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25話 プレイヤー狩り

 ゴエルの村は小さな村で、周囲には平原が広がっている。

 村の周辺にはモンスターも現れるのだが、モンスターランクの低いモンスターばかりで適当にあしらう。


 もしかすると村や街の周辺には弱いモンスターしか出現しない法則でもあるのかもしれない。


 村人の話では村の収入源は畑で取れる野菜や狩りで得た肉らしいが、商人や冒険者が立ち寄る事でお金を落としてくれるので臨時収入として俺達冒険者は歓迎されている。

 

 ここは【はじまりの街】と比べると十分の一にも満たない村であるが、大きな風車が取り付けられた建物や村の中心を流れる小川など、普段ならお目にかかれないファンタジー情緒溢れる景色に俺は興奮していた。




★ ★ ★ ★



 俺とアナマリアは村人に集会場の様な場所に案内された。

 そこで数人の村人に囲まれると、一番年長の男性が話しかけてくる。


「ようこそゴエルの村へ。本日はどの様な御用で? この村には宿もありますし、補給の品も一通り取り揃えておりますよ」


「それじゃ。今晩の宿と食料などの補給をお願いできますか?」


「お安い御用です。食料は日持ちする干し肉や乾燥品を主体に揃えればいいですか?」


「目的地のダイヤルの街は後2日もあれば到着すると思いますので、出来れば美味しいく食べれる食料が嬉しいですね」


「わかりました。それでは2,3日は持つ食料を中心に用意しておきます。それで宿はどの様な宿をお求めで?」


「そうですね。気兼ねなくゆっくりと休める部屋がいいです。結構疲れが溜まっているんで」


「それなら、個室がいいでしょう。早速用意させて頂きますよ。宿のお代は1泊80ゴールドになりますがいいでしょうか?」


 確か【始まりの街】で俺が泊まっていた宿が一晩50ゴールドだった。

 一番最初の場所から離れるにつれて宿代が上がっていくって言うのはRPGゲームの定番だと言える。

 この位の値上げならば全然大したことも無く、俺は二つ返事で了承した。


 案内された部屋は、8畳程の広さの部屋でベッドが二つ置かれているだけの質素ながらも落ち着ける雰囲気がある部屋だった。


 ベッドに飛び込むと、ふわふわのシーツが俺の身体を優しく沈ませた。

 これならゆっくりと休めると確信し、上機嫌となる。


 その後簡単な食事を済ませた俺達は観光がてらに村の探索を始めた。

 小さな村だけに探索と言ってもそれほど時間は掛からない。


 村を歩いて初めて俺達以外のプレイヤーがかなり居ること気付く。


「やはり、中間地点の村だけあって、プレイヤーも結構いるよな……っという事は、すでに多くのプレイヤーは次の街に移動しているって事にもなる」


「何か問題でもあるのですか?」


「問題がある訳でもないけど…… 何ていうか、悔しくない?」


「げっ!! そんな下らない理由。相馬くんはしっかりしている様で、まだまだ子供なのです」


「子供で悪かったな」


 図星を突かれてしまい少々不機嫌になってしまう。


「でもそんな所も可愛いのです」


「子供に可愛いって言われても、全然嬉しくならないって」


「ぶーっ。私は子供では無いのです。相馬くんよりも長く生きているからお姉さんなのです!!」


 俺達が日常会話を繰り広げてながら歩いていると、近くにいた男性プレイヤーが声を掛けてきた。

 少し離れた場所にいた5人組の一人の男で、軽装の鎧にナイフを腰に吊るしている無精髭を蓄えた40前後の男だ。


「喧嘩でもしているのか? アンタ達もプレイヤーだろ?」


 ステータス情報は本人しか知る事が出来ない。

 なのでプレイヤーは相手の情報を得る時は、動きや言動から推測する。


「そう言うアンタもプレイヤーだろ? 俺達に何か?」


「いや、単なる野次馬だよ。子供だけでこの村にいるんだ。そりゃ気にもなるってもんだ。普通のプレイヤーはパーティーを組んで移動するのがセオリーだからな」


「あぁ、そういう事か。俺達は二人で【ダイヤルの街】を目指しているんだ。一応二人でも何とかやっていけてるよ。心配してくれてありがとう」


「そりゃ凄い。たった二人で【ダイヤル】を目指すって事はLVも高いんだろうな?」


「まぁ、そこそこかな? そっちも【ダイヤルの街】に向かっているのか?」


「へっ俺達は単なる狩りの途中だよ。丁度この村は休憩場所に持ってこいだからな」


「そうか、この村は結構有名なんだな」


「まぁな。北へ向かうプレイヤーの大部分はこの村で休息を取るからな。二人で移動するなら気をつける事だ。この先何があるか解らないからな。街道を進むのが一番安全だからお勧めするよ」


「忠告感謝するよ」


 男は笑みを浮かべながら、俺の肩を叩いてきた。

 馴れ馴れしい人は苦手なのだが、忠告してくれる人を無碍にも出来ない。

 俺は適当に言葉を交わし、その場を後にする。


 だが一つ気になったのは、遠くから俺達のやり取りをずっと見続けている男の仲間達の表情だった。




★ ★ ★ ★




 翌朝、ゆっくりと眠れた俺は気力も戻り村を後にする。

 村までは草原エリアだったが、村から先は街道の両サイドに森が広がっていた。

 【はじまりの街】の南エリアの大森林に比べると大木も少なく小規模な感じがする。


 そのまま少し歩いた場所でゴブ太の名を呼ぶと、森の陰から姿を見せた。


「ゴブ太、おはよう。一人で過ごさせて悪かったな」


「ギャッギャ」


 ゴブ太はブルブルと首を左右に振りながら、【気にしないで】と告げる。

 

 ゴブ太は見た目に伴わず優しい心を持つモンスターであった。


 その後は先頭にゴブ太でその後ろに俺が続き、その横にアナマリアが並びアナマリアの肩に小型化したスラ男が載り進行を始める。


 小一時間移動している間にも何度か戦闘にもなったが、モンスターランク4のモンスターであったので、ゴブ太一人で十分だ。


 更に小一時間程進んだ所まで進んだ所で、街道の中心に人影が見える。


「他のプレイヤーかな? それともNPCの商人とか? まぁ近くに行けばわかるか。取り敢えず驚かせるのも悪いから、一応ゴブ太は森の中から見守っていてくれるか?」


「ギィー!!」


 ゴブ太が森の中に姿を隠した後、俺達は人影に近づいていく。


「待ってたぜ。少年」


 声を掛けてきたのは昨日出会ったプレイヤーの男性だった。

 男性の他にも一人のお供を連れている。


「待っていたって? どういう意味ですか?」


「何、簡単な事だ。持っているアイテムを俺達に譲ってくれないか?」

 

 周囲は一瞬にして重い空気に包まれる。


 男性プレイヤーが最初に発した言葉で俺は大体察していたが、これはもう間違いないだろう。

 こんな輩が必ず湧いて出るとは思っていたが、予想していたよりも早い。


 MMORVPGにはプレイヤーがプレイヤーを襲う行為がある。

 人道的に言えばアウトなのだが、ゲームを楽しむ一環としてその様なシステムが存在していた。

 プレイヤーを襲う事は【プレイヤーキル】呼ばれ、略してPKと呼ぶ。


 PKの利点と言えばプレイヤーのアイテムをゲット出来る事なのだが、この世界でも同じなのだろうか?


「アイテムを渡せって言っているのですか!? そんな事、出来るわけがないのです」


 隣に立つアナマリアが憤慨している。


「お嬢ちゃんには後で別の用があるんだ。だから今は大人しくしていろよ」


「何で俺達がアンタにアイテムを渡さないと行けないんだ。渡す理由がないだろ?」


「何だとコラァァァ!! それは死にたいって訳だよな? 俺達はもう何人ものプレイヤーを殺してきてんだよ? この意味解っているのか?」


 怒気を発し、プレイヤーが威嚇を始めた。


 現実世界なら体格差や人数が実力差になるが、この世界に置いては一概にそうとも言い切れない。

 それを十分に理解している俺は、落ち着きながら言葉を返す。


「お前らは本当にクソ野郎どもだな。プレイヤーを殺しただと? それって殺人になるんじゃないのかよ?」


「ふんっ。ここはゲームの世界なんだろ? この世界に警察がいるのか? 強ぇぇ奴が何やってもいい最高の世界だ」


「徒党を組まないとプレイヤーを襲えない奴が何を言っても、怖くは無い」


 俺の挑発を受けて男性が怒声を強めた。


「クソガキがぁぁぁ!! 調子に乗りやがってぇぇ、マジで殺してやんよ。 お前たち囲めぇぇ!!」


「おう!! 殺してやんぞぉぉ」


 すると森の中から残りのプレイヤー達が姿を見せる。


 どうやらずっと隠れていたようだ。


「喧嘩は数が物を言うんだよ。勝てば何をやっていもいいんだよ。お前を殺した後、後ろの女は俺の物にするからな。知っているか? へっへっへ、このゲームの世界でも女をヤル方法があるんだよ? 俺はロリコンじゃないが、こんな可愛い女なら話は別だ。精々可愛がってやる」


 腰のナイフを抜き去り、舌で一舐めし始めた。


「お前……今…… 何を言った? アナマリアをどうするって!? こんなクソ野郎には一切同情はしない。お前達覚悟しろよ全殺しだ」


 ブチ切れた俺はアイテム欄を起動させながら叫んだ。

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