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34話 抗争開始

 街は夜でも外灯の温かい光が周囲を照らし、不自由なく歩く事が出来る。

 狩を終えたプレイヤーはもちろんの事、働き終わったNPCの街人も酒や食事に舌鼓を打ち、夜の街を楽しそうに過ごす。


 プレイヤー達は昼間の間は攻略に勤しみ、夜になると仲間達と集まり情報を交換するのが一般的で、各ギルドはお抱えの店を作っていた。

 


★ ★ ★ ★



「それでは今からファルコンの定例報告会を開催する」


 四角いテーブルを何個も繋ぎ合わせて作った即席の長テーブルに、30名ほどのプレイヤーが座っている。

 どのプレイヤー達も顔は強張っており、流れる雰囲気には険しさを含んでいる。

 司会進行を行っているのはクランマスターの隣に立つサブマスターの男。

 クランマスターは一言も発する様子もなく、腕を組んだまま様子をうかがっていた。


「最初に前回、話していた幹部の入替を行うぞ」


 その言葉に上座に近い席に座る6名のプレイヤーがゴクリと息を飲み込んだ。


「西田!! お前は数日前にプレイヤー達の前で【ブルーアイズ】の平山にやられただろ? クソ野郎が【ファルコン】の名に泥を塗りやがって!!」


 怒気を含んだ言葉に西田と呼ばれた男の方がビクンっと震えた。

 

 西田は数日前の事を思い出し、苦渋の表情を浮かべ歯ぎしりをしながら拳を強く握りしめている。


「お前は幹部から落ちてもらう。役に立たない奴は下っ端からやり直しだ。代わりに岡本! お前が今日から幹部だ。西田の様なヘマは打たずにギルドの為に行動しろよ」


 西田が座る真正面に座っていた、魔法使いのローブに身を包んでいた男がニヤリと笑みを浮かべて立ち上がる。


「はい。幹部として精一杯頑張ります」


 その言葉の後、他のメンバー達から拍手が沸き起り、これで岡本の幹部入りが正式に決定する。


 たった一人、幹部から落とされた西田は俯いたまま、悔し涙を浮かべていた。


「クソがぁぁぁ。これも全部アイツ達のせいだ…… やってやるよ。俺が役に立つって事を証明して、再び幹部に舞い戻ってやる。覚えていろよブルーアイズゥゥゥ」


 けれどその言葉は拍手の音にかき消され、誰の耳にも届いてはいなかった。




★ ★ ★ ★




 それから数日後、日も落ち始め狩を終えたプレイヤー達が街に戻り始める。

 狩場は狩場を先に取ったPTが所有権を主張できる。

 同じ狩場を狙っていたPTは先に取ったPTが狩を終えるまで、手出しはしない。

 

 それはトラブルを起こさない為の暗黙のルールであり、命が掛かっているこの世界での当然の処置だといえる。


 待つ方のPTは邪魔にならない様にある程度、距離をあけてジッと待つしかない。

 なので人気の狩場の周囲にはいつも誰かがいる気配がしていた。



「今日はついていたね。まさかこの狩場が空いていたなんて」


「そうだね。ここに出現するモンスターは弱い割に経験値がおいしいからね」


「おーい。そろそろそっちにモンスターを引っ張って行ってもいいか?」


 今は3人組のPTが人気の狩場で狩を行っていた。


 一人は剣士の青年。一人は魔法使いの少女。そして最後に重戦士の男だ。

 彼等の装備には同じエンブレムが刻まれている。


 それは青いドラゴンの顔を型取ったエンブレム。


 そのエンブレムを見たプレイヤーは彼等が【ブルーアイズ】だと一目で理解するだろう。


 獣戦士の男が10匹程度のモンスターを引き連れて二人の元へ帰ってくる。

 後は魔法使いの少女の範囲魔法が叩きこまれればモンスター達は一掃される寸法だ。


「亜紀、頼むぞ」


「任せてよ真人。それじゃ行くよー 範囲魔法【豪炎球】」


 亜紀は手に持つ魔法の杖をモンスターに突き出して詠唱を始めた。


 重戦士はタイミングを図りながら、直前で横っ飛びを行い魔法の邪魔にならない様に動く。


「今だ。放てぇぇぇ」


 剣士の真人は大きな声で叫ぶ。

 

 予定なら亜紀の杖から極大の炎魔法が放たれる筈なのだが、その様子はない。

 すぐに異変を感じ、昭典が亜紀の方へ視線を向けると、亜紀は肩を押さえてうずくまっていた。

 その肩には一本の矢が刺さっている。


「これはどういう事なんだ! モンスターがもう目の前に!! クソっ 文也!! 亜紀を守るぞ」


「おう!!」


 二人は亜紀の前に陣取るとモンスターの群れを迎え撃つ。

 モンスターは弱いのだが、数の力は二人を押し込もうとしていた。


 必死で耐えながら、傷ついた仲間を守る二人に、さらなる試練が襲いかかってくる。


「茂み中から誰かが矢を放っているぞ!! 亜紀を襲った奴か!!」


 二人が戦闘を行っている間、二人に目掛けて誰かが矢を放ってきていた。

 モンスターと矢の攻撃を受けて、二人のHPはみるみる削られていく。


「このままじゃ…… やられる!」


 真人は死を覚悟する。


「ひゃーはっはっは。愉快だぜ。【ブルーアイズ】の奴等は全員皆殺しだぁぁぁ」


 茂みの中からでてきたのは、3名の部レイヤーである。


「西田さん。やりましたね」


「へっへっへ。これでサブマスも俺の力を思い知るだろうぜ。おう。このまま殺ってしまえ」


「おう!!」


 モンスターに囲まれた真人達に止めを指す矢が放たれる。


 無数の矢を受けて、最初に倒れたのは重戦士の文也だった。


「クソーーーッ 真人達はなんとしても逃げ切れ!!」


 それだけ言い放つと文也は力尽きその姿を消していく。


「お前達、一体何者だ!!! こんな事をして許されると思っているのか!?」


「うっせーんだよ。お前も早く死ねよ!!」


 不敵に笑う男の鎧に鷲のエンブレムが刻まれている事を真人は目に焼き付けていた。


「お前達【ファルコン】の奴等だな。俺は絶対にお前を許さねーぞ!!」


 真人は生き残る為に、傷ついた亜紀を抱きかかえ、西田の前から逃亡を始める。


「逃がすわけがねぇーだろ? 馬鹿が」


 西田達は逃げる真人達の後を追いかけ、背後から攻撃をしかけ二人のHPを削りきり死亡させた。



 三人は初めての死だったので、後で無事に蘇る事ができた。


 この事件が発端となり【ブルーアイズ】と【ファルコン】の間で本格的な抗争が幕をあける。


 怒り狂う【ブルーアイズ】のメンバー達は【ファルコン】に対して報復を開始した。

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