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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

殺人

作者: 緑茶饅頭

初投稿です。

すごい不安ですが、ある程度は面白いと思っています。

ぜひ、読んで下さい。

ある夕暮れの一幕。

男は家にかえるために駅前の通りを歩いているところだった。

任されていた大手企業との契約をやっと結べたこともあって、男は家でどんなふうに妻に自慢しようかを考えていた。

そんな時、近くで女の悲鳴が聞こえた。

何やら、その方向で包丁を振り回している男がいるようだ。

そんな状況に初めて陥った男はすぐに逃げようと思いつつも、自分には何も起こらないだろうと少し見物しながら逃げることにした。

しかし、そんな男の方向へ包丁を持った男は走ってくる。

とっさのことだったが偶然反応できた男は、包丁を持った手を返すことに成功した。

高校の頃、友達に誘われて入部した柔道部がその時初めて役に立ったのだった。

しかし、その包丁は不運にも持っていた男の腹に刺さってしまう。

その男は痛みに悶えながら、そのまま動きを止めた。

はじめ、男は何をしたのかを理解することができなかった。

勿論人を刺すなど初めての経験だったし、まして死んでしまうなどとは思わなかった。

まぁ、男が悪かったわけではない。

むしろ、褒められたことをしたのだろう。

〜悪者を退治した正義のヒーロー〜

翌日のニュースではそんな言葉で男の勇敢さを褒め称えていた。


しかし、当の本人にはそんなことをした覚えはない。

はじめは何もわからない。

時間が経って、人を殺したのだと自覚する。

そして思い出す。

殺した相手の目を。苦痛に歪みながらもはっきりと自分を見据えていたあの目を。

お前さえいなければと訴えかけてきていたように男には見えた。

そこには、自分への恨みが込められていた。

周りの人間は誰も私を責めなかった。

警察は君は悪くないんだと慰めて、やったことは正当防衛になるので君に罪はまったくない。君がいなければ被害が増えていただろう。ありがとう。と正当性を教えてくれた。

妻は泣きながら、無事でよかったと抱きしめてくれた。

周りの同僚は心配しながらも、正義の味方みたいでかっこいいじゃないかと褒めてくれた。


ただ

ただ男は死んだ男の目を忘れることができなかった。

ふと、無意識にあの男は記憶の中に蘇る。

お前さえいなければ、自分は生きていられたのにと。

自分を責め続ける。

周りの誰も男を責めない。

しかし、自分の中の殺した男はただ責め続ける。

わかってはいる。自分は悪くないと。仕方のないことだったのだと。

しかし、自分の中の男はそれを許さない。

もっといい方法があったのではないか。

あの男は死なずに済んだのではないか。

殺す必要はまったくなかったのではないかと。

考える。

忘れようとも男はそれを許さない。

自分が正しいのだと信じても、男はいつも責め続ける。

男には家族がいたのかもしれない。

少なくとも両親はいたはずだ。

その家族は自分を責めているのだろうか。

男と同じように自分を責めているのだろうか。

恨みを込めて自分を見ているのだろうか。

そう思うとまた忘れられない。

忘れようとすればするほど、

恨みの目は大きくなっていく。

時間が経てば経つほど、

恨みの目は増えていく。



ある日男は気づく。

あぁ、いい方法があるじゃないかと。

恨みの目など、忘れてしまえる。

何も考えなくて良くなる。

いい方法があるじゃないかと。

そして、男は実行する。

あの男と同じように。

男は男を殺す。










おしまい


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― 新着の感想 ―
[良い点] とても文章が上手で面白かったです!これからも頑張ってください!!
[良い点] 緑茶饅頭さん、こんばんは!元はと言えば刃物持って突進してきた男が悪いけれど、不可抗力で殺してしまったことに悩む主人公は何て優しいんだろうと思いました。私だったら多分なにも感じません。最終的…
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