神が勇者様に与える恩恵なのですから。それゆえ・・過去に勇者様が自らパッシブを身につけた前例など無いのです。」
「それはただ前例が無いってだけでしょ!?真也様は異常よ!ステータスも異常だし!何から何まで習得しなければ気が済まない性格も異常!異常だらけの勇者様ですよ!?そんな異常だらけの勇者様が急にパッシブを身につけてもおかしくないわ!!」
「・・・異常って・・自分の勇者様を滅茶苦茶言うな~。」
「とにかく私はパッシブを追加なんてしてません!!ここに立っているのが不服です!!」
「検察側、何かありますか?」
「・・・では、証拠をお見せしましょう。」
「・・・え?」




