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4話 初めての仲間はスライム

 南口から街の外にでると、見渡す限りの草原が広がっていた。

 地形は奥に向かっていくに連れて標高が高くなっており、一定の距離から先は見ることが出来ない。

 周囲を見渡しても南口付近で他のプレイヤーの姿を見かける事はなかった。

 

 もしかするとまだ俺以外のプレイヤーは街から出ていないのだろうか?


 取り敢えずモンスターを探して周囲をうろついていると、初モンスターと遭遇する。

 

「うぉっ 早速出やがったな」


 現れたモンスターは緑色をした定番のスライム。

 ぷよぷよとした身体を持ち、ピョンピョンと小さくはねながら移動する。

 動きは遅く強力な攻撃もしてこない最弱と呼ばれるモンスター。

 しかしそれは前作の設定で今もそうだとは言い切れないのだが…… まぁ、スライムに殺される事は無いだろう。


 俺は初期装備の【木の棒】を強く握りしめるとスライムと戦う決意を固めた。

 

 ゲームをしている時は空中からキャラを見下ろす3D視点だったが、今は自分で本当に戦わなければいけない。

 敵の攻撃はアクティブで仕掛けてくるタイミングも解らない。

 向かい合うだけで緊張感から鼓動が速くなり額からは汗が浮かび上がってきた。


 動き出すまでの短い時間の中で色々な事を考えてしまう。

 ダメージを食らった時はどの位HPが減るのか? 

 一度に何匹まで戦えるのか?

 モンスターが死ぬ条件はHPを削り取ればいいのか? 

 

 一つずつ検証をしていく方が安全だろう。


 覚悟を決めて大きく息を吸い込いこむと、スライムのサイドに周り込み木の棒を叩きつける。

 幸いスライムの反応速度は遅く、こちらの攻撃は簡単にヒットさせる事が可能だった。


 攻撃を与えると、モンスターの頭上に浮かぶHPバーが少しだけ減っていく。

 視界の端には与えたダメージ量が表示されている。


 一度に与えるダメージ値は2~3で、俺がスライムを倒すまで四回の攻撃が必要だった。


「ぜぇ、ぜぇ…… 何とか倒せたぞ。敵のHPを削り取ったら死ぬって訳か。これなら内臓が弾け飛ぶグロいシーンは見なくていいからラッキーだ」


 けれどスライムを倒すのに息切れするとは思いもしなかった。

 

「たった一体倒すのに予想以上の時間が掛かるんだな?」


 ゲームだと攻撃ボタンで簡単に攻撃してくれていたのだが、今は自分で立ち回りを考え動き回り、スキを見て攻撃を仕掛ける必要があった。

 また死角から別のモンスターに襲われるかも知れないので、戦闘中も全方位に気を配りながらの戦いとなり意外と骨が折れる。


【スライムをラーニングしました】


 倒した瞬間、視界の端に告知文が現れた。

 頭の中にも同時にコール音が鳴り響く。


 多分これはマッドサイエンティストが最初から持っていたスペシャルスキルの【ラーニング】が発動したのだろう。

 ステータス画面を開き、図鑑と言う場所を見てみると倒したスライムの詳細なデータが表示されている。


 詳細にはモンスターのステータスやスキル、攻撃方法、弱点などが記載さている。


種族:スライム

属性 水

モンスターランク1


HP:10

MP:0

弱点:なし

攻撃方法:体当たり


「おし! ラーニング完了。ラーニングは戦うだけで発動なのね。こりゃ簡単でいいや」


 俺は右手で小さくガッツポーズを作る。


「それじゃドンドン行きますかね」


 気合いを入れ直した後、次なる獲物を探す為に移動を再開させた。

 するとすぐに新しいスライムが現れ、再び戦闘へと突入する。

 今回は2匹だが、先程の戦闘内容を考えると特に問題はないと思う。

 

 まずは一匹だけ倒した後、今回は一度わざと攻撃を受けてみる。

 理由はダメージを受けた時の状態を確認したかったからだ。

 確かにスライムなら攻撃を避けながらでも倒す事はできる。

 けれど今後、モンスターが強くなっていけば、無傷と言うわけにも行かないだろう。

 そうなった場合、初めて攻撃を受けて不測の状況に陥る可能性もある。

 ならばスライムと言う最弱の敵で試している方が安全だと言える。

 

 俺が身構えていると、スライムは体当たりで攻撃を仕掛けてきた。


 防御を固めて正面で受けてみたのだが、思いのほか勢いがあり、バランスを崩して尻もちを付く。

 攻撃を受けた後、俺のHPバーが少しだけ減少を始めた。


「痛い!! マジか、攻撃を受けると痛みがあるのかよ!? HPは……3減っている。これって大きな攻撃を喰らった場合は痛みは増大するのか?」


 攻撃を受けると痛みが伴う所はリアルに忠実で、痛みは本当に殴られた時と同じで暫くの間残っていた。

 この仕様では気の弱いプレイヤーの中で戦闘を嫌う者が現れるかもしれない。

 今後どれだけのプレイヤーがゲームのクリアーを目指す事になるのだろう。


「ふぅ、何とか倒せたな! さっそく【蘇生実験】のスキルを使ってみるか? だけどスキルってどう発動させたらいいんだ?」


 まずはスキル欄を表示させ、カーソルを合わしてみる。

 けれどスキルが使われた様子は無い。


 なら今度は声に出して唱えてみるか?


「蘇生実験!!」


 すると身体から力が抜ける感覚が発生する。

 すぐにステータス欄を表示させるとMP値が減少していた。


【蘇生実験:失敗】


 視界には失敗と言う文字が表示されている。

 MPは20減少しており、残りMPは10。

 すぐにMPの自然回復が始まるが速度は遅い。


「今のレベルだと一回失敗したら終わりだな。MPとHPの回復方法は前作と同じでいいのかな?」


 その場に座ってみると、自然回復よりも速い速度でHPとMPが回復していく。


「やっぱりこの方法で合っていたな。前作と同じで良かった。出来るだけポーションは温存させていこう」


 MP回復後に再びスライムを見つけて倒した後、同じスキルを使用する作業を繰り返し行う。


【失敗】

【失敗】

【失敗】

【失敗】

【LV2になりました】


 同じルーティンを繰り返している間に、失敗とは違う告知文に気づく。

 どうやら知らない内に経験値が貯まっていたらしい。


「おっ!? Lvアップしたぞ。でも戦闘職じゃないから能力アップは期待できないだろうな」


 ステータス欄を確認すると、INT値は大幅にUPしているが、他の能力値は少ししか上がっていない。

 能力値は後でゆっくりと確認するとして、今は【蘇生実験】を成功させる事に集中させる。


【素材:スライムを手に入れた】


「素材スライム!? もしかしてこれで【人体実験】が出来るんじゃ……」


 スライムは自身の素材を落としていった。

 モンスターの素材を使うと聞いて思い当たる事は一つしかなかった。

 この素材は後で検証するとして、今はモンスターの蘇生に意識を戻す。


【失敗】

【スライムは蘇った】


 そして遂に実験が成功する。

 目の前には青色のスライムがジッと佇んでいる。


「うわっ、成功したけどコイツ攻撃とかしてこないよな? 色が変わっているのはスキルで復活したからなのか?」


 取り敢えずステータスを確認してみる。

 モンスターランク1のスライムだけに期待はしていない。




★★★




名前:

職業:スライム

属性:水

モンスターランク:1

LV:1


HP:10

MP:0

力 :3

速度:3

知力:2

耐久:5


スペシャルスキル


体当たり:自身の身体を敵に突進させる。




★★★




「能力低っ!! やっぱりスライムは安定の弱さだな! だけどマッド・サイエンティスト…… 中々面白そうじゃねーか!!」


 俺は腕組みしながら、スライムを見つめた。

 スライムも蘇生した時から微動だにせず俺を見つめている感じだ。

 スライムの目が何処にあるのかは分からないが、見つめ合う俺達の間に何か熱い友情が産まれた気がする。


「ん? そう言えば、こいつどうやって動かせばいいんだ?」


 スライムは俺を見つめたまま、いつまで待っても動く事は無かった。

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