第26話「マロア湿原」
翌日、朝から各支部長たちが集合し会議を行っていた。
「・・・何?また行方がわからなくなっただと?」
「ええ。昨日うちの者に逃げた魔物の後を追わせたのですが、急に視界から消えていなくなったと報告がありました。」
「その場所はどこだ?」
「ここから北へ進み、マロア湿原に入ったところで消息が分からなくなったと。」
「マロア湿原か・・あそこはたしか霧が立ち込めている地帯だったな。」
「でもそんな濃い霧じゃないから簡単に見失うってことは無いと思うよ。」
「追跡には索敵魔法使用できる者も同行させ、消えた時に索敵しましたが反応が無かったとの事です。」
「となると・・確定だな。」
「ああ。敵の中に探知阻害系、もしくは消失系魔法を使う奴がいる・・か。」
「待て待て、もし消失系の魔法を使う魔物がいるとしてかなりの数を一度に消せるとしたら・・・とんでもない奴だぞ。」
「別に魔法が使えるのが1匹だけとは限らんだろう。複数いる可能性も考えられる。」
「だが最悪の想定はしておいた方がいい。」
「その通りだ。では今後どのような動きをするか考えようじゃないか。」
支部長たちの会議は3時間にも及んだ。
そしてカレンが真也たちのもとへ戻ってくる。
「カレンさんおかえり~。」
「カレン、どうだった?」
「方向性は決まった。これからお前たちに作戦内容を伝える————」
カレンは真也たちに作戦内容を話す。
そして各々準備を始めてベースキャンプを出発した。
「マロア湿原てとこは霧で視界が悪いのかよ・・面倒くせぇな。」
「シーンヤ!お菓子食べる?はい、あ~ん♪」
「はぁ・・・。」
「マーベルさん!そんな密着しないで下さい!」
「じゃあハルちゃんにあ~げる。はい、あ~ん♪」
「・・・あ、美味しい♪・・って違いますよー!マーベルさんもうちょっと緊張感持ってください!」
「いいじゃな~い。まだ道のり長いんだから~。」
湿地で霧ってことは湿気が凄そうだな・・・。
「マニカ。スコープのレンズを撥水性の物に変えてくれるか?あと曇り止めも塗っといて欲しい。」
「は、はい!!」
————真也たちが歩いて3時間。
マロア湿原に到着した。
=== マロア湿原 ===
【マロア湿原】
南部地方から中央地方に繋がる湿原。
北部地方から繋がっている川が大きく蛇行しながら流れている。
湿原の中には小さな沼が点在しており、小さく深い穴が開いている場所に水が溜まり底なし沼となっている箇所もある。
哺乳類や鳥、爬虫類や昆虫などの動物は1000種以上確認されている自然豊かな湿原。
昼夜問わず薄い霧が湿原を覆っている。
「ここがマロア湿原・・・。」
「広いな。」
「霧が濃いわね~。」
「ではッ!!これより魔物の捜索を開始するッ!!」
台に上がって馬鹿でかい声を発する大男がいた。
「ウェット、あの人誰だ?」
「なっ!?シンヤ知らないのかい!?あの方は南部地方統括のマッケンロー・ジース中将だ!!」
そういやこの世界で初めて将官クラスの人見たな・・。
一応あれがこの世界の中での実力者ってことか。
「見ての通りここは湿原!!足元が悪く、バランスを崩しやすい場所だッ!!しかも普段より霧が濃い!!十分注意しながら警戒は怠らずに進めッ!!」
「「「ハッ!!!」」」
兵士たちが一斉に湿原に入る。
真也は湿原に入る前に『サーチ』を発動。
湿原全体を索敵する。
・・・・ここら辺一帯には全然魔力反応が無い。予想通り魔物はステルス系の魔法を使って姿消してる臭いな。
「進め進めーーーッ!!敵を発見次第討伐!!」
・・・・待て?・・・いや、おかしい。
無さすぎる。
敵が魔法で反応を消しているのはわかる。
だが・・ここに生息する動物の反応までもが無い。
この世界の動物にも微弱ながら魔力は流れてる。
だからサーチでわかるはずなんだが・・・。
ピエ~
真也はふと上を見上げると鳥が飛んでいた。
そしてその鳥が霧のかかった湿原に入る。
「!」
・・・消えた。今の鳥の反応が。
同じ鳥がUターンして湿原から戻ってくる。
今度は真也のサーチに反応。
「まさか・・・」
「よーーし!僕たちも行きますかーーー!」
「待て!!今行くな!!」
「!?」
ドバァァァァンッ!!!
「「「うわぁぁぁぁぁッ!!!」」」
激しい轟音のあと湿原から大量の悲鳴が轟く。
「マッケンロー中将!!」
「何事だ!?」
「て、敵出現しました!!」
「敵は何匹いる!?」
「霧で正確な数は不明です・・・」
「くそっ!!」
先に突入していた兵士たちは次々に襲われ窮地に追い込まれていた。
「ククク、ダハハハハッ!!!てめぇら人間はここで皆殺しだッ!!!やれッ!!」
霧の中魔物たちが襲いかかる。
「こ、こいつら!どこからともなく出て・・ぐわぁぁぁ!!!」
霧の中に紛れていた魔物は先日戦った魔物とはレベルが違っていた。
さらにこの濃い霧の中で視界は塞がれ、兵士たちは後手に回る状況にならざるを得ない。
兵たちがやられてるのは状況でわかる・・・。
だが霧の中に入った兵士たちの魔力も感知できない。
つまり、どんな魔物がいて何人やられてるのか不明だ。
完全に誘われたか。
昨日の戦いは陽動の為の布石。
逃げた魔物を追わせてわざとここへ誘いこむように仕掛けたな。
「あの中で何が起きてるんだ!?」
「おそらく魔物の大群に襲われてるんだろうな。」
「僕のサーチで何も反応しないよ!?」
「あの霧だ。」
「?」
「ここら辺一帯を包んでいるあの濃い霧、あれが原因だ。魔物は消えたんじゃない。あの霧の中に入って身を隠し、こちらが侵入するのを待っていたんだよ。そしてあの霧は索敵阻害の魔法で外側から探知不可ってことだ。」
もともとここは霧が発生する湿原。
その霧に霧状の魔法をカモフラージュしてたって訳だ。
となると町を誰にも気づかれずに襲撃したのも・・この霧に紛れたってことか。
襲撃された町周辺も霧がよく出る地域だったらしいからな・・。
「うそ!?あんな広い範囲の魔法を展開してるの!?」
「カレンどうする?俺らもあの霧に向かうか?」
「・・・・。」
カレンは黙りこみ考える。
「アズモンド、あの霧が邪魔なのであろう?」
「ええ。何処かに魔法を発動している奴がいるはず。」
「この霧の中では我々が不利だ。64支部は魔法を使っている奴を叩きに向かう!!」
「でも少佐。その肝心な奴がどこにいるのか・・」
「アズモンド、お前はどう思う?」
「おそらくこの霧の中心部にいると思います。中心から魔法を発動させ霧を広く展開してるかと。」
「そうか。」
カレンは周りを見渡す。
そして湿原の全体を把握できそうな丘を発見。
「よし。私があの丘を登って全体を把握してこよう。それまでここで待機だ。」
「「「了解!」」」




