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16話 今やれる事

 魔王と遭遇した日から安全の為に狩りを一旦中断し、魔王の対策を考え俺は机に伏せていた。


「クソッ 魔王相手にどうすりゃいいんだよ!!」


 いくら考えても良い案は浮かばず、俺は少々苛ついていた。


「相馬くん、大事なお話があるのです」


 すると後ろからアナマリアが声を掛けてきた。

 その表情は真剣で俺もどうしたのかと不安がよぎる。


「何だよ改まって」


「私、実家に帰らせてもらうのです!!」


 アナマリアは俺を指差し、力強く宣言する。


「えっ?」


「止めたって無駄なのです。私の意思はゴブ太くんの【スキル】よりも固いのです」


「止めるって何も、お前って実家あったの?」


「もちろん大天使様の所なのです。うふふふ、寂しいですか?」


 チラチラと俺の様子を伺っている節があり、どうやらコイツは【実家に帰らせて頂きます】ってフレーズを言いたかっただけのようだ。


 なんとも分かりやすい奴だ。

 ならば主導権を取るために此処は一芝居打って置く。


「出ていくのは良いが、もう戻ってくるなよ?」


「なんですと!? それは……離婚!! 酷い仕打ちなのです」


 アナマリアは身体を仰け反らして驚いている。


「妻が出ていくと言えば、普通は止めるものなのです。相馬くんの思考回路はおかしいのです」


 ムキーっと怒り騒ぎ立てるいつものアナマリアを見て、つい笑ってしまう。


 さっきまで悩んで頭を抱えていたのに、一瞬で軽くしてくれた。

 

 今回ばかりはアナマリアに感謝する他ない。


「いくら考えても仕方ないな。俺は今やれる事を精一杯やってやろう」


「一体、何をやるのです?」


「魔王と出会って色々悩んでいたけど、もう大丈夫だ。アナマリアも実家帰るんだろ? 気を付けて帰れよ」


 俺はアナマリアを送り出して、早速準備に取り掛かる。




★ ★ ★ ★




 スラ男とゴブ太には別れ際に安全な場所で狩りを続けるように指示をだしているので、少し会えなくても大丈夫だろう。


 最初に俺はギルド会館と呼ばれているプレイヤーがギルドを立ち上げた際にホームが出来るビルへ向かう。


 一階のロビーには依頼ボードと呼ばれる場所があり、そこで依頼を出す事で誰でも見る事が出来るようになっていた。

 受付で俺は同時に10個の依頼を出すと、ギルド会館を後にする。


 その後、何件かの雑貨屋や魔法具店を見て回り幾つかの商品を購入する。

 数時間ほど潰した後は、再びギルド会館へと戻り依頼の受注状況を確認した。


「何個か受注されているな? 素材集めだから既に終わっているやつもあるかも。一度カウンターに行ってみるか?」


 ロビーに入り受付に向かって歩いていく。

 周囲には多くのプレイヤーが所狭しと集まっていた。


「すみません。終わっている依頼あります?」


「青木相馬様ですね。2つ既に完了しておりますよ。回収しているアイテムを受け取りますか?」


「受け取ります。へぇ~、これがレアアイテムの【鏡岩石】かぁ…… それでこれが薬師しか取れないと噂になっているレア薬草の【四つ房の生命】ね。確かに受け取りました。残りの依頼もお願いします」


 アイテムを受け取ると俺は宿屋へと帰っていった。


 


★ ★ ★ ★




 アナマリアと別れて数日間、俺はずっとアイテムを集め続けていた。

 街の情報屋からアイテムリストを購入し、レア度の高いアイテムの依頼を出し何個も手に入れている。


 ゲームの序盤という事もあって、プレイヤー達も本当の相場が解っておらず適当に設定した金額で売買が行われている。

 その相場より少しだけ色をつけた金額を提示してやると依頼はすぐに受理されていく。

 ある程度素材を集めた俺は宿屋のテーブルの上にレアアイテム達を並び始めた。 


「それじゃ、錬金術でレシピ作りだ」


 アナマリアは実家とやらに帰っているので部屋には俺しかおらず、久しぶりに集中してゲームを楽しむ事ができる。

 誰にも邪魔されずにゆっくりとした時間を過ごし、少し興奮気味に錬金術を使い始めた。


 結果、幾つかのレアアイテムを無駄にしてしまったが、俺は新しいアイテムを幾つか手に入れる事に成功する。

 金銭的にも底を付き始めたので、そろそろ行動を開始した方がいいだろう。


 この数日間、色々と情報を集めてみたが魔王の噂は届いて来ない。


 なので魔王と出会う確立も少ないと言う事だ。

 

 俺が再び狩りに出る事を決めた瞬間、部屋のドアが勢いよく開かれる。


「私、帰ってきたのですーーーー!!」


 アナマリアは部屋に飛び込むと、俺を見つけて飛びついてきた。


「うおっ 危ないだろ? もう帰ってきていいのか?」


「とても寂しかったのですぅぅぅ」


 アナマリアは頭をグリグリと押し付けながら、嬉しそうにしていた。


「おい、もういいだろ」


 俺はアナマリアを引っ剥がした。

 アナマリアは少しむくれていたが、すぐに元気を取り戻す。


「それで、大天使様の所に帰って何をやってきたんだ?」


「もう大丈夫なのです。魔王が出てきても私が追っ払ってやるのです」


「へぇ~ そりゃ頼もしい。大天使様が何かやってくれたのか?」


「ふふふ。秘密なのです」


 どうやらアナマリアも魔王対策を用意してくれていたようだ。

 これなら冒険を再開してもいいだろう。



 

★ ★ ★ ★




 魔王と出会って一週間が過ぎ、俺とアナマリアは再び森へと向かっていった。

 森に入ると多くのプレイヤー達が狩りに勤しんでいる。


 俺が狩りを休んでいた間に追いつかれているかもしれない。

 魔王の事ばかり考えていたが、ゲーム攻略の方も気合を入れ直した方が良さそうだった。


 二人で森の奥へ進みながら、ゴブリンを倒していく。

 俺のLVも高くなっているので、ゴブリンには遅れを取る事もない。

 武器は【木の棒】から【細身の剣】にランクアップしている。

 攻撃力向上に伴い敵の殲滅速度も上がっている。


 複数のモンスターと出会った時は【逃走】も使いながら、俺達は人気の少ない森の中へと突き進んだ。


 森の奥でスラ男達を呼んでみると、何処からと無く現れる。

 ステータス画面で強さを確認すると、LVは上限まで上がっており、更に新しいマルチスキルも入手していた。



「予想はしてたけどさ。お前ら勤勉すぎない?」


「相馬くんはブラック企業の親玉なのです。スラ男くんとゴブ太くんは社畜なのです!!」


 アナマリアが嬉しそうに弄ってきたので、俺は定番のお仕置きを繰り出す。

 

「痛いのです。アイアンクロー禁止なのです!!」


「まぁいい。よし攻略を再開しようか。今日は行った事のない場所を探索しようぜ。もちろんスラ男達の改造メインでな」


「がんばるのです」


「ギィィィーーーー!!」


 この森は意外と広く、まだ訪れた事の無い場所の方が多い。

 先頭を森に詳しいゴブ太に任せて、俺達は森の中を突き進んで行った。 

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