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20話 お酒は20歳になってから!!

 前作のラスボスを撃破した俺達が街に戻ると、何も変わっていない街の風景がまっていた。

 プレイヤー達が特にパニックになっている様子も無く、誰も魔王が現れた事は知らないままだろう。

 この世界を壊されなかった安堵感から大きく息をはく。


「ぷはーっ 俺達、無事に帰って来れたんだよな」


「ふふん。私は宣言通り魔王をケチョンケチョンにしてやったのです」


「確かにあの魔法は凄かったよな。確か【グレイプニル】だっけ?」


「お役に立てたなら良かったのです。じゃあご褒美に…… ブチューって……」


「ないない。それだけは絶対に無いから」


 口を尖らせて抱きついてくるアナマリアを引き離す。


「またなのです。もうツンは飽きたのです!! そろそろデレも見せてほしいのです!!! 餌がなければペットも懐かないのですよ!」


(お前はペットポジションでいいのかよ!?)


 アナマリアが勝手に騒いでいる光景は見慣れたもので、それ見て自然と心地良く感じてしまうのはどういう心境の変化なのだろうか?


 そんな考えはすぐに消し去り、宿に向かって二人並んで歩いていく。

 宿についた俺達は疲れた身体を癒す為に料理を食べ、お互いのベッドに飛び込んだ。

 睡魔はすぐに襲い、5分も経過しない間に熟睡してしまう。


 目を覚ますと、日は落ち夜になっていた。


「ふぁ~ぁ。なんだか暗い…… 外の景色は夜!? 確か俺達が寝たのも夜だから…… あちゃーこりゃ寝すぎたな。アナマリアはまだ寝ていやがる。よく寝る奴だ。寝る子は育っていうけど、天使も成長するのか? それにしても中途半端な時間に置きてしまったぞ。もう目が冴えて今からは寝れないし…… さて今からどうするか?」


 暇を持て余して、どうしたものかと思案を巡らせた。


「そういや。夜の街って出歩いた事はなかったよな? ちょっと夜の街を冒険してみるか」


 良いアイデアだと思う。

 俺は少しワクワクしながら準備を始めた。




★ ★ ★ ★




「結構人が出歩いているな…… おっ店も空いてるぞ」


 夜の街は多くの人で溢れていた。

 プレイヤーやNPCが笑い合いながら食事や酒を飲んでいる。

 初めて見る夜の景色に興奮していく。


「やっぱり酒もあるのか…… ゲームの世界の酒でも酔うのか?」


 ふとした疑問が俺の頭をよぎる。


「ちょっとだけなら…… 飲んでもいいかな? 実は前から興味があったんだよな」


 日本の法律で言えばお酒を飲む年齢では無い。

 しかしここは【ラストファンタジー・クロニクル】の世界で日本の法律は適用外だ。

 更に正月におちょこに一杯程度は学生でも飲む事がある。


 今日は魔王を退けた喜ぶべき日として、ほんの少しだけ飲んでも良いだろ。


 夜の雰囲気に飲まれた俺は、多くの人が賑わう一軒の店の中へと入っていった。




★ ★ ★ ★




「いらっしゃい。今はカウンターしか空いていないから空いている席に座っておくれよ」


 恰幅の良い女性が笑顔で俺に声をかけてきた。


 俺は目についた一番近い席に座りメニュー表に目を移す。


「どれがお酒なんだ? 全く解らないな」


 メニュー表には色々なお酒や食べ物の名前が並んでいる。

 俺が密かに迷っていると隣に座っていたプレイヤーが俺に声をかけてきた。


「おっ青木くんやないか!? 青木くんも食事しにきたん?」


「あっ斉藤さんでしたか。気づかなくてすみません。ちょっと小腹がすいちゃって……」


「そうなんや。ここの料理は一級品やからどれを食べても味は保証したるわ」


 彼の名前は斉藤一。

 彼は俺がいつも利用している情報屋で職業は確か【記者】だと言っていた。

 最初の職業選択時に選択しなかったらこの職業になってしまったらしい。

 言葉遣いからも分かるように関西出身のプレイヤーであるが、情報は正確で信頼できる人物である。


「新しい情報はありますか? いい情報なら買いますよ」


「あるで、あるで、ぎょーさんある。今は多くのプレイヤーが動き出し始めたんや。色んな情報が街中を駆け巡っとる。その中で本当の情報だけを扱うのがわいの仕事や。青木くんはどんな情報が欲しいんや?」


「それじゃ。まずは美味しいお酒と料理の情報からお願いします」


「かーーーっ!! それは一本取られたなぁ。わいの負けや。タダでとっておきの情報おしえたる。実はなぁ……」


 斉藤さんから最新の情報をタダで教えてもらい。

 更に美味しい料理やお酒までご馳走になってしまった。

 俺達の話は弾み俺もお酒を2杯も飲んでしまう。

 

「うぷ~っ こりゃ食べ過ぎたな。それにしても…… お酒って美味しいよなぁ」


 果実ベースのお酒は飲みやすくジュースを飲んでいる感じだった。

 料理とお酒に満足した俺は酔ってしまい、千鳥足になりながら部屋へと戻っていく。


「あー早く寝たい…… ベッド、ベッドは何処だ?」


 暗い部屋でベッドを探して見つけたベッドに飛び込んだ。

 シーツに潜り込んだ俺は柔らかく温かい感触を感じていたが、深く考える力はすでに無くそのままスヤスヤと深い眠りへと落ちていく。



 

★ ★ ★ ★




「あわわわーーーーーーっ!!」


「ん? 何だよ、大きな声をだして」


 アナマリアの声に目を覚ました俺の眼の前にはアナマリアの姿あった。


「どうしてお前が俺のベッドにいるんだ?」


「このベッドはいつも私が使っているベッドなのです。相馬くんの方が知らない内に…… はうっ!! まさか…… 夜這い!? 私は既に大人の女性に……」


「はぁぁぁ!? おいおい、まてまて。俺が夜這いをかける訳がないだろ? これは俺のベッド……じゃないよな? へっ? なんで俺がお前のベッドで寝ていたんだ?」


「うふふ…… 私もついに卒業したのです!! でも悔しい事に全然思い出せないのです。もしや!? 睡眠プレイ!! 初めてが変態行為だなんて私は嫌なのです。だから今からもう一度やり直すのです」


 アナマリはベッドの上で立ち上がるとバタバタと服を脱ぎはじめた。

 それを必死で止めながら俺もパニックに陥る。


「待て待て、脱ぐなって…… 見える。見えるって!! んっ? お前がちゃんと服着てるって事はおかしいんじゃないのか? 俺だって、ほら服もズボンも着ているし…… 普通なら行為をしたら裸だろ? そう言えば何故、俺も外用の服を着ているんだ……? あっ思い出したぞ」


 全てを思い出した俺はアナマリアに説明をはじめた。


「嘘つきは駄目なのです。相馬くんも男ならちゃんと自分のやった事は認めて欲しいのです」


 アナマリは認めようとしないが、俺はちゃんと覚えている。


「俺は手を出していない。絶対にだぁぁぁ!!」


 俺は酒は20歳を越えるまで絶対に飲まないと決意した。




★ ★ ★ ★




 誤解を解くのに時間は掛かってしまったが、何とか信じて貰えた。

 アナマリア自身も何も覚えてないのが引っ掛かっていたらしい。


「チッ!! 卒業したと思っていたのに!! これだからチキンは駄目なのです」


「おい、俺が確かに悪いが、チキンとはなんだ!!」


「煩いのです。チキンはチキンなのです」


「はぁ~、今回は俺が全面的に悪いからなぁ~」


 両手を上げて降参のポーズを取る。


「もしも…… 同じ様な事になったら…… 次はちゃんとして欲しいのです……」


「なっ!!」


 小さな声であったが、確かにそう聞こえた。

 その仕草は可愛らしく心臓を掴み取られたかと思うほどに胸が苦しくなる。


 ブルブルと頭を振り雑念を振り払う。


「馬鹿な事を言ってないで、クエストを貰いにいくぞ」


 俺は問題を変えるように言い放つ。


「クエスト?」


「あぁ昨日、斉藤さんから教えて貰ったんだよ。クエストの貰い方をな」


 昨日、事を思い出しながら俺は力強く頷いた。

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