第2話「繰り返す転生」
小鳥遊真也は不慮の事故により命を落とした。
享年35歳。
だが彼は命を落としたのにも関わらず後悔の念は一切無く、またやり残したことも無く、35年という短い人生だが自分の思い描いていた通りの、他人より濃密で満足のいく人生を歩んでいた。
そんな死んだ真也の前に天界から女神ディーテが現れる。
女神ディーテは真也を異世界へ転生させることに決めた。
真也のステータスを見た女神ディーテは驚愕。
真也は何億人に一人という逸材だったのだ。
そしてさっそく真也をフェリドリアという異世界へ転生させたのであった。
俺の長い人生はここから始まった・・・・。
自称女神のディーテによってフェリドリアという異世界へ転生。
赤子から新しい人生をスタートさせた。
最初は心躍った。
見たことのない景色、魔法という概念が存在すること。
俺は新しい両親のもとですくすくと成長。
ステータスを引き継いだことによって明らかに周りとはレベル差があり、生まれた時から当時国家最強と謳われる戦士のステータスを上回っていたとの事。
だが、この世界の両親が過保護であったこともあり、本格的に戦いに挑んだのは10歳の頃。
魔法という概念がある世界だったが、俺は魔法は何一つ習得していない。
日本には魔法が無かったのだから当たり前だ。
だから最初にやることは一つ。勉強だ。
まず、異世界での字が分からなかった。
俺は日本語・英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・中国語・イタリア語・タイ語は既に習得している。
だけど異世界にそんな言語は存在しない。
よく漫画等である異世界の言語が都合よく日本語に聞き取れるという事は無かった。
だから一から言語の習得に励んだ。
この異世界の言語を習得した次は魔法書という書物を読み漁り魔法についての知識を深めた。
そして初めての魔法を実践。
何事も失敗はつきもの。最初から成功するなどあり得ない。
試行錯誤してトライ&エラーを繰り返し魔法を習得。
魔法を習得した次は武術。
剣道で全国優勝したことあるが、正直常に死と隣り合わせであるこの異世界ではスポーツである剣道は役に立たない。
だから実践で磨いた。
人や魔物と戦う訳だ。
死と隣り合わせの実践では何が起きるか分からない。
常に予測を立てて行動することが必須。
頭をフル回転させて集中を切らさないようにする。
まぁ・・正直このステータスなのでそこら辺の魔物の攻撃では全然ダメージを受けないんだが・・。
そうして魔法や武術を学んで魔王討伐へ向かったのが18歳の頃。
正直ステータスがこの世界ではチート級の為、道中特に苦労はしなかった。
あっという間に魔王がいる場所へ辿りつき、なんだかんだあっさり魔王を倒してしまった。
そして魔王を倒した後、どことなく女神ディーテが舞い降りてくる。
「お久しぶりで~す真也様!」
「お前!?なんでここに!?」
「なんでって、真也様が見事魔王を討伐したからですよ~。」
「今更来やがって・・・・お前、この世界に俺を転生させた後とか本当なにも音沙汰無かったな。」
「どういうことです?」
「普通、なにかサポートとかするんじゃないのか?」
「ハハハ!何言ってるんですか~?しませんよ~!!私たち女神は干渉してはならない決まりなので!それに普通って・・真也様の常識を私に当てはめないでくださいよ~。」
知らねえよそんな決まり・・・。
久しぶりに見るこの女神に対して無性に腹が立った。
「で?今更何の用だよ。魔王を討伐したからな。これで世界は平和。後はゆっくりのんびり過ごすとするか。それともこの世界でも事業してみるか・・・。」
「できませんよ?」
「なにが?」
「これからゆっくり過ごすことも事業することもできませ~ん。」
「は?それどういうことだよ?」
「真也様は天界でも話題なのです!もの凄い逸材の新人が現れたって!」
「だからなんだよ。」
「今各世界では勇者不足なのです・・。どの世界にも魔を退治してくれる存在が必要不可欠!そこで我々女神たちは他の勇者より頭が一つ二つ抜きん出て仕事が早い真也様に依頼することにしました~~~!!パチパチ~~!!」
「・・・・おい、まさか。」
「さすが察しが早いですね!真也様にはこれからあらゆる異世界へ転生してもらってその都度世界を平和にしてもらいま~~す!!」
「ちょっと待てッ!!何勝手に決めてんだッ!!」
「お願いしますよ~。ステータスと能力は今のまま引き継ぎますので!じゃあ次の行先は・・・」
女神ディーテは何か本を取り出してぺらぺらとページを捲る。
「おい!話し聞けって!!」
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な・・・・よ~~し!真也様!次はメリダルという世界に決まりました!!」
「いや、今適当に決めたよね!?」
「それじゃあ真也様!いってらっしゃ~~~い!!」
女神ディーテがウインク。
すると頭上が光り輝き、真也はその光の渦に吸い込まれていく。
「ちょっと待てぇぇーーー!!俺の意思はぁぁぁ!?—————」
俺はこうしてまた別世界へ転生することになった・・・・。
そして・・・・。
そこから俺は転生先の世界で魔王を討伐してはまた別世界への転生を繰り返したのだ。
・・・繰り返したのではなく、繰り返させられたのだ。
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————————————あれから何回転生したのだろう。
9回だ。
9回転生させられた。
1つの世界で大体20歳程生きるから約180年。
日本にいた時を含めれば215年生きたことになる。
毎回生まれ変わっているが・・・。
何回目かの転生時にわざと戦いに出ないようにしたこともあった。
だけど・・・転生した者の運命というか何というか・・・逃れられない運命というべきか・・。
どこかのタイミングで必ず戦いに巻き込まれるイベントが発生。
そしてそのイベントによって俺は勇者として認められ、魔王討伐の旅へ強制的に行かされることになってしまう・・・
だが・・・
まだそれだけならいい!
正直、今のレベルは最初の頃よりも上がっていて魔王なんて結構軽く捻り潰せるくらいの領域に達した。
その後が問題だ!!
魔王を討伐して平和が訪れた世界で平穏に暮らしたい・・・だけど秒で次の異世界へ転生されてしまう。
現場で働かせ続けて、その現場で仕事終えたらすぐ次の現場へ向かわせて仕事、仕事、仕事!!
俺は・・・・派遣バイトではないッ!!
なぜこうなった!?
あの時安易に「よし、じゃあ行こう」なんて言うんじゃなかった!!
圧倒的後悔・・・・・。
日本にいる時は後悔なんてしたことなかったが・・・ここでは後悔ばかりだ。
ああ・・・もう次の世界では働かんぞ・・・絶対に働かん。
イベントが発生してもスルーしてやる・・。
力を隠して生活してやるぞ・・。
「真也様今回もお疲れ様でした~~!見事マングニスタの魔王を撃ち滅ぼし平和を勝ち取ってくれました~~!!」
「はあ・・・。」
「おや?なんでため息つくのですか~?」
「・・・もう疲れた。」
「真也様にはまだまだ世界を救ってもらわないと困ります!」
「・・・知ってるか?毎回一から赤ん坊に戻って成長してその世界の言語を学ぶ大変さが。」
「さあ?私はどの世界の言語でも自動翻訳されるので全然困らないですけどね。」
この野郎・・・なんでこいつだけ便利な機能がついてやがる!
「なあ俺みたいなステータス持ってる奴は他にいないのか?もう200年も転生を繰り返してるんだからそろそろいてもおかしくないだろ。」
「それが・・・いることはいるんですけど~・・・数が少ないのでその方々も異世界転生をし続けてます。」
同業者がいたか・・・なんて不憫な。
てか危機に晒されてる世界多すぎだろ。
どんだけ魔物に襲われてんだよ。
「本当人手不足ですよね~。」
「仕事みたく言うな。」
「ではでは、真也様の次の転生先はエスティアという世界になりま~す!」
「はあ・・・、また一からか。」
「まぁでも今までの転生によってレベルも基礎ステータスも結構上がったんじゃないですか?」
「・・・まぁ、そら上がるだろうよ。でも俺はステータス見れんからな。実際どの位なのかわからんが。」
「じゃあ見てみますね~。」
女神ディーテはブツブツと唱えるとポンっとステータス表の紙が現れた。
「ふむふむ・・・・・・・・ゲゲッ!?」
「ゲゲ?・・・どの位になったんだ?」
真也は紙を受け取りステータスを確認する。
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なまえ:たかなし しんや
せいべつ:おとこ
しょくぎょう:ゆうしゃ
レベル:275
さいだいHP:46500
さいだいMP:27000
こうげき力:7350
ぼうぎょ力:5500
すばやさ:1200
かしこさ:7777
うんのよさ:100
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「レベル275って・・・。レベルって99が最高じゃないのか?限界突破してる感じだな・・。HPも4万超えてる。運の良さだけは変わってない。だが・・全体的にステータスの上がり方変じゃないか?こんな上がるか?上げ幅おかしくないか?」
「こ、こ・・・こんなステータスはもう・・・チートですよ!!チート!!最初から勝ち目無いじゃないですか!!こんなのに勝てる魔王なんているんですか!?」
「なぜ魔物側みたいな事を言う?」
「私は勇者が必死で戦って戦って戦って・・ギリギリのところで魔王を倒す・・・そんなシチュエーションが好みなんです。」
「お前の好みなど知るか。」
「これだと面白くないですよ~。これから転生時はステータスは引き継がずに毎回リセットしません?どうです?」
「しないわ。」
これだけのステータスがあればのほほんと生活してても何も問題は無いな。
・・・・・ん?
「ステータスの下に何か続きがある・・。」
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かしこさ:7777
うんのよさ:100
ぱっしぶ:ゆうしゃのさだめ
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「パッシブ・・勇者の運命?・・・・おい、これはなんだ?」
「それは・・・。」
「もしかして今まで平穏に暮らしててもどこかのタイミングで必ず勇者にされていたのは・・・このパッシブスキルのせいか?」
真也が女神ディーテを見ると女神ディーテは目を逸らした。
「・・・おい、どうなんだ?」
「ひゅ~・・ひゅ~・・・。」
鳴らない口笛を苦し紛れに吹く女神ディーテ。
「答えろ・・・・。」
「・・・・・はい。これは真也様のみに付与されたパッシブになります・・・。」
「消せ!!このパッシブは消せ!!」
真也は女神ディーテの頬を引っ張る。
「む、無理ですよ~~!!パッシブは一度設定したら二度と外せないものなのです~!」
「どうせこのパッシブはお前が勝手につけたんだろ!?」
「・・だって~、真也様が全然魔王討伐に出ようとしない時があったじゃないですか~。・・・なのでつい♪」
「要らんものをつけやがって・・・・。」
こんなパッシブスキルがあったら魔王討伐に行かされるのは必然。
・・・だが今回は行かんぞ。
断固として絶対に行かん!!
「ではでは!そろそろエスティアへ転生開始しま~~~す!!行ってらっしゃ~~い!!」
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————————————こうして10回目の転生が始まった。