第105話「冷静な分析力」
「儂の転移魔法の前では触れることすらできん。」
「・・・試してみるさ。」
真也は猛スピードでジズに迫る。
・・・しかし、ジズは一瞬で消え、違う場所へ転移。
「・・・・・。」
その後も真也は特に攻撃の素振りを見せず淡々とジズの後を追う。
ジズもまた真也が追ってくるたびに転移を繰り返した。
「さすがに反応は速いの。だが・・・それではまだ儂には届かんて。」
カレンや他の兵士たちはただ立ち止まって戦況を見つめていた。
「・・・なるほどな。」
真也は急に立ち止まる。
「・・・?なんじゃ?どうした?」
「・・・一応ある程度は分かった。」
「なにがじゃ?」
すると真也はグッと腰を落として低い姿勢で構える。
・・・そして力強く地面を踏み込み、ジズに迫る。
「速いッ!!」
今までよりも段違いの速度。
ジズは転移して躱す。
「速いがまだ儂を捉えることは・・・ボギャッ!!!」
ジズが転移した直後、真也の拳がジズの顔面に炸裂。
ズドォォォン!!!
ジズは勢いよく地面に叩きつけられた。
「ごはッ・・・・な・・・なぜじゃ!?儂に追い付ける筈が・・・」
「転移魔法使えるのはお前だけじゃないぜ?」
「!?」
真也は猛スピードでジズに迫り、ジズが転移した瞬間に真也自身も転移魔法を発動。
ジズと同じ場所に転移して攻撃した。
「だとしても何故儂の転移する位置が分かる!?」
「法則、距離、癖。」
「・・なに?」
「さっきまではお前が転移する位置の法則性や転移距離、癖を探してた。・・・つまり様子見だ。」
「なん・・・じゃと?」
「お前は毎回転移する時、必ず死角の位置へ移動する。さらに距離を十分にとることも分かった。」
「先ほどまでの執拗な追いは・・・分析、把握するため!?だが、儂の転移先の予測はあくまで大体の範囲!ここまでピンポイントに転移できたのは何故じゃ!?」
「・・・癖だよ。」
「!?」
「お前、転移する距離は寸分狂いも無くいつも一定。さらに・・必ず俺の真後ろか右側に転移するだろ?」
「・・・なッ!?」
「もしかして自分では気づいてなかった?あとは真後ろか右側の2択。」
真也はジズを追っている間ずっと冷静に分析していた。
「そこまで儂の分析を・・・だが・・・儂の事をぺらぺらと喋ってしまったことは余裕の表れか?お主が喋ったことによって儂は転移先を意識して変えるぞ?」
「別に問題無い。」
真也はそう言うとジズに向かって飛ぶ。
ジズは真也に指摘受けたことを意識し、真也から大分離れた位置に転移。
・・・しかし、
ボゴォォン!!!
「ボゲッ!?」
強烈な拳がジズに命中。
勢いよく吹っ飛ばされ、地面に落ちる。
「が・・・はッ・・・・何故じゃ!?」
「あー、言い忘れてたけど、お前の転移魔法のリキャストタイムは大体5秒弱。距離を十分にとるのはリキャストタイムを稼ぐためだろ?それに一定の範囲内であれば俺は自然に魔力感知できるから、お前が転移した瞬間にそこへ俺が転移すれば良いだけの話。」
「な!?だったら先ほどの2択というのは・・・」
「それはあくまで俺以外の奴がお前と対峙した際の対処法な。ぶっちゃけ俺には関係無い。お前の魔力がどこからか現れた瞬間に転移すればいいからな。」
「お主の今までの追いは何だったのじゃ!?」
「それはあくまで時間稼ぎ。」
「!?」
真也は自身の後方を指さす。
指さした方には・・・負傷した兵士たちが治癒を受けていた。
治癒を受けている中にレイネスとマーベルの姿もある。
「(・・な、なんじゃこやつは・・・規格外すぎるぞ・・・一旦ここは城に戻るべきじゃな。)」
この時真也はジズが退くことを察知。
即座に魔法を発動する。
「『絶対的領域』。」
真也から一定の周囲に淡い青色の半球体の結界が張られた。
その結界の中にジズも入る。結界の中に居るのは真也とジズのみ。
「なんじゃこれは!?」
ジズは一時撤退の為転移魔法を使用するが、転移した先は半球体の端っこ。結界の外に転移できない。
「ッ!?」
「これは結界魔法。悪いが、この中から外へ転移で出ることはできないぞ。」
「・・・こんな魔法まで使えるとは・・・」
「この結界の中では俺とお前の2人だけ。逃げ場は無い。」
「・・・・ホホホ。儂がここまで追い詰められたのはいつ以来か・・・よかろう!手加減抜きの勝負といこうではないか!」
すると突如ジズの体が変化。
筋肉が盛り上がり、身長も体格も先ほどとは比べ物にならない程大きくなった。
「自分からは手を出さないただの爺さんだと思ってたけど・・・・案外パワー押しの脳筋系か?」
「儂は元々己の腕力のみでのし上がってきた魔物じゃ。」
ドシドシと大きな足音を立てて一気に真也に迫る。
そして大きな腕を振り上げ・・・真也を殴りつけた。
ドォォォン!!!
・・・だが、
「ッ!?」
真也はジズの渾身の一撃を受け止める。
「そんな華奢な体でどこにそんな力が!?」
一度ジズは後方へ下がり、片腕をグルグル回転させる。
「?」
「これは儂の能力。回せば回すほど力が溜まる。儂の全力の力とお主の力比べといこうではないか!」
ジズの片腕にどんどん魔力が集中。
そして回し終えた片腕は異様な雰囲気を醸し出していた。
「これが儂の全力じゃぁぁッ!!」
思い切り地面を踏み込み、猛スピードで真也に襲い掛かる。
「力比べね・・・・って、んなことやるか!!」
真也は魔法を発動。
雷の槍を生成。
そしてその槍を・・・
「『雷槍』!」
向かってくるジズ目掛けて思い切り投げた。
真っすぐジズのもとへ飛んでいく槍。
バチバチッ・・・ズドォーーン!!!
槍はジズを貫通。
腹部に大きな穴を開けた。
「こ・・・の・・・・まだじゃぁぁぁッ!!!」
大きな風穴を開けた体でまだ真也に向かってくる。
真也は剣を抜き、向かってくるジズに対して剣を振り抜く。
ズバァァァァンッ!!!!
「にん・・・げん・・・・に・・・儂・・・が・・・やら・・・れ・・・」
ジズの体に縦の線が入り、ゆっくりとズレていく。
だがジズはまだ真也に向かってくる。
「魔・・・王・・・様・・・申し・・・訳・・・あり・・・ま・・・せん・・・」
ジズが真也の目前まで来たところで・・・
ドシャ!
体が完全に二分し地面に倒れた。
こうして真也は六天将ジズを討伐することに成功した。