第63話「護衛団ラジャ」
=== グラム城塞・大広間 ===
フルーレ護衛団・ラジャ。
全身毛皮で覆われ、まるでライオンの様な鬣を生やしている魔物。
武器は強靭な肉体と自身の爪。近接戦闘が得意であり、フルーレ護衛団の最古参。
「ひっく・・俺はフルーレ護衛団の・・ラジャ。一応護衛団の中じゃ・・一番の古株よ。今まで人間なんて腐るほど仕留めてきた。最近は仕事が無くて飲んでばかりだけどな・・カカカ!・・ひっく。」
「・・た、ただの飲んだくれじゃねぇか!」
「なんか酔ってるように見えますけどチャンスじゃないですか?」
「こんな魔物初めて見たな・・」
ラジャの見事な千鳥足。立っているのもやっとの状態。
完全に泥酔しているのではと思う程。
「護衛団特有の圧も感じないし、一気に行きましょうよカレンさん!」
「・・・・よし、全員散らばれ!!左右中央から一気に叩くッ!!」
カレンの指示で兵士たちが大広間で散らばる。
「かかれッ!!」
そして一斉に攻撃を仕掛けた。
「・・ひっく・・・あー・・頭痛え・・・ちょっと飲み過ぎたか・・?」
カレンたちの剣がラジャに届きそうになった時、
「!!」
一瞬にしてラジャの姿が消えた。
ギシ・・ギシ・・
「上だッ!!」
ラジャは大広間に吊り下げられているシャンデリアの上に乗っていた。
だが、
・・・バチン!・・ガッシャーーン!!
ラジャの重みに耐えきれずシャンデリアが落下。
「・・いてて・・・ひっく・・」
「今だッ!!」
倒れている隙に再度カレンたちが一斉に襲い掛かる。
・・・・だが当たらない。
「なにッ!?」
全ての攻撃を巧みに躱すラジャ。
「おっと・・おっと・・ひっく・・」
まるで酔拳のようだな・・
「皆の者どけいッ!!」
ベンジャミンが高く飛び上がり強烈な一撃を加える。
ドォォォンッ!!
・・だが、ラジャはタイミング良くバク転して躱す。
さらにバク転した回転を利用して足でベンジャミンを持ち上げ・・投げ飛ばした。
投げ飛ばされたベンジャミンは壁に衝突。
「がはっ!!」
「・・・お・・段々酔いが醒めてきた・・かな・・」
「このッ!!」
兵士たちが攻撃を仕掛けるも全て躱され、且つ投げ飛ばされた。
「アイツ、本当に酔ってんのか!?」
「あーー・・・良い運動になった・・・お陰で酔いが大分醒めたわ。」
バキ・・ボキ・・
ラジャは首や手の関節を鳴らす。
=== グラム城塞・外 ===
一方その頃、オリンパス将軍とカルカノの激しい戦いが繰り広げられていた。
双方全く譲らない戦いぶり。
「フフ・・おそらく別働隊を城塞内に送り込んでいるのでしょう?」
「!?」
「本来の目的は別働隊を城塞に潜らせ、内側から門を開く。そして一気に城塞を落とす。そんなところでしょうか?」
「・・・・」
「そうなる事は予想はしてました。なので先にこちらが動いたのです。別働隊と言っても多くて精々数百人程度。であれば彼にお任せした方が早い。」
「彼?」
「先ほど申し上げた城塞の主ですよ。彼は強い・・なんせ・・次代の六天将候補なのですから。」
「!?」
=== グラム城塞・大広間 ===
「酔いも醒めたことだし・・お前ら人間をプチプチ潰すとするかな。」
ラジャが突如表情を変える。
その瞬間、圧倒的な重圧が全員に襲い掛かる。
「・・・なッ!?」
「ハァ・・ハァ・・」
強烈な重圧によって息することが困難になる者が続出。
膝をつき、前を向けない。
オイオイ・・・この感じ・・前に戦った六天将と同等の力だぞ。
コイツ・・ただの酔っ払いじゃなかったみたいだな。
「・・たったこれぽっちの人間じゃ俺は止められないと思うぜ?どうする?俺は優しいからよ。腕足1本ずつ献上したら見逃すのも考えてやるけど?」
「なんだと!?」
「ふざけるなッ!!」
「・・・へぇ、俺の威嚇でも立てるのか。結構骨あるなお前ら。」
ダメだ。殺されるな。
前に北部で戦った護衛団に歯が立たなかったんだ。
あれよりも数倍強いぞコイツ。
・・コイツこれで護衛団なのか。
仲間に死んで欲しくないから、下手にカレンたちは動いてほしくないが・・・今回ばかりは待ちスタンスだとその間に全員殺されそうだ。
「さてと・・何分もつかな?俺もなるべく長い時間楽しみたいからよ。楽しませてくれよ?」
真也は床に手を触れ魔法を発動する。
真也の触れた床から枝状に線が分かれ、さらに線が全体に伸びていき、線が全員の足に到着。
そして、
「・・うッ!?」
全員がバタバタとその場に倒れた。
「あ?なんだ?」
急に全員が倒れて困惑するラジャ。
真也が使用した魔法は『魔力吸収』。
他人の魔力を吸収する魔法である。
人や魔物は魔力が無くなると魔力欠乏症となり意識を失う。
真也は兵士全員の魔力を吸い取った。
「・・・これで良し。」
「・・・お前、こいつらは味方じゃないのか?」
「味方だからだよ。このまま戦闘してたら俺以外全員殺されちゃうからな。緊急措置だ。」
「なんだ?お前の命一つで全員を助けてくれと乞うのか?」
「バカか。んな訳無いだろ。俺が戦うのに邪魔なだけだよ。」
「カカカ!大した自信じゃねぇか!」
「・・・まぁ、自信はあるけど。」
「お前・・面白れぇなッ!!」
そしてラジャが戦闘態勢の構えをとる。
真也は・・ポケットに手を突っ込んでいた。




