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3話 ステータスと専用スキル

 スタート合図の後、俺の視界は一瞬だけ暗転し、見たことも無い街の景色が飛び込んできた。 

 レンガ造りの町並みと、日本では見ることの無い郷土服を着た多くの人が行き交う街道。


「あはは。本物だ…… 俺はゲームの世界に飛ばされたんだ」


 感動で全身の鳥肌が立つ。


 俺はすぐに今までの事が夢だったのかを確認したくなる。

 腕を組んで方法を考えていると視界の端にボタンの様な物が見えている事に気付く。

 何となく俺が右手でそのボタンを触ってみると視界に半透明な板で構成されたステータス画面が広がる。


 名前は本名が表示されており、その下には職業欄があった。

 そこには俺が選んだ《マッド・サイエンティスト》が表示されていた。


「間違いない。ゲームの世界に俺はいる…… 夢ならこのまま醒めないでいてくれ!!」


 両手で頬をパチンと強く叩き、痛みのショックで夢が醒めない事も確認する。

 叩いた痛みで目を閉じてしまったが、ゆっくりとまぶたを開いてみても景色は変わらない。


「良かったぁぁ。これでもし夢が醒めたら悔やんでも悔やみきれないわ」


 強く手を握りしめ、これから体験する冒険へと心を踊らせる。


「それじゃ攻略を始めるか! まずはマッド・サイエンティストがどんな職業なのかを調べないとな」


 幼女との出会いは突然で結果はとんでもない事になってしまったが、目前に広がるファンタジーな世界を前にすると不安や後悔は無く好奇心に心が弾む。


 いまだ夢じゃないかと少しは疑っているが、そんな小さな事は最早関係ない。

 少しでも長くこの世界に居たいと強くねがった。




★ ★ ★ ★




 日本では見絶対に見る事が出来ない異世界は幻想的で美しく、すれ違う者は人間や獣人・亜人と言ったお馴染みのキャラクター。

 今いる場所はゲームの世界で画面越しで見るのではなく、ちゃんと自分の目で見ている。

 それだけでこの世界に飲み込まれていく。


「すげぇぇ…… マジで感動した。俺はいま本当にゲームの世界にいるんだよな?」


 感慨深くキョロキョロと周囲を見回してしたが、すれ違う人々は俺に気を止める事も無く通り過ぎていく。

 彼等がNPCキャラだと言うのは何となく理解できた。


「ちょっと待ってくれ」


「ん? 私に何か用があるのかね?」


「いや、用って程でも無いんだ。足を止めて悪かった」


 話は普通に出来るみたいで、外見は俺達プレイヤーと全く見分けがつかない。

 辺りを見回した感じではヒューマンの数が多く、獣人やエルフの様な亜人は数が少ない。

 

 まぁファンタジーと言えばこれが普通なんだろうけど。


「ヤバイな。楽しすぎるぞ!!」


 自分が大好きだった異世界を体験出来るとは思いも寄らなかった。

 その興奮はリアルでは決して体験出来るものでは無く、自然とテンションが上ってくる。


「おっと、こんな所で油を売っている余裕は無かったな。クリアの為にさっそくLVを上げに行きますかね」


 今の俺にはゆっくりと余韻に浸っている時間はない。


 混乱を極めたスタートだったが、プレイヤーの数は軽く数千はいた。何人かのプレイヤーは既に動き出している筈だ。

 俺としても出遅れる訳には行かない。

 

 正直な所、プレイヤー達は俺の願いでこのゲームの世界に飛ばされたのだろう。

 俺のせいかもしれないが、魔王はプレイヤーは死んだ人だと言っていた。

 ならばそんなに責任を感じなくてもいいかもしれない。

 逆にこのゲームをクリアー出来れば生き返る事が出来る。

 それなら俺がクリアーして彼らを生き返らせてやりたい。

 

 何故、天使が俺の願いに彼等を巻き込んだのかは解らないが、彼等が死んだかどうかはこの先ゲームを進めて行けば自然と解ってくるだろう。


 ゲーオタなので、このゲームをやり込む事になるけどそこは許して欲しい。


 ゲームオーバーになった人達が本当にどうなってしまうのか? 

 もし天使に会うことがあるのなら聞いてみたい。

 

 色々と考えていたが、頭を切り替え早速ステータスの確認作業へと移った。


「まずは能力と装備の確認だな。ステータスを開いてっと……」




★ ★ ★ ★



名前:青木 相馬

職業:マッド・サイエンティスト

LV:1


体力:18

魔力:25

力 :8

速度:10

知力:30

耐久:8


スペシャルスキル


【ラーニング】 :LV∞ モンスターをラーニング

【蘇生実験】  :LV1 モンスターランク3までのモンスターを一体、一定確率で蘇生し仲間にできる。

【改造】    :LV1 モンスターランク3までのモンスター同士をかけ合わせ一定確率で改造

【錬金術】   :LV∞ アイテムや装備品を錬成

【人体実験】  :LV1 モンスターランク3までのモンスターの素材で、プレイヤーを改造できる。



マルチスキル



★ ★ ★ ★




 これが俺の現時点のステータスだ。

 初めてプレイする職業だけに解らない事が多い。

 初期能力は知力と魔力以外は低めになっており、このキャラが戦闘系のキャラでは無い事が予想出来る。

 

 ステータス画面を閉じると視界の左上部にHPとMP、そして空腹値を示すバーチャートが表示されている。

 空腹値が0になれば何かのペナルティーが発生するのは前作と同じでいいだろう。


 次にスキルだがスキルは各職業が持つスペシャルスキルとプレイ中に会得できるマルチスキルに分かれている。

 プレイ初期から覚えているスキルは全てスペシャルスキル。

 知らないスキルばかりなので、目を通して予想を立てておく。

 

 最初は【ラーニング】他のゲームでもたまに出てくるスキルで、敵の情報を得る感じだろう。

 

 次に【蘇生実験】マッド・サイエンティストに由来したスキルと予想できる。

 モンスターを仲間にできると記載されているので、蘇生実験だけに死んだモンスターを蘇らせて仲間にする感じだろうか?

 

 三つ目が【改造】モンスターを改造出来ると記載されており、たぶん仲間のモンスターを強化させる能力でいいだろう。

 

 四つ目に【錬金術】だがアイテムを造る能力でいいと思う。使用方法は解らないが中々面白いラインアップである。


 そして最後に【人体実験】モンスターの素材でプレイヤーを改造できる……プレイヤーを強化できるバフ的なスキル? 


 どのスキルにもLVが設定されており、それは前作と同じ仕様でLVを上げると分岐が発生するスキルも多く存在する。

 前作と同じならスキルは全部で10個覚え得る事が出来る筈である。

 職業専用のスペシャルスキルで既に5つ枠を取られているので、覚えれるマルチスキルの数は残り5つ。

 マルチスキルはスキルが一杯になっても新しく覚える度に入れ替えが出来るので、何かに特化したキャラを作り上げる事も可能となっている。


 次に初期アイテムを確認すると、布の服と木の棒が最初から装備されていた。

 お金は500ゴールド。

 更に回復ポーション✕10個、それに俺が知らないアイテムも一つ付け加えられている。


「身代わり人形? 何だこれは?」


 アイテムをクリックしてみると、アイテム名の横に説明文が表示される。


【身代わり人形】 プレイヤーが死んだ場合。代わりに死を代行してくれる。その際プレイヤーは街に転移される。


「ふむふむ。一度だけ死んでもリスタート出来る使い捨てアイテムか…… その場合はスタート地点に戻るって書いてある。魔王が死んだらゲームオーバーになるって言っていたけど、このアイテムが在れば防止できるって訳だな。それに前作と同じで考えるなら回復職が使える死者蘇生魔法も在った筈。そう考えると案外イージー設定なのかもしれないぞ」


 蘇生アイテムが存在していると言う事は一度のミスも許されないハードモードでは無いかもしれない。

 その事実だけで少し心が楽になった気がする。

 ゲームシステムもハッキリと解らない今の現状では、取り敢えず命を大事にしながら進めていくしかないだろう。

 

 俺は群れる事が苦手なので基本ソロプレイで当然蘇生魔法やアイテムを使ってくれる仲間はいない。

 用心に越した事は無く、気を引き締め直し再びアイテム欄に目を向けた。


「布の服と木の棒は既に装備されているのか。早く装備も変えた方が良いだろうな」


 装備やアイテムを確認した後、俺は街の外に出てみる事にする。

 外に出ればモンスターとも出会えると思う。

 この世界の戦闘方法を一度体験した方がいいだろう。


 移動中に数人が固まっている集団を発見する。

 近づき聞き耳を立ててみると、どうやら俺と同じプレイヤー達だった。


「俺達これからどうなってしまうんだ? 俺は確かに車にひかれた記憶は残っているんだけど」


「俺は海に落ちて溺れた記憶がある。もしかしてこれが異世界転生ってやつじゃねーのか?」


「設定画面に見覚えなかったか? 多分だけど【ラストファンタジークロニクル】の設定画面と同じだったと思うけど……」


「そんな事どうでもいいよぅ。私……家に帰りたい」


 突然飛ばされた多くのプレイヤーはまだ現状を把握しきれて居ない感じだ。

 

 実際、プレイヤー達を見つけて聞き耳をたてて見ると、死亡した感じの事も話している。ならば魔王が言っていた事は本当かもしれない。

 

 彼等にとっては絶対に失敗が出来ないゲームの始まりだ。


 俺は死んだ記憶は無いので、もしかすれば俺だけが生きているかもしれない状況といえる。


 けれど俺が死んだらどうなる?

 強制的に元の世界に返されるのか?

 そんな事は絶対に嫌だった。

 こんな面白そうなゲームをやり込まずにどうするって言うんだ?


「まぁ、まずは初めての戦闘を体験しますかね!!」


 俺は街の出口を探し出し外の世界へと足を踏み出した。

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