第32話「猛攻の丸薬」
「さぁ、あとはお前さんだけになったべ。」
「ふう・・・さて・・どうするかな。」
ミランダ以外の者は神経毒によって動けなくなり地面に這いつくばっている状態。
「くそ・・痺れが・・・」
「1匹1匹動けないところを触手で叩き潰してやってもいいべ~。」
「(さすがは護衛団だな・・今のところ俺しか動けない状態だ・・そういえばアリダリはどうした?アイツも毒を食らって動けない状態なのか?)」
「・・さて、どいつから潰してやろうか?」
「迷ってる暇はないようだな・・」
ミランダはアグロスに向かって走る。
触手がミランダを襲う。
襲い掛かる触手を躱しつつ、ミランダは鎖鎌を投げた。
「こんなもん叩き落としてやるべ!」
触手で飛んでくる鎖鎌を叩き落とそうとする。
しかし、
「!」
数多の触手をかいくぐりアグロス本体へと向かっていく鎖鎌。
「むむっ!?」
「俺はお前みたく自由自在に鎌を操れるんだよ。(狙いは・・・あの触手で覆われている中で少しだけ見えるアイツの顔!)」
ミランダの鎌がアグロス本体に届きそうになった時、
バシュッ!
鎖鎌が触手に掴まる。
「ぴょぴょぴょ!数が違うべ数が~。おめぇのはたった1本の鎌、オラの触手は無数にあるんだべ。届かない届かない。」
「・・想定内だよ。」
「ぴょ?」
その瞬間、鎖鎌が光り、突如氷魔法が放たれた。
無数の氷柱が拡散。そのうちの数本の氷柱がアグロスの顔に命中。
「ぎょえーーー!!」
顔に直撃したことによってたまらず後ろへ転げ落ちる。
ミランダの鎖鎌には氷魔法を発動する魔道具が仕込まれていた。
「俺の鎖鎌の弱点は鎌を取られたら何もできないこと。そんな弱点を放っておく訳ないだろ?」
「こ、このーー!」
アグロスは怒りを露わにし、触手が逆立つ。
「もう怒ったべ。おめぇはぐちゃぐちゃのミンチにしてやんべ。」
「ミンチになるのは貴様だ・・・」
「!」
まだ痺れが残っているにも関わらずカレンが立ち上がる。
「カレン!」
「なっ・・もう立てるんだべか!?そんな、オラの毒は強力だべ。数日はまともに動けないはずだべ!」
「お前が時間を少し稼いでくれたお陰で回復した・・」
「んなわけないべ!!どんな強がりだべ!!」
「ミランダ・・ここからは私がやる。」
「おい、カレン!無茶はするな!」
「私は少佐だ。そしてこの支部の長でもある。ここで私が倒れているままの訳にはいかんのだ。」
カレンはそう言うと軍服から何かを取り出す。
「・・カレン、それは!!」
【猛攻の丸薬】
人類が開発した身体能力を底上げ、限界突破するための丸薬。
つまりドーピングである。
だが、丸薬と言われているが実は毒性が強い薬。
猛攻の丸薬を使用している間は毒が体内に蓄積し続ける。
長時間使用していれば毒に体が耐えられなくなり、廃人と化すケースもある。
その為、毒を中和するための解毒剤は必ず持たされる。
「それはやめろ!もし戦いが長引いたら・・」
「・・長引かせないさ。すぐ決着をつける。だから・・」
カレンはミランダに解毒剤を投げる。
「それはお前が持っていてくれ。衝撃で壊れてしまうかもしれんからな。」
「カレン!」
「・・なんだべ?」
カレンは猛攻の丸薬を飲む。
「うっ!!」
体が急激に熱くなり、血が沸騰するような感覚。
そして・・カレンから凄い重圧が発せられる。
「なっ・・なんだべそれ・・急に雰囲気が変わったべ!」
「はぁ・・・・ゆくぞ魔物。」
剣を構え踏み込む。
一瞬のうちにアグロスへの間合いに侵入。
「な・・にッ!?」
だがアグロスも瞬時に反応。
鋼鉄の強度に硬化した触手をカレンに向けて放つ。
ズババババッ!!!
カレンは襲い来る数多の触手を瞬く間に細切れにした。
そして炎を纏ったサーベルで目にも止まらぬ連続攻撃。
アグロスは触手でガードを固めるが・・・
「な、な、な・・オラの防御が・・・」
次々にガードする触手を切断していき、ついに・・本体へと刃が届く。
「はぁぁぁッ!!」
カレンの剣がアグロスの体を斬る。
「ぎょえェェェッ!!!」
斬ったと同時に着火。
「熱いッ!!痛いべッ!!」
アグロスはたまらず後方へ避難。
霧の中へ消えていった。
「(たしかこの辺に水辺があったべ・・そこでこの火を消火だべ!この霧の中じゃオラを追うことはできんべ。)」
燃える体を消化すべく水辺まで走るアグロス。
だが、
「どこへ行く・・」
「ぴょッ!?」
カレンがアグロスに追い付く。
「な、なんでオラの位置がわかる!?」
「貴様の焦げた匂いを追っただけだ。」
「このッ!!」
触手がカレンを襲う。
しかし全ての触手を斬り落としアグロスの目前に迫る。
「くそっ・・・オラはこんなとこで・・・やられる訳には・・」
「消えろ・・魔物ッ!!」
ズバッ!!ズババババッ!!!
「ぴょッ・・ぴょ・・ぴょ!ぴょ!!」
カレン渾身の連続攻撃。
みるみるうちに触手もろとも斬り刻まれ・・・
「私の言った通りになっただろう?貴様が・・ミンチになると。」
アグロスは細かい肉片と化した。
そしてアグロスが死亡したと同時にマロア湿原を覆っていた霧が消えた。
「ほう・・霧が消えた。誰かが討伐したか。」
魔物狩りをしていたマッケンロー中将が空を見上げる。
「先輩!霧が消えました!!少佐たちがやったんですよ!!」
「ああ。」
これで邪魔な霧が消えた。
ここから人間側が戦況をひっくり返せればいいが。




