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17話 ダンジョン

 スラ男の背に載って俺達が向かったのは南西の方角。

 見慣れたモンスターには目もくれずに、未知の敵を探して森の奥へと突き進んで行く。

 暫く走っていくと森のエリアを抜ける。

 

 森の先には荒野が広がっており、大きな岩が幾つも転がっていた。

 見渡すかぎり茶色い大地と突風で砂塵が舞い上がる景色はカウボーイが出てくるハリウッド映画のようだ。


「荒野エリアって感じかな。さてどんなモンスターが現れるか楽しみだ」


 新しいエリアに興奮していた俺はすぐに正気へと引き戻される。


「ギャギャギャ!!」


「ゴブ太が敵を見つけた様だな。全員警戒してくれ」


 スラ男が変形を解除し、移動用の大型の姿から動きやすい本来の大きさに戻る。

 前衛にスラ男とゴブ太がツートップで並び中衛にアナマリア、そして後衛を俺が守る陣形だ。


 すると前方の地面が盛り上がり、地中から人型のゴーレムが現れた。


「ゴーレム? 地底人? 取り合えず戦うぞ!」


 ゴブ太が突撃を開始し、自分の武器である古びた剣でモンスターに切りかかる。

 モンスターランクはどちらが上かは分からないが、LVマックスまで上がったゴフ太の攻撃は敵モンスターを一撃で倒していた。


【マッドゴーレムをラーニングしました】


モンスターはマッドゴーレムと言う名前でモンスターランク6でゴブリンジェネラルと同じランクであった。


 倒した後に蘇生にも挑戦してみたが失敗に終わる。


「出てきたモンスターがゴブ太と同じモンスターランクって事はこの辺りは適正エリアかもしれないな。もう少し奥にも行ってみよう」



 見渡す限りの荒野を感を頼りに突き進む。

 スラ男やゴブ太がいればちゃんと街まで連れて帰ってくれるので、思いっきり探索が出来る。

 俺一人のスキルでは対応できない事も頼りになる仲間がいれば乗り越えられると言う訳だ。


 その後も何度かマッドゴーレムを倒しながら荒野を突き進んで行くと地面にポッカリと空いた巨大な穴を見つけた。


「う~ん。これはダンジョンだよな……」


「おっきな穴なのです。真っ暗で中が見えないのです」


「ギャッギャ」


「よし。入るか!!」


 迷いも無く、俺はダンジョンに入ろうとした。

 けれどそれはアナマリアが必死に俺の服を掴み邪魔をする。


「何が!! よし。入るか!! なのですか!? 普通は警戒するものなのです」


「目の前にダンジョンがあるんだぜ? 普通入るだろ?」


「普通は入りません。まずは安全を確かめたりするのです」


「チッ邪魔くせぇな。それじゃちょっとだけ覗いてみようぜ。危なかったらすぐ逃げ出せる様に奥には行かないって事で」


「それなら……」


 アナマリアの意見も間違ってはいないので、取り敢えず様子見で入り口部分だけ覗いてみる事となった。




★ ★ ★ ★




「へぇー。外から見た感じだと真っ暗闇だったけど、中に入ってみたら明るいんだな」


「壁に生息した苔が光っているのです。これなら明かりを用意しなくても大丈夫なのです」


「モンスターの気配は…… 無さそうだな。もうちょっとだけ奥に行って見ようぜ」


「余り奥は危険なので、ちょっとだけなのです」


 様子を見るにしても、少しは探索しないと様子見にもならない。

 せめてモンスター位とは遭遇したいものだ。


 俺は数十メートル程進んだ所でおもむろにステータス画面を開いた。

 そしてあるアイテムを指定し取り出してみる。


「てっててーん!! ピッケルゥゥゥ」


「なんですかそれ?」


「よくぞ聴いてくれた。これはピッケルと言う採掘用の道具なんだ。実は情報屋の話によれば街の北側にはダンジョンが何個か見つかっていてな。ダンジョンの中でこのピッケルで壁を崩すと稀に鉱石が取れるんだよ。前から使ってみたくて、ピッケルだけは買っていたんだよな」


「相馬くんは何でもやりたがりなのです。本当に子供っぽいのです。だけど純粋な所も相馬くんの魅力なのです」


「うるさいわ。子供に子供っぽいって言われたくもない」


 俺はピッケルを振りかぶり、近くの壁に叩きつけてみた。

 ダンジョンの側壁はピッケルの衝撃を受けて、ボロっと表面がこぼれ落ちる。


「意外と簡単だな。これなら俺でも何かアイテムの素材を手に入れれるかもしれないぞ」


 何度もピッケルを叩きつけて行くと、こぶし大の石がこぼれ落ちた。


「何だこれは…… 鉄鉱石って書いてあるな」


 鉱石を手に入れる。

 その後もピッケルを振り続けているとその他にも何個かの鉱石を手に入れた。


「ぶ~。面白くないのです。私達は放ったらかしにされているのです」


 暇そうにしていたアナマリアは俺にタラタラと文句を言ってくる。


「別に良いじゃないか。このアイテムで何か役に立つアイテムが手に入るかも知れないんだぞ」


「見てるだけの私達は面白くないのです。スラ男くんもそう言っているのです」


 しかしその後もブツブツと文句を言い続けるので、根負けした俺は採掘作業を中断した。


「わかったよ。それじゃもう少しだけ奥に行ってみるか」


 俺達はダンジョンの奥へと進んでいく。

 ダンジョンは迷宮の様に幾つもの分岐で別れており、俺は意味があるのか解らないが武器で壁に印を付けながら進む。




★ ★ ★ ★




「おかしくないか? モンスターが全く居ない…… はじめてダンジョンに入ったけどこれが普通なのか?」


「確かにモンスターがいないのです。お昼寝中とかでしょうか?」


「んな訳ないだろ? 真剣に答えてくれよ。だいぶん奥に来たけど一匹とも遭遇してないんだぜ?」


「相馬くん。前に大きな部屋らしき物があるのです。きっとあれが最奥なのです」


「だな。入ってみよう」


 ダンジョンに入ってから1時間位経過しただろうか?

 幾つもの分岐を越えて俺達は大きな口を空けた部屋にたどり着く。

 中に入ると部屋と言うより大地をくり抜かれて作られた空間。

 けれど最奥には石で作られた祭壇の様な物が設置されていた。


 その祭壇には一つの影が浮かび上がっている。


「何だあれは……」


 いくら壁が光って視界が確保されているとは言っても、一定の距離を超えると闇に包まれて見えなくなってしまう。


 この距離では影の正体は解らないままであった。


 俺達が立ちすくんでいると逆に影の方から近づいてくるのが分かった。


「やっと見つけのじゃ。気配を感じたので見に来て正解じゃったが…… これでやっと我の目標が成る時が来たという訳じゃな」


 その声には聞き覚えがあった。

 影のシルエットが近づくにつれて次第に姿が明確になってくる。


「まさか…… お前は魔王……」


 ほんの十m位の距離まで近づかれて絞り出した言葉がそれであった。


 この距離ではもはや逃げる事も敵わない。

 俺は恐怖と緊張から口いっぱいに溜まった唾をゴクリと飲み込んだ。



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