31話 モンスターランク7
料理店の騒動から数日が経過している。
不気味な事に決闘後は特にトラブルなど合わずに平和な日々を過ごしていた。
嵐の前の静けさって感じにも感じる。
俺も何日間は警戒していたのだが、特に危険な目に合う事もなかった。
今はその出来事も忘れかけ、毎日新しいモンスターを探して狩りを続けている。
【はじまりの街】での失敗を繰り返さない為に、街を中心に色々な場所に足を伸ばして狩を行っている。
やはり方角によって出現するモンスターや地形エリアも違い、楽しく狩を続けていた。
今いるのは草原エリアで、出てくるモンスターは動物系のモンスターが多い。
「ぬおぉぉぉぉ。モンスターが現れたのです。スラ男くん、ゴブ太くん。叩きのめしてやるのです」
「ギィィィー!!」
俺に断りも無く勝手に指揮をとっているアナマリアは、頭部に二本の巨大な角を持つ、イノシシ型の巨大モンスターを指さして叫ぶ。
指示を受けたスラ男とゴブ太は横並びに走りだし攻撃を仕掛ける。
すばやく近づき攻撃範囲に入ると最初に動きが速いスラ男がモンスターの首に喰らいつき動きを止める。
その後、一呼吸遅れてゴブ太が大剣を脳天に叩きつけた。
巨大なモンスターはその一撃を受け、地面に倒れ込みその姿を消滅させる。
「ほえぇぇぇ見事な連携なのです。スラ男くん達ってLVは上がっていない筈なのに、どんどん強くなって居るように思えるのです。今ではこの辺りのモンスターも余裕で倒せるのです」
モンスターを倒して戻ってきたスラ男に対して、アナマリアは頭を撫でながら褒めていた。
身体が大きなゴブ太には笑顔を向けて苦労をねぎらう。
「アナマリアの言う通りだ。その理由はたぶん、連携の力が上がっているからじゃないかな? 今日はもうちょっと先進んでみるか?」
草原エリアは見渡す限りの草原が何処までも続く。
このエリアの怖い所は、景色が変わらないのに一定の場所を超えた瞬間から出現モンスターも変わってしまう事だ。
むやみに進んでいくと痛い目をみる事だってある。
「スラ男とゴブ太は周囲を警戒しながら進んでくれ。くれぐれも!! アナマリアは調子に乗って一人で先走るなよ」
一番危なっかしい奴に注意を促す。
「ブー!! 私だってその位は解っているのです。子供扱いはしないで欲しいのです」
両手を振り上げながら不満げに文句を言っているが、コイツにはこの位言っておかないと碌な事をしない。
「解っているならいいけどさ」
そのまま俺達はまだ立ち入った事のない草原エリアの奥へと足を伸ばしていく。
「出たな新種!! 見た感じで言うと小型の恐竜って所か?」
現れたのは鋭い牙を持ち二本足で立つモンスター。
硬い皮膚を全身にまとい2mを超える巨体で、鋭い眼光からは相手を萎縮させる威圧感があった。
「気をつけろよ。コイツは絶対に強いぞ。スラ男とゴブ太は前衛で一匹づつを相手をしろ。アナマリアは俺の背後で待機だ」
俺もアイテムを使用し、万が一の備えを取る。
スラ男とゴブ太は連携を取りながらモンスターと戦闘を始めた。
今までのモンスターと違い、一撃では倒れない。
二人は傷つきながら、何度も攻撃を仕掛け一匹づつ倒していく。
「アナマリア! 回復をしてやってくれ。俺も残りのモンスターの注意を引く」
残ったモンスターの正面に躍り出た俺は、スラ男たちに敵のヘイトが向かない様に敢えて注意を引く。
もちろん一人で倒そうとは思っておらず、回避をメインに時間稼ぎに徹する。
「イケる!! 速度なら俺でも十分対応可能だな」
俺の攻撃を何度か与えたが、ダメージが入っている様子はない。
そのままヒット・アンド・アウェイの要領で戦っていると、二体のモンスターを倒したスラ男達が加勢に入ってきた。
「後は任せたぞ」
スラ男の参戦で俺は距離を取り、アナマリアの元へと戻る。
「お疲れ様なのです」
「新しいモンスターだけど、なんとか倒せて行けそうだな。今日はこれ以上奥には進まずにこの辺りで狩りをした方がいいな」
そんな話をしていると全てのモンスターを倒し終えたスラ男達が戻ってくる。
「戦闘が終了したな。それじゃ蘇生してみっか」
モンスターの蘇生を試みると失敗に終わった。
ラーニングで覚えた情報を見てみると、モンスターの名前は【スモール・リザードドラゴン】と書いてある。
「モンスターレベル8だって!? やっとスラ男よりLVの高いモンスターと出会えた!! 絶対に蘇生してスラ男を強化させないとな」
スラ男達のランクアップを夢見て俺は高揚していた。
その後も俺達は【スモール・リザードドラゴン】を倒し続けた。
「おっ!? 蘇生に成功したぞ」
蘇生に成功した小型のドラゴンは俺の事をジッと見ていた。
「あっ! そう言えば今はLVが上がっていて、三体目のモンスターも仲間に出来るんだったっけ? だけどこのモンスターは見た目がなぁ…… 悪いけどお前は強化素材になって貰うとするよ」
俺は蘇生に成功したモンスターを仲間にはせずに、強化素材にしてスラ男に改造スキルを使う。
最初の【改造】は失敗したが、その後も何度か挑戦した結果、スラ男は遂に新しい姿を手に入れる。
★★★
名前:スラ男
職業:リザードスライム
属性:水
モンスターランク:7
LV:1
HP:180
MP:0
力 :130
速度:150
知力:40
耐久:80
スペシャルスキル
【変形】 :LV7 身体の形状を変化させる。
【超感覚】 :LV5 視力、嗅覚、聴覚の補正【中】
【潜む】 :LV4 気配を消し、敵の感知から逃れる
【自己再生】:LV4 自己修復能力【小】
【急所攻撃】:LV1 敵の急所への攻撃に対してダメージ補正【中】
【炎耐性】 :LV1 炎属性に対する耐性【小】
マルチスキル
【連携】 :LV7 連携攻撃時の攻撃力補正【中】
【忠誠】 ;LV7 主人の命令に伴う行動時の全能力補正【小】
★ ★ ★
新しいスラ男の姿は小型の草食恐竜に近い。
ステータスに目を通すとLVがリセットされているので、今までのスラ男よりは弱くなっていた。
「【疾走】のスキルと【噛みつき】のスキルが無くなっているけど、【急所攻撃】と【炎耐性】が増えている。【疾走】スキルは便利だったからちょっと痛いけど仕方ないな。それと引き継ぎのスキルのLVのは減らないようだ」
「スラ男くんはドンドン強くなっていくのです」
アナマリアは新しいスラ男に飛びついて嬉しそうにしている。
「今日から暫くの間は、スラ男はゴブ太と一緒に街の外で狩りを続けてもらう。スラ男のLVがある程度上がったら、今度はゴブ太の【改造】をしよう」
【改造】スキルの弱点は生まれ変わったモンスターのLVが初期に戻り、一時的に改造前より弱くなってしまう所だろう。
その対策として俺は二体をすぐに改造させずに一体づつ強化していく方法をとっていた。
日没まで狩りを続けた俺達は、スラ男達と別れ街へと戻る。
「二人は夜の間もモンスターを狩るから、数日の内にゴブ太の方も強化出来る筈だ」
「私は二人が強くなるのは賛成なのです。それに新しい仲間とも早く逢いたいのです」
「そうだな。今は三体目のモンスターも仲間に出来るようになっているし、新しい仲間も作らないとな!」
少しづつ戦力が強化されている事が嬉しくなり、俺の顔にも自然と笑みがこぼれていた。
★ ★ ★ ★
「おい。アイツは食堂にいた…… やっと見つけたぞ。すぐにギルドに知らせろ。アイツにも一人つけるぞ。絶対に目を離すな」
仲良く歩く相馬達を苛ついた表情を浮かべ遠目で見つめるプレイヤーの姿があった。
そのプレイヤーは見つけた獲物を逃ささないと狂気の目に焼き付けていた。