第40話「ベリア森林殲滅作戦」
=== グレスト要塞・外部 ===
本日の外の気温は氷点下20度。
この地域の最低気温は氷点下40度にもなる。
この極寒の地にて真也たちは・・・肌着1枚で訓練を行っていた。
「し・・死ぬぅーー!!あー!さみぃッ!!!」
「レイネスさん・・僕はもう・・・」
「ウェット!バカ野郎!寝ようとするなアホ!!クソ・・さみぃッ!!」
この極寒の環境で魔物と戦うためには慣れる必要がある。
「ほれ!文句ばかり言ってないで走れ走れ。」
「・・・シンヤ!!僕と勝負だ!!」
出たよ・・
「やだよ。」
「この寒い中で走って体を温めるんだ!!君も協力しろ!!」
「急激に体を温めるんじゃなくて徐々に慣らしていくのが目的だっての。」
「ムキーーー!!」
「シンヤの言う通りだ。この環境に慣れることが大事。まずこの寒さに慣れるんだ。」
「大尉!!」
「どうしたレイネス?」
「なーんで女どもは俺らみたいに肌着じゃないんだよ!不公平だろ!」
「そうだそうだー!」
「女性に肌着1枚でいさせる訳にはいかないだろ。だからいつもの軍服でやらせてる。それに・・・これは中佐の命令だ。」
「う・・」
「俺ら男性陣はこの肌着で頑張るしかないんだよ。ほら、頑張ろうぜー。」
この極寒の中での訓練。
めちゃくちゃ厳しい・・・。
本当寒いの嫌いだから早く終わって欲しい・・。
環境に適用できるよう、真也たちは外にキャンプを張って2日間過ごした。
—————そして作戦決行当日。
=== グレスト要塞・外部 ===
殲滅組には合計100支部、総勢1363人集まった。
「これより!!魔物の殲滅作戦を開始する!!私は今回の作戦で殲滅組総指揮を務めることになったダフニス・マニガン准将である!!」
殲滅組は100支部を5支部ずつで1班とし、合計20班を構成。
この20班には班ごとに班長が存在する。
真也たちの班は、
~殲滅組第5班~
①西部地方第64支部
②西部地方第11支部
③北部地方第25支部
④北部地方第99支部
⑤北部地方第102支部
この組み合わせとなった。
ま・・こんなに数いればゼルたちと一緒になれる訳ないよな。
「この第5班の班長を務めることになる北部地方第99支部のマリン・イエガー上級大佐だ!」
この第5班の中で一番階級が高い北部地方第99支部の人が班長となった。
「今回は各地方から応援が多く入った!その為!いつもより活動範囲を広め、多くの魔物を殲滅する!いいか!1匹でも多く殲滅するのだ!我々人類の領土を取り戻す!!」
「「「おおおおおッ!!!」」」
真也たち第5班は指定の場所へ向けて移動開始。
=== べリア森林 ===
【べリア森林】
グレスト要塞から直線の位置にあるモリビア平野の横に位置する森林。
モリビア平野は長年にわたり魔物との抗争によって焼け野原となっているため雪は積もらなくなってしまった。
その平野の左右に位置するべリア森林は魔物たちの休息の場として利用されている。
殲滅組は左右二手に分かれた。
総指揮を務めるダフニス准将率いる半分の班は右の森林を、もう半分は左の森林を進む。
真也たち第5班は左の森林、ゼルやリビアは右の森林。
「同じ班になったね。よろしく。」
「マイク大佐。」
マイク大佐率いる北部地方第25支部と一緒の班になった。
「私たちの支部メンバーを紹介するよ。みんなはもう知ってる通り、上級曹長のアレキミスト・ベル。そして・・」
「私はランバダ・ミオアダス。階級は曹長。宜しくお願いします。」
「クレン・マグワイアです!階級は少尉です!!」
「・・・ソミリア・エスカルゴ。階級は・・・中尉。」
「僕はロッチ・ミリタリア。階級は上等兵であります!サポート役であります!」
「私はナバス・ローリエだよー!階級は准尉!よろぴくねー!」
「俺はウインズ・マークットだ。階級は少佐。」
「私を含めて計8名が第25支部の面々だ。」
「全員の平均階級高いな・・・」
「ハハハ、前にも言ったけど北部は階級上がりやすいんだよ。」
真也たち第64支部の者たちも自己紹介を済ませる。
「これから向かう先はベリア森林。広大に広がるその森林に魔物たちが多くの集団を作ってる。」
「俺たちはその集団をいくつ程殲滅すればいいんだー?」
「4~5つの集団を殲滅する予定だよ。」
「ひゃ~、そんなにか・・面倒くせぇな。」
「サーチでそれぞれの場所は特定している。だからテンポ良く行こう。」
「僕もサーチ使えますよ!ふふん、僕が役に立つのでは?」
「おめぇのはたかが索敵範囲1㎞しかないだろーが。役に立たん。」
「ムキーー!!」
出発する前にここら辺一帯をサーチしてみたが、
ゼルの言った通りかなりの数の集団がある。
全部で87。
一つの集団にいる魔物は100~200匹だから約1万7千匹いることになる。
この数を20の班で分担することになるとマイクの言う通り一つの班で4~5個の集団を殲滅する必要がある。
俺だけならすぐ終わりそうだが・・・今回も目立たないようにする!
仲間を死なせず目立たず敵を倒す。
これが最善だ。
「最初の場所まであと20分だ。気を引き締めて行こう。」
「結構歩くな・・・」
各班同時刻で魔物への襲撃を開始する。
バラバラに動けば敵に逃げられて仲間を呼ばれる可能性があるからだ。
作戦決行まであと30分。
作戦ポイントまで到着した第5班はその場で待機。
決行時刻を待つ。
「ひゃー、結構いるな。面倒くさそうだなオイ。」
レイネスは双眼鏡で敵を観察。
「でも敵は本当に休んでるみたいね。」
「この隙を強襲するわけか。」
「先輩。準備整いましたー!」
今日の気温は相変わらず低くて寒い、だが雪が降っていない。
雪が降ってないので視界の邪魔になるものはない。
ただ・・・俺は後方支援の為、基本その場から動かないので寒い。
なので・・
「おっ、暖かいな。」
「マニカ特製の銃です!」
マニカに改造してもらった狙撃銃。
銃を構えてると冷えるのでグリップの部分に火属性魔道具を収納。
握ると暖かい。
寒さで手が硬直しないようにするためだ。
「これなら寒さはなんとかなりそうだ。ありがとうマニカ。」
「へへへ・・どうってことないですよ~。」
「そろそろ定刻に迫ってきた!各自持ち場へ移動だ!」
マリン上級大佐の指示で全員一斉に動き出す。
さて、今日も適当に且つ確実にやるか。・・・ん?
真也の後ろにベルが立っていた。
「ベル・・上級曹長?」
「貴方、なんでここにいるの?」
「?・・なんでって、俺は後方支援だからここに・・」
「そういうことじゃない。なんで貴方程の人が前線ではなく後方に回っているのかってこと。」
「!?・・・どういうことだ?」
「私はヒューマンや普通のエルフとは違う。その人が持つ魔力量が感じ取れるの。貴方・・・途轍もない程の魔力を持っている。・・・ここにいる誰よりも。」
「!!?」
げっ・・・マジかコイツ・・・そんなパッシブスキル持ってたのかよ。
そういえばこの世界に来て、パッシブスキルを持つ存在がいる可能性があること考えなかったな・・・。
「ねぇ、なんで?なんで貴方程の人が前線で戦わないの?」
どうする・・・何と言って誤魔化す??
「なあ・・俺の魔力ってそんなに凄いの?」
「ええ。私の目には貴方の体が異常なまでの魔力で覆われているわ。私が敵だったなら貴方を見た瞬間吐くわ。」
俺の魔力どんだけ垂れ流れてるの!?
・・この世界の魔物や人は魔法で魔力を感知することができる。
ただ、その者から発せられる威圧感、つまり重圧というのは実際肌で感じることができるが魔力自体を肌で直接感じることはできない。まして魔力を目視できるなんてことはあり得ないこと。
・・俺はやろうと思えば普通にできるが。
このままだとコイツから俺の力の話が広がり・・・くそ!全くの予想外だった!
正直人間相手に使いたくなかったけど・・・
真也が発動しようとした魔法は精神系魔法『精神操作』。
対象の精神を操作することができ、記憶の改ざんも可能である。
「待って。」
「!?」
「何をしようとしているの?私の目は魔力の流れも見えるの。今、貴方の指先に魔力が集中してる。何かの魔法を使おうとしてるのかしら?」
コイツ・・流れも見えるのかよ!
厄介すぎるぞおい・・。
「・・ハハハ・・まさか。この弾丸に魔力を込めようとしてたんだよ。」
真也の手に握られていたのは魔力を込められる弾丸。
「・・・そう。早とちりしてしまったわ。ごめんなさい。」
あぶねー!
たまたま握ってて良かったー!
「・・俺は事情があって前線には行けない。だからこうして後方にいる。この後方でも仲間を支援することができるからな。俺が後方にいる限り仲間は死なせない。」
事情ではなく私情であるが嘘は言っていないので下手な演技にはならなかった。
「・・・わかったわ。貴方の力、この戦場で期待するわ。」
ベルは真也のもとを去り、自身の持ち場へと向かった。
うわ・・・どうするか・・
ベルが誰かに俺の事を話したら絶対に・・・終わる!
こうなったら・・・気付かれずに、どこかのタイミングで・・・
アイツの記憶を改ざんする!
それしかない!!
—————作戦決行まであと3分。




