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8話 新しい仲間

 森の中は大木が生い茂っており、広大な迷路となっていた。

 空から降り注ぐ太陽の光を大木の枝や生い茂る葉が受け、こぼれた光はスポットライトの様な線状の光帯を作り出し幻想的に周囲を照らしている。

 普通の森ならば木の他にも雑草や小枝が所狭しと生えているので、前に進むだけでも一苦労な筈だがゲームであるこの世界では雑草や小枝などは殆どなく歩くだけなら不自由はない。


 また200m位の間隔で木が一本も生えていない平地が設置されていた。この場所なら大人数でも休憩が取れるし、モンスターとの戦闘も行いやすそうだ。

 しかし道中の地盤は起伏が大きく移動するのも重労働である。


 俺達は森に入って500m位進んだ辺りでついに新しいモンスターと出会う。


「ギャッ、ギギィー!!」

 

 現れたのはゴブリンで前作にも登場した雑魚に部類されるモンスター。

 身長130cm位で引き締まった身体をした小人のモンスターだが、性格は凶暴で低LVモンスターの中では知名度も高い。


「さっそく出やがったな。ゴブリンが全部で2体か…… よしスラ男一緒に行くぞ。アナマリアは後方で援護してくれ」


 ゴブリンに向かって俺とスラ男が近づく。

 ゴブリン達も俺達に向かって突進を始めた。

 

 スラ男だけで2体のゴブリンを相手させるのは荷が重いと判断し、俺は片方のゴブリンの前に躍り出る。


「お前の相手は俺だよ。仲良く戦おうぜ!!」


「ギャギャ!」


 油断はしていなかったが、突進してくるゴブリンの動きは思った以上に速く、大きな動作で振りかざした爪の攻撃を簡単に受けてしまう。


「やっぱり痛ぇぇ!! よくもやりがったなこの野郎」


「相馬くん、回復魔法いくのです。【天使の抱擁】」


 身体には爪状に4本ラインが胸から腹に書けて赤く浮かび上がり血がにじみ出る。

 

 前にスライムから攻撃を受けた時は攻撃方法が体当たりで確かに痛みは感じたが血など出ていない。


 しかし今回は爪で引き裂かれたからだろうか? 

 

 ゴブリンの攻撃で皮膚が引き裂かれ、血がにじみ出ている。痛みもあるが驚きの方が勝って言葉にならなかった。

 びっくりして固まっていた俺にアナマリアは回復魔法を掛けてくれた。

 そのおかげで血はすぐに止まり痛みもすぐに消え去る。 


「確かに血が出たよな!? マジか…… 痛いだけじゃねーのかよ。リアル過ぎるぞこのゲーム!! 糞ゴブリン野郎、次は俺の番だ必殺の一撃を喰らいやがれ!!」


 木の棒を振りかざしゴブリンの脳天に叩きつけるとゴブリンは2,3歩後退する。

 だけどゴブリンのHPを削りきるには至っていない。

 マッド・サイエンティストは戦闘職では無く、LV10になったとは言え攻撃力は戦闘職の半分位の力しかないかもしれない。


「LV10になったからと言っても一撃では倒せないって訳ね…… こりゃ大変だわ」


 だが確実にダメージは入っており、ゴブリンの頭上に浮かんでいるHPバーの表示は半分位まで減っていた。

 

 残り一、二回の攻撃でゴブリンを倒す事が出来ると分かり心に余裕が生まれる。

 

 そこで戦況を把握する為、スラ男の方へ視線を向けると果敢にゴブリンへ体当たりを仕掛けていた。

 スラ男のレベルも10になっているので、やや優位に戦闘を勧めているが何度かゴブリンの攻撃を受けていた。


 スラ男のHPバーが減少している事に気づき俺はアナマリアに指示を出す。


「アナマリア、スラ男の回復を頼む」


「任せて欲しいのです。スラ男くんも【天使の抱擁】を受けるのです」


 アナマリアは離れた場所からスラ男に回復魔法を使用する。

 光に包まれたスラ男のHPは全快まで回復していく。


「よし、これで安心だ。このまま倒し切るぞ」


 リズムを掴んだ俺達はゴブリンを倒す事に成功する。

 意外と経験値も多く、このメンバーで狩りを行うならゴブリンは適正モンスターだと思えた。


【ゴブリンをラーニングしました】


【ゴブリンの素材を手に入れた】


「また素材かよ。一度試してみたいけど…… もし【人体実験】が成功してモンスターの力を取り込んだ場合。俺の見た目ってどうなるんだ? もしモンスターに近づいたりしたら…… あぁぁ、駄目だ怖くてまだ使えねーや」


 使いたい気もしているが、後一歩勇気が湧いてこない。


「なぁ、アナマリア。【人体実験】のスキルを使ったら見た目って変わるのか?」


 このゲームの製作者であるアナマリアに聞いてみる。


「うーん…… 私には解らないのです。ノエルなら分かると思うのです」


「お前、夢の中でゲームをアレンジするとか言っていたけど、全然ゲーム内容を解ってないよな? それにノエルとか言う人は誰なんだ? 」


「私のお友達の天使なのです。私の代わりに大天使様と二人で、この世界を創ってくれたのですよ」


「へぇ~。そのノエルって人は中々良いセンスしてるよ。一度会ってみたいもんだ」


「うっ浮気は駄目なのです!! ノエルは美人なので会ったら駄目なのです!」


 アナマリアは頬を膨らませているが、俺はアナマリアと付き合っているつもりはない。

 だけど今それを告げると確実に泣かれてうるさいので黙っておく。


「まぁ新しいモンスターを倒したんだ。早速スキルを使うか、死者蘇生!!」


【死者蘇生:失敗】


「まぁ安定の失敗だよな」


「失敗は成功のもとなのです。諦めずに頑張るのです」


「お前はいつも元気でいいな。でもアナマリアの言う通りだ! 気を取り直してゴブリンを狩るぞ!! 今日の目標はスラ男の強化だ」


「了解なのです」


 アナマリアは拳を突き上げ「オー!!」っと気合をいれる。

 その後は前衛にスラ男を配置し中衛にアナマリア、後衛に俺が続きゴブリン狩りを続けた。




★ ★ ★ ★



 ゴブリンを何度か狩っていると、ついにその時を迎える。


【死者蘇生:ゴブリンは甦った】


「やったぞ!! 早速スラ男を強化をしないとな……?」


 蘇生したゴブリンを見ると、俺は微妙な違和感を覚えた。

 それは甦ったゴブリンがジッと俺を見つめていると感じたからだ。

 ステータス画面を開いてみるとPTメンバーにゴブリンが追加されていた。


「おいおい。いつの間にかモンスター二体仲間にできる様になっているぞ? どういう事だ?」


 ステータス画面を開き原因を探ってみる。





★★★




名前:青木 相馬

職業:マッド・サイエンティスト

LV:11


HP:40

MP:67

力 :15

速度:24

知力:70

耐久:17



スペシャルスキル


【ラーニング】  :LV∞  モンスターランクモンスターをラーニング

【死者蘇生実験】 :LV2  モンスターランク8までのモンスターを二体、一定確率で蘇生し仲間にできる

【改造】     :LV2  モンスターランク8までのモンスターを一定確率で改造

【錬金術】    :LV1  アイテムや武器を錬成

【人体実験】   :LV1  モンスターランク3までのモンスターの素材で、プレイヤーを改造できる。

【天使の加護】  :LV∞   天使の加護を得る 



マルチスキル


【援護射撃】   :LV1  後方からの攻撃時における命中率、ダメージ量の補正

【薬草採取】   :LV1  薬草採取量が増える。




★★★



「さっき見た時より俺のLVが1上がっているだけ…… あれ? いつの間にか【死者蘇生実験】スキルLVが2に上がっているじゃないか。そのおかげで二体まで仲間にできるようになってるのか。やったこれで戦いが楽になるぞ」


 いつLVが上がったのかは分からないが、スキルLVのアップにより仲間モンスターの数が増えていた。

 仲間に出来るモンスターランクは8までと書かれている。


 さっき仲間になったゴブリンのステータスを見てみると。





★★★




名前:

職業:ゴブリン

属性:土

モンスターランク:2

LV:1


HP:20

MP:0

力 :8

速度:10

知力:3

耐久:10


スペシャルスキル


引き裂く:自身の鋭い爪で敵を引き裂く。

噛み付く:自身の鋭い歯で敵を噛み付く。

騒ぐ  :敵を見つけた時に騒いで仲間に知らせる。




★★★




「LV1だから今のスラ男よりステータスは低いけど、LVが上がったらこりゃスラ男より強くなるぞ。ゴブリンの癖に生意気な奴だ。今日からお前はゴブ太と名付ける」


「ギィー!!」


「おっ! スラ男と違って返事をしてくれるのか? 意思疎通が出来ていいじゃないか。期待しているからなゴブ太!!」


「ギギィィー!!」


「なんて言えばいいんだろう…… 悪の軍団のボスになった気分だ」


「ゴブ太くん。相馬くんの彼女のアナマリアなのです。共に魔王を倒すのです」


「ギィー」


「おいおい誰が誰の彼女だよ。まぁいいわ。今日はスラ男とゴブ太の強化が終わるまで狩り続けるからな!!」


「がんばるのです!!」


 俺が1番信頼しているのはやはり初めて仲間になったスラ男だけど、ゴブ太も素直に言うことを聞いてくれそうだ。

 

 やはりゲームは楽しくて仕方ない。

 

 このゲームの世界ヘ連れてこられて本当に良かった。

 その想いを俺は強く噛み締めていた。

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[良い点] とてもおもしろいです、更新楽しみにしています。★評価5つけときましたよ。(>_<)
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