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5話 スライムの改造

 スライムと見つめ合うのも飽きたので、そろそろスライムの動かし方を真剣に考えてみる。

 

 ステータス画面を見ても、復活させたスライムを調べてもコマンドボタンの様な表示は現れない。

 スライムを動かす方法が全く解らないので、取り敢えず声を掛けてみる。


「俺の右側に移動しろ」


 するとスライムが俺の指示に従い、右側に移動を始めた。


「へぇ~俺の言葉通りに動くって事か? これは便利だな」


 使用方法を理解した俺はスライムにモンスターを狩る指示を出してみる。


 スライムは指示に従い、遭遇した敵スライムに襲いかかる。


「スライム、敵に体当りだ」


 スライムは敵モンスターに近づき、率先して体当たりを仕掛けていく。

 命令通り動くスライムに合わせて、俺も一緒に戦うと短い時間で敵スライムを倒す事が出来た。


 次に倒したスライムを【蘇生】スキルで復活させる。


【蘇生実験:スライムは蘇った】


「一発で甦ったぞ。それじゃ改造」


 俺は二匹のスライムを指定し改造させてみる。

 【改造】スキルにはモンスター同士を掛け合わせると書いてあった。

 

 改造スキルを使用するとスロットが2つ表示される。

 とりあえず最初に成功したスライムと今回蘇生に成功したスライムを指定してスキルを実行させた。


【改造:失敗】


 一度目は残念だが失敗に終わったようだ。

 スキル説明にも一定の確立と書かれてあるし、何度も挑戦するしかない。

 改造スキルを使うにはまずは蘇生を成功させる必要があった。

 更に蘇生自体も一定確率だし、これは骨が折れる作業となりそうだ。


【改造:失敗】

【改造:失敗】

【改造:スライム改が産まれた】


 何度目かのチャレンジで念願の改造を成功させた。

 

「なるほどね。単純にモンスターを強化させるって訳だな? スロットが2つに分かれているって事は組み合わせパターンで色々と結果が変わりそうだ」

 

 これはかなり強いスキルだと思う。

 モンスターさえ倒せれば最終的には強モンスターだって自分の手駒として使う事も出来る。


 そう考えるとマッド・サイエンティストは強キャラでは無いかと思ってしまう。


「お前は今日からスライムじゃなく、スライム改のスラ男と命名する。俺の代わりにモンスターを狩ってくれ」


 スラ男はピョンと跳ね上がると敵を求めて移動を始めた。

 改造も終えているので、普通のスライムよりも断然強い。




★★★



名前:スラ男

職業:スライム改

属性:水

モンスターランク:2

LV:1

HP:18

MP:0

力 :6

速度:5

知力:4

耐久:7


スペシャルスキル


体当たり:自身の身体を敵に突進させる。

 


★★★



 ステータス画面を開いた後、強くなっている事を確認する。

 俺の指示を受けたスラ男は敵スライムを見つけると自分から攻撃を仕掛けはじめた。

 戦闘を見ていたがパワーアップのお陰で攻撃力も強化されており、スライム相手なら一人で戦わせても大丈夫そうだ。


「こりゃいいや。スラ男が頑張って倒してくれたら、同じPTの俺にも経験値が入るぞ」


 今、俺とスラ男はパーティーを組んでいる状態となっている。

 召喚士が召喚した精霊やモンスターで敵を倒しても経験値が入る道理と同じで、この方法ならば俺が危険な目に合わなくてもスラ男がモンスターを倒してくれて安全だと言える。


 その間に俺は別の事が出来るので一石二鳥…… いやスラ男のLVも上がるので一石三鳥だ。


 その後は危険な前衛はスラ男に任せて、俺は安全な後方からポチポチと敵スライムへ攻撃を続けた。

 二人で狩ればソロの時よりも効率がいい。


【スキル:援護射撃を獲得しました】


 狩りをしていると、新しいスキルを覚える。

 覚えたのはマルチスキルと呼ばれるスキルだった。

 一定の条件さえクリアーすればどの職業でも同じスキルを手に入れる事ができる。

 

 これでスキルが一つ増えて全部で6個のスキルを手に入れた事になる。


 その後もモンスターを狩りながら、倒したモンスターにスキルを使っていく。


【蘇生実験:スライムを蘇生しました】


 甦ったスライムを素材として、俺はスラ男に改造スキルを使う。


【改造:スライム改はスライム改になりました】


「改造はスキルが成功したと言っても、必ず強いモンスターに変わる訳ではないのか、確かにそうだよなスキルが成功しただけで強くなったら簡単過ぎるだろ」


 取り敢えずゲームの感じは掴めた気がする。

 気づけば日も落ち始め辺りの景色は夜に変わりつつあった。

 空を見上げれば大きな月が浮かんでおり、薄っすらと辺りを照らしている。

 

「空腹値も半分を切っているし、一度街に戻った方がいいよな……でも」


 俺は目の前で佇むスラ男を見つめた。


「はぁ……どこから見ても完璧にスライムだよな。このまま街にスラ男を連れて行けば大騒ぎになるかもしれないぞ。仕方ない、スラ男は余り奥に行かずにこの辺りで狩りをしていてくれよ。大丈夫だと思うが他のプレイヤーが来たら姿を隠して見つからない様にしとくんだぞ」


 スラ男はピョンピョンと跳ねて了解した事を告げる。

 従順なスラ男なら俺の言いつけを守ってくれるだろう。

 一応離れていてもパーティーメンバー欄にはスラ男のHPが表示されているので、生死の確認も出来る。 


 それにずっと気を張っていたので、精神的にも疲れが現れ始めた。

 このまま狩りを続けても、効率は上がらないと判断し俺は街に向かって移動を始めた。

 

 街に入り適当に歩いていると、街灯から光が溢れている事に気付く。

 下から見上げて見ると光る石が入っていた。


「なんだあれは? 魔法石って感じかな? いいねぇ~ まさに異世界って感じがするぞ。」


 街を歩いているだけだが、実際にゲームの中にいるという感覚が身体を突き抜け興奮が湧き上がってくる。


 確かに普通のゲームだと夜だろうと昼だろうと暗くて動けなくなる事はないが、こうやって実際に体験してみると夜に明かりも無いのに動き回れる事の方がおかしい。


 感心しながら街を彷徨っていると、空腹感が増し始めた。


 ステータス欄を確認すると赤い文字で空腹値が表示されている。

 

「いつの間にか赤字に変わっている」


 アイコンをクリックしてみると、空腹状態の内容が表示された。


【空腹:ステータスの減少25%、一定時間毎にHPの減少】


「やべぇな結構キツいペナルティーだ。今後は食料の備蓄も用意した方がいいな」


 今後は空腹対策をして狩りに出たほうがいいだろう。


「それにしても本当に腹が減ったな。飯は一体何処で食べれるんだ? 取り敢えず中心部へ行ってみるか」


 市街地っぽい場所を抜けると、幾つかの商店を発見する。


 近づいて看板に目を通してみると雑貨屋と表示されていた。

 カウンターに店主が立っており、その奥に棚が設置されている。

 棚には食料品やポーションなどの商品が数多く陳列されていた。


「丁度いいな。ここで食料を買っておくか」


「いらっしゃい。何が欲しいんだ?」


 見た目30歳前後に見える店員の男性が声を掛けてきた。


「何か食べる物とポーションをくれ」


「食べるもの? パンでいいか? パンなら一つ10ゴールド。回復ポーションは一つ20ゴールドだな」


「おっさん。悪いけど飲み物とかもない?」


「おっさんだと! 俺はこれでも25歳だ。今度同じ事を言ったら承知しねーからな。飲料水は一瓶5ゴールドだ」


「そいつはわりーな。それじゃパンを4つと飲料水を2瓶。回復ポーションを10個くれよ」


「そんなに買ってくれるのか? そいつは気前がいいな。全部で250ゴールドだ」


 狩りに出る前は確か500ゴールド持っていたので足りない事はない。

 狩りをしてどの位貯まったのかよく見ていなかったので、ステータス画面を開き見てみると。


「900ゴールド……結構稼いだな。 これならソロでも金が尽きる事はないぞ」


 料金を支払い荷物を受け取り、食べながら宿屋を探す。

 パンはフランスパンに近い形状で、大きさ的に言えばパン一つで40cm位。

 一つ食べ終わる頃には空腹値も80%近くまで回復している。商品によって回復量が違ってくると思われる。

 

 今日は色々と疲れた。早く宿を見つけてゆっくりと眠りたい。


 商店街を抜けると、何件かの宿屋が並んでいる。

 一番近い宿屋に入り、カウンターの女性に声をかけた。


「宿に泊まりたいんだ。料金を教えてくれ」


「夜と朝の食事付きで一晩50ゴールドだよ」


「飯が付いてくるのか? こりゃ勿体無い事したな。まぁ仕方ない。一晩お願いするよ」


「それじゃ前金制だから料金を頂くよ。部屋は2階の20号室、鍵はこれだから自分で空けて入っておくれ。食事は1階の食堂でこのチケットを店員に渡せば決まった食事が運ばれてくる。違うものを食べたい場合は別料金さ」


「了解、へぇ~よく出来ているシステムだな」


 俺は鍵を受け取ると、2階の20号室へと向かった。今は食事を取るよりゆっくりと腰を降ろして休みたい。


 部屋を見つけ鍵を差し込む。

 ガチャリと音を立てながら鍵が開く。

 

 俺がドアを開くと、部屋の中から女性の怒った声が飛んできた。


「遅い! 遅い! 遅いのです!! 一体いつまで待たせたら気が済むのですか!?」


 部屋の中には夢で天使と名乗り、このゲームの世界ではラスボスとして登場した幼女が頬を膨らませながら立っていた。

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