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26話 助っ人

 数名のPKプレイヤーに囲まれた俺はステータス画面を出してアイテムを選ぶ。

 

「【魔反射の鏡】、【仮初めの衣】使用!!  アナマリアお前にも渡しているだろ? 使っておいてくれ」


 物理攻撃と魔法攻撃の一時無効化アイテムを使用しておけば、不用意の攻撃で殺される事はない。

 敵の行動を確認した後に適切な対応が出来る筈だ。


「ん? お前…… 何かアイテムを使ったのか? 俺達に異変が無い所をみると…… 自強化系のアイテムみたいだな。なるほど戦闘で死にたいって言うなら、お望み通り叶えてやるぜ」


 余裕たっぷりの表情を浮かべ男が笑う。


「お前達の様な腐れ外道が普通に死ねると思うなよ」


 戦うと言っても当然、ゴブ太やスラ男にも手伝ってもらうつもりでいる。

 森の中でスラ男達の力がトッププレイヤー以上だと言う事は実証済みだ。


 モンスターを仲間に出来る力こそが俺の力で、それを使わなければ俺は普通のプレイヤーより格段に弱い。

 だからそれを恥や卑怯だと言われようが気にするつもりは無い。


「わーーーっ 何処を触っているのですか!? この変態!!」


 すると突然、アナマリアが叫ぶ声が聞こえてきた。

 確認してみると、痩せ型の男がアナマリアを抱きかかえ、首に短剣を突きつけている。


「アナマリア!! お前、アイテムを使わなかったのかよ?」


「使う前に、捕まったのです」


 足だけをジタバタと動かしながら足掻いているが、ガッチリと捕まっているで自力で逃げられる様子ではない。


「はぁ~。お前は本当に……」


 俺はため息を吐くと、両手を上げて降参のポーズを取る。


「がははは、おい。さっきの威勢は何処に言ったんだ? 人質を取られた位でもう降参かよ?」


「ふん。好きに言えよ。それでどうすればアナマリアを離してくれるんだ?」


「相馬くん。そんな奴等の言うことを聞く必要はないのです。ぶっ飛ばしてやるのです」


 アナマリアは大声で叫ぶ。


「仲間はあぁ言っているぞ? どうするんだ?」


「俺が反撃すればアナマリアが殺されるんだろ? 仲間が何人いるか解らないし、アンタ達の職業やスキルも未知数だしな。ここは大人しくしとくよ」


そう言って頭を地面に向けた。


「けっ。面白くない。反抗する奴をいたぶるのが面白いって言うのによ」 


 だがこれは演技で本当に降参するつもりは無い。

 アナマリアの肩にはスラ男がいるので、俺の号令一つでアナマリアを助け出す事が可能だ。

 更に俺はアイテムを使って今は物理攻撃や魔法攻撃に絶対的な対応力を持っている。

 有無を言わさず殺しに来たとしても、大丈夫だ。


「まぁ、しゃーない最初に言った通りだ。女とアイテム全部貰っていく。まぁートレードを申し込んでも、本当に有り金を全部渡すかこっちにはわかんねーからな。殺して落とした金とアイテムだけで勘弁してやるよ」


「どっちにしろ殺すって訳か…… こうも馬鹿じゃ情報を引き出すってのも邪魔くさいし、もう良いか。スラ男ーー!!」


 俺が大声を上げた瞬間に男の断末魔が響き渡る。


 声の方を見てみると、アナマリアを捕まえていた男が倒れている。

 背中には切り傷がくっきりと残り今にも死にそうな感じだ。


「何だと!? お前ら仲間がいたのか?」


「ヒーローは遅れて登場するものだ!! 君たち大丈夫?」


 突然現れたのは、肩と胸や腕などの主要部分に鉄の防具を身に着けた一人の青年であった。

 見た目で言うと俺と同年代位だろう。


 そのまま青年はペタリと座り込んでいたアナマリアに手を差し伸べると、爽やかな笑みを浮かべて手をさしのべる。


「本当に危なかったね。僕が来たからにはもう大丈夫だ。君は僕の後ろに隠れていてくれ」


「えっ!? あっありがとうなのです」


 アナマリアは差し伸べられた手を掴み立ち上がると、スカートに付いた土埃をパンパンとはたき綺麗に汚れを落とす。


「アナマリア、どうやら彼は俺達の味方らしい。俺の方は大丈夫だから彼の側から離れるなよ」


 瞬時に状況を整理した俺はアナマリアに指示を出すと、アイテム欄から一つのアイテムを取り出した。


「人質は居なくなったぞ。さぁどうする?」


「ちっ邪魔くせぇな。だが人数はまだこちらの方が上だ。全員まとめてコイツから始末するぞ。一斉にかかれ!!」


 そう指示を出すと、俺を囲む四人のプレイヤーは剣を振りかざして、一斉に襲いかかってきた。

 

 俺はプレイヤーの動きに合わせて、自分の足元に取り出したアイテムを叩きつける。


「ゴホゴボッ。何だこれは…… ぐぅぅぅ 苦しいぃぃ まさかお前…… 毒を使ったのか?」


 喉を抑えて苦しみの表情を浮かべるプレイヤー達は一旦距離を取り、自分達のステータス画面を開き始めた。


「そうだ。毒だよ。だけど普通の解毒薬で治ると思うなよ。これは毒の上位版である猛毒の粉だ。お前たちは上級毒消し薬を持っているのか?」


 俺も猛毒に掛かってしまったが、すぐに上級毒消し薬を使ったので、もう治っている。


「チクショー。何でだ、解毒剤が効かない!! ヤバイ! HPの減少速度が異常だぞ。お前ぇぇぇ! お前は持っているんだろ。早く薬をよこせぇぇぇぇ!!」


「誰か渡すかよ。お前達の様な外道は苦しみながら死ね!!」


 何度か切りかかってきたが、身を翻し攻撃を避けている間に、男達は動かくなっていた。

 動かなくなった後、男たちの身体は暫くすると崩れ去る様に消えていく。

 プレイヤーが居た場所には数個のアイテムと幾らかのゴールドが落ちていた。

 それを拾ってみると、アイテムと装備品だとわかる。


「ふぅ終わったな」


 プレイヤーを殺すのは後味が少々悪いが、殺らなければこっちが殺されていた。

 迷う事も無く冷静に行動出来たのは上出来だと思う。

 やはりこの世界がゲームの世界だと思っているからなのだろうか? 


「怖かったのですぅぅぅぅ」


 そう叫びながら飛びついて来たのはアナマリアだ。

 涙と鼻水まみれで顔がびしょびしょになっていた。


「そんなに怖かったのかよ? アイテム使えば良かったのに…… それにスラ男も居ただろ?」


「アイテムを使う暇が無かったのです。それに相馬くんが殺されるって思って…… うわぁぁぁぁん」


 俺の胸で泣きじゃくるアナマリアの頭を撫でながらなだめていると、アナマリアを助けた青年が声を書けてきた。


「大丈夫でしたか? この辺りでプレイヤーを襲う奴等がいるって聞いていて捜索していたんですよ。無事で良かったぁぁ」


 アナマリアを助けた青年が駆け寄ってくる。

 近くで見てみると、なかなか爽やかな顔をした好青年であった。

 造形の整った顔をしており、髪の毛は金髪だが目の色は黒い。

 もしかするとキャラクター設定の時に髪の色とか変更できたのかもしれないな。


「助かったよ。ありがとう。捜索していたって?」


「はい。僕はギルド【ブルーアイズ】の一員で林達也っていいます。僕達のギルドは今、【ダイヤルの街】で活動しているんですけど、商人やプレイヤーが街道でPKをするプレイヤーに襲われて困っていると相談を受けていたんです」


「へぇーそれで捜索をしていたって訳か。俺は青木相馬、それで泣いているコイツがアナマリアって言うんだ。本当に助かったよ。林君」


「いえいえ。僕達、プレイヤーは助け合うのがうちの理念なので気にしないで下さい。それと僕の事は達也でいいです」


「それじゃ達也に聞きたいんだけど【ダイヤルの街】から来たって事は、道も知っているよな? 俺達も【ダイヤルの街】に向かっている所なんだ。この街道を進めばいいんだよな?」


「そうでしたか。それなら僕がご案内しましょうか? 依頼も終わったので、ギルドに報告をしないといけないので」


「それは助かるよ」


 俺達は達也と名乗る青年と共に【ダイヤルの街】を目指す事となった。




★ ★ ★ ★




 街道を進みながら情報交換をしていく。

 達也のおかげで【ダイヤルの街】の情報も多く集まった。

 俺の予想通り、トッププレイヤーの多くは既に【ダイヤルの街】に拠点を移しているとの事だ。

 乗り遅れた感が俺を襲う。

 

 更に俺達は二次組に分類されるらしく、【ダイヤルの街】には毎日プレイヤーの数が増えていっているらしい。


「それにしても、相馬さんって強いですね。一度に四人のプレイヤーを倒しちゃうなんて」


「いや、俺自信はそんなに強くないよ。たまたま強力なアイテムを持っていただけだ」


「へぇー。アイテムで倒したのですか? 離れて見ていたので気づきませんでしたよ」


「私は街に美味しいものがいっぱいあると嬉しいのです」


「アナマリアさん、美味しい物もいっぱいありますよ。なんせ【ダイヤルの街】は今、食ブームですから!! 【料理人】の職業の方が日々新しい料理を作り出しているんです。良かったら、今度案内しますよ」


「凄いのです。それは楽しみなのです」


 アナマリアが飛び跳ねて喜んでいる。

 達也はアナマリアを見つめながら、物凄く照れていた。

 どうやら達也は俺よりウブなようだ。

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