第4話「束の間の平穏」
=== エスティア 大陸最西端の島“ガラバ島” ===
真也はガラバ島に住むアズモンド夫妻の子として生を受けた。
父親の名前はアズモンド・ベルガ。
母親の名前はアズモンド・マティーナ。
そして俺の名前はアズモンド・シンヤ。
「シンヤ~!こっちよ~!!」
家の庭で母親であるマティーナが手を叩いて真也を呼んでいた。
俺は3歳になった。
歩行も完璧。
てか1歳の頃から既に走れるくらいになってる。
もともと最初から意識はあったので1歳過ぎてからは親の目を盗んでは本を読んでいた。
この世界の言語を学ぶためだ。
この世界の言語は結構単純なので習得には苦労しなかった。
まぁ、今までにあらゆる言語を習得してきたのでもう言語習得は慣れみたいなものだが。
そしてこの世界の現状も知ることができた。
・・・どうもこのエスティアという世界は今まで経験してきた世界とはひと味違うみたいだ。
この世界の3分の2は既に魔物に支配されている。
ここまで魔物の支配が進んでいる世界は初めてだ。
魔物の侵攻により、年々徐々に人類の領土が奪われ、人口も減少。
この世界には政府的な機関も存在するが魔物の勢力がどんどん拡大するので手に負えない状態らしい。
人類はどんどん西側へ追いやられているとの事。
そしてこのガラバ島は最西端。
魔物の侵攻から避難してきた者たちが最後に訪れる島。
小さい島なのでもともとの人口は約100人程度だったが・・・・
年々島民が増加し、今では1000人を超えてしまった。
だがこの島には女性と高齢者や子供ばかりが住んでいる。
というのも、
この世界には徴兵制度が存在する。
男性は15歳の年に例外を除き強制的に徴兵され、士官学校へ入学。2年間学校で軍事訓練を行った後現場配属となる流れだ。
ちなみに女性は志願者のみが兵士となれる。
今回の転生は力を隠してのんびり暮らしたいと思っていたのに・・・。
徴兵制度はズルい・・・。
必然的に魔物と戦わなければならない。
どうも人類が魔物に滅ぼされるのを現状の戦力で計算した結果・・あと20~30年しかもたないそうだ。
魔王を倒し魔物の勢力を弱めるのは今の俺なら簡単だろう。
ただ・・・・。
そうするとまたしても女神ディーテによって別異世界へ即転生されてしまう。
それだけは阻止しなければ!また同じことの繰り返し!無限ループだ!!
だから・・・。
力を隠しつつ、且つ魔物の侵攻を少しずつ遅らせる。
これしか無い!!
俺の年齢は3歳。徴兵まであと12年ある!
まずはこの12年をのんびり過ごす!!
だが・・・・・
「えー、徴兵の年齢制限が変更になった!!10歳以上の男は徴兵対象となる!!」
そう政府関係者が島へ知らせに来たのが俺が9歳になった時のことだった。
魔物の侵攻が予想よりも早く進み、徴兵の年齢制限を15歳から10歳に引き下げた。
だが10歳の子供に戦闘はまだ早い。
その為、本土にある士官学校へ入学は本来15歳からだが、10~15歳までの5年間、軍事訓練を行う取り組みとなったのだ。
俺が士官学校へ入学するまであと1年・・・・。
「ねえ、シンヤ。シンヤも行っちゃうの?」
声を震わせて俺に話しかけてくる少女がいた。
この少女はヒナ。
俺と同い年であり近所でよく一緒にいる女の子。
つまり幼馴染というやつだ。
「ああ、あと1年。1年経ったら本土へ渡って魔物討伐の訓練に参加だな。」
「やだよ、やだよ~!シンヤまで行っちゃうのやだよ~!!」
泣いて座り込むヒナ。
「ぐすっ、シンヤも行くなら私もいく~~!」
「アホ。お前が来ても役に立たねぇよ。」
「ひ、ひどい・・。」
「お前はここで自分が出来る事をやってればいい。んで俺の帰りでも待ってろ。この島の人たちが死なないように俺が何とかするから・・・な?」
「ぐすん、なんか・・・シンヤ大人っぽいね。」
まぁ200年以上生きてますからね。
士官学校へ入り、力を隠しながら島に被害が及ばない程度に魔物共を殲滅する。
なかなか難しいとは思うが・・・それをやらないとまた最前線に行かされるからな。
そして1年という月日はあっという間に過ぎ、転生してからの束の間の平穏は終わった。
今年島から本土の士官学校へ入学する10歳となった男子は俺を含めて3人。
俺たち3人は島民に見送られながら船に乗り本土へと向かった。