第43話「タイミング」
=== べリア森林・最奥部 ===
「魔王様の為、ジズ様の為に・・我らがジズ護衛団が人間どもを皆殺しにする。それでゼストはどっちへ向かう?」
「・・・右だ。」
「了解。では私アマコム、エルドラド、パーム、リグルット、ビヨームの5人は左を攻めるとする。」
「・・・くそッ、俺は認めねぇぞ。」
「いつまで拗ねてんのよ。」
「では行くぞ。」
護衛団6匹が洞窟から出発した。
一方その頃—————
殲滅組は3回目の殲滅を終了。
=== べリア森林(右) ===
「ダフニス准将殿!各班重軽傷者の定期報告であります!」
「うむ、それで?」
「はい!左右合わせて今回も重軽傷者0人です!」
「・・うむ、今回選別した支部は質が良いな。怪我人も無し、順調だ。」
=== べリア森林(左) ===
「ふ~、疲れたな~。みんな大丈夫か?」
「うへ~、本当面倒くせぇな。」
「ハハハ!レイネスさん、もうへばったんですか?だらしない人ですね~!僕なんかまだまだイケますけど?」
「何言ってんのよ。アンタ足ガクガクじゃないのよ。」
「う・・」
敵を襲撃しては移動してまた襲撃。
朝からほぼノンストップで動いているからな。
さすがに疲れるか。
・・・俺は全く疲れないけど。
3回目が終了し、あと1~2個の群れを倒す必要がある。
この2、3回目で誰にも『分析』を使うことができなかった・・・
もう・・使わなくていいや。
全然魔力無い状態にしても問題ないか。既に全ての弾丸に魔力を込めてるし、魔力使わなくても敵倒せるし。
「ちょっとトイレに行ってくる。」
「僕も一緒に行こうか?」
「要らん!来るな!」
真也はトイレに行くふりをして皆から離れる。
そして、
「『創成』。」
真也は創成魔法を発動。
『創成』は物を作ることができる魔法。
真也が作ったのはシンプルな黒いブレスレット。
「こんな感じでいいか。」
作成したブレスレットをさっそく腕にはめる。
するとブレスレットをはめた瞬間、真也の魔力(MP)が最小限にまで抑えられた。
おそらくこれで自分のMPは27000から100くらいまで抑えることができたと思う。
100程度だったら魔法使えない設定でも不自然じゃないだろう。
それに、あとでベルに『精神操作』を使って記憶を改ざんするから少し魔力を残しておかないとならんし。
急激に魔力が無くなったとなればベルは不自然に思うだろうな。
だから今すぐ改ざんしないと!
「よし!!次の場所へ移動だ!!」
マリン上級大佐が全員に移動指示。
「シンヤー?どこー?」
真也は急いでみんなの所へ戻る。
そして次の場所へ向かって移動開始。
真也は距離を少しあけてベルの後ろを歩く。
・・・さてと、あとはタイミングだ。
不自然じゃないように実行する。
「あれ~?シンヤ何ベルちゃんをジッと見つめているのかな~?」
「黙れ。」
ブスッ!
「ぐわぁぁッ!!!目がぁぁッ!!」
絡んできたウェットの目を潰す。
「マイク大佐、ちょっと待って。」
「どうしたんだいベル?」
急にベルが歩きを止める。
そしてベルは森林の奥を見つめる。
「強い魔力が・・こっちに向かって来てるわ。」
「何が来てる?」
「何かまではわからないけど・・とても強い魔力。(・・でもなぜ?さっきまでこれほど強い魔力は感じなかったのに・・・)」
ベルに触れる良いタイミングがあればいいけど・・
魔力が見えているせいかあの子結構警戒心強いし・・・
どうするかな・・・
真也が下を向いてブツブツ呟きながら喋っていると、
ドン!
「おわ!」
「!?」
真也は下を向いて歩いていた為、ベルが立ち止まっていたことに気付かずにぶつかった。
突然のことで真也は尻もちをつく。
「あ、悪い悪い。前見てなかった。」
「大丈夫?」
ベルが真也に手を差し出す。
あ、チャンス来た!
その手を真也は掴む。
その時、
「!?」
「どうした?」
「・・・貴方、なんで魔力が無くなってるの!?(まさか・・今までこの人の途轍もない魔力が近くにあったせいで他の魔力に気付かなかった?)」
ヤベ、気付かれた。
・・だけどもう遅い。
その瞬間、真也は『精神操作』を発動。
ベルの「途轍もない魔力を持つ人」から「魔力が少なく、魔法が使えない人」に記憶を改ざんした。
「・・・・・はっ!」
「どうした?」
「・・い、いや・・なんでもないわ・・ごめんなさいぶつかってしまって。」
「いや、こっちこそ下向いて歩いてたから。」
この反応・・・成功だ。
これでベルの記憶の中に俺が魔力強いという認識は無くなった。
ふぅ、これで一安心。
「ベル!強い魔力っていうのは何体いるんだ?」
「・・1体だけね。凄い速さでこっちへ向かってくるわ。」
「誰か『索敵』使える者いないか!?」
「僕の出番のようだね!!」
ウェットがサーチを発動。
だがサーチに敵の魔力が引っかからない。
「まだ僕の範囲外に・・・いるね!」
「ホント使えねぇなお前。」
「ムキーー!!」
「他の誰か使える者はいないか!?」
「私使えます!」
すると同じ第5班である西部地方第11支部の女性が名乗り出てサーチを発動。
「!!」
「どうだい?」
「強大な魔力反応が1つ。こ、こんなの・・・私見たこと無い・・・」
「距離は?」
「ここから約3km程です!」
3km先まで索敵できるのか。
ウェットより全然優秀だな。
「見たことない程の魔力か・・・となると普通の魔物ではないね。カレン中佐。」
「ああ、おそらく護衛団以上の魔物がこちらへ接近しているとみていいだろうな。」
「マジかよ!また護衛団と戦うってか・・」
「大丈夫。相手は1匹。私たちの数ならなんとかなるさ。」
「凄い速度で向かって来てます!!」
「よし!第5班は戦闘用意!散らばれ!」
マリン上級大佐の指示のもと全員ばらける。
バキバキバキッ!!!
1分後、木々をなぎ倒しながら第5班の前に1匹の魔物が現れた。
その魔物の体長は約3m。口には鋭い牙を持ち、全身には棘のような物が生えている。
姿は獣だが体形は人間に近く、鋭い眼光で睨みつけている。
「大きい・・・」
「・・・人間ども、お前たちが最初の獲物だ。」
「普通の魔物じゃ・・ないよね?」
「・・・俺はジズ護衛団の一人、ゼスト。貴様ら人間は一匹残らず・・・殺す。」
この第5班が他の班より先進んでるから一番最初に出くわしたのか。
はぁ・・タイミング悪いな~。




