14話 動き出した物語
広場での演説が在った日から今日で2週間が経過していた。
あの日を堺にプレイヤー達は一斉にゲーム攻略へと動きを加速させる。
街ではPTやギルドの勧誘が盛んになり、多くのプレイヤー達が新しい仲間と共に武器を手に取りモンスターを狩り始めた。
始まりの街でもっとも力があるのは、広場で演説を行ったギルド【エデン】である。
一気に百人を越えるメンバーを集め、今も勢力を拡大させている。
後は中小規模のギルドが続き、残りは日々メンバーを入れ替えたりも出来る野良PT主体のプレイヤー達が活発に活動している。
プレイヤーの姿が無かった南出口付近でも多くのプレイヤーが所狭しとモンスターを探していた。
「たった数日なのに結構変わったよな」
「街の外でもプレイヤーさん達で一杯なのです」
「俺も最初はあんな感じだったのが懐かしいよ」
俺はプレイヤーの邪魔にならない場所を歩きながら、今の現状に歓喜を覚えていた。
やはりゲームは多くの人と一緒にプレイした方が面白いに決まっている。
これぞゲームの醍醐味であり、そんなプレイヤー達より頭一つ抜き出ている今の現状を思い返してみると、頑張って本当に良かったと思えてくる。
所詮、ゲームは普通ではありえない展開に心を踊らせたり、プレイするプレイヤーよりも強くなりたいと言う単純な願望が行動力を生むのだろう。
なのでこのゲームを楽しみたいと願っている俺はやる気に満ちていた。
俺達は冒険者が大勢いる原エリアをすり抜け、スラ男が待つ森の中へと入っていく。
今日も狩りを行いLVや素材などを手に入れる為だ。
森エリアの出現モンスターは草原エリアよりもモンスターランクが高いのでプレイヤーの数もまだ少ない。
普段なら俺達が森の中に入ればすぐに来てくれていたスラ男とゴブ太の姿が今日は見当たらなかった。
ステータスバーで二人のHPを確認してみると、特に減っている様子も無く、死亡した訳では無さそうだ。
「あいつら一体どうしたんだ?」
「いつもなら飛んで近づいてくるのに変なのです」
周囲を見渡すと、近くで数名のプレイヤーがモンスターを狩っている。
「あっもしかして、俺の言いつけを守っているのかもしれないな……」
どうやらプレイヤーの姿が増えたので、どうらやスラ男達も身動きが取り辛くなっているようだ。
ならば後はどうやって合流するか?
「どうやってスラ男達を探せばいいか……」
「ん~ 人気の無い場所で呼んでみたらどうです?」
「そんな犬じゃあるまいし…… いや。もしかしたら来るかもだな」
人気が無い森の奥まで進むと俺は大きく息を吸い込み森の奥へ向けて二匹の名前を叫ぶ。
「スラ男~。ゴブ太~」
しばらくすると2体のモンスターの影が近づいてくるのに気づいた。
あのシルエットは間違いない。
俺の親友、スラ男とゴブ太だ。
「スラ男ーー! ゴブ太ーー!! 会いたかったぞ」
二匹は俺の周りを嬉しそうに回っていた。
「スラ男くん、ゴブ太くん、昨日ぶりなのです」
スラ男とゴブ太は、あの日からそれぞれ進化を果たしている。
まずはスラ男だがモンスターランク5のインセクトスライムからモンスターランク6の犬型スライムに生まれ変わった。
★★★
名前:スラ男
職業:シアンススライム
属性:水
モンスターランク:6
LV:15
HP:151
MP:0
力 :112
速度:145
知力:45
耐久:70
スペシャルスキル
【変形】 :LV5 身体の形状を変化させる。
【噛み付く】:LV2 鋭い牙で敵を噛みつき引き裂く
【疾走】 :LV4 高速で移動できる。
【超感覚】 :LV3 視力、嗅覚、聴覚の補正【中】
【潜む】 :LV2 気配を消し、敵の感知から逃れる
【自己再生】:LV2 自己修復能力【小】
マルチスキル
【連携】 :LV4 連携攻撃時の攻撃力補正【中】
【忠誠】 ;LV5 主人の命令に伴う行動時の全能力補正【小】
★★★
スラ男はシアンススライムへと進化し、犬のような姿をしている。
能力は速度に特化しており、【疾走】のスキルは移動時や戦闘時にも役に立つ優秀なスキルである。
次にゴブ太はまた違う系統へと進化していた。
★★★
名前:ゴブ太
職業:ゴブリンジェネラル
属性:土
モンスターランク:6
LV:17
HP:185
MP:0
力 :160
速度:80
知力:40
耐久:102
スペシャルスキル
【庇う】 :LV1 対象者を身を挺して守る。スキル使用時の耐久力補正【大】
【連撃】 :LV3 剣戟による連続攻撃
【増力】 :LV2 力値補正【中】
【威嚇】 :LV3 モンスターランク下位のモンスターの行動を阻害させる
マルチスキル
【連携】 :LV4 連携攻撃時の攻撃力補正【中】
【忠誠】 ;LV5 主人の命令に伴う行動時の全能力補正【小】
★★★
「二人共本当に強くなったよな! スラ男は複数のスキル持っている技能派でゴブ太は純粋に戦闘特化って感じで、それぞれに特色が出来て良い感じだ」
そしてスラ男達のおかげで戦わずにしてLVアップを続ける俺のLVもかなり上昇していた。
★★★
名前:青木 相馬
職業:マッド・サイエンティスト
LV:33
HP:85
MP:260
力 :45
速度:90
知力:150
耐久:40
スペシャルスキル
【ラーニング】 :LV∞ モンスターをラーニング
【死者蘇生実験】 :LV2 モンスターランク8までのモンスターを二体、一定確率で蘇生し仲間にできる。
【改造】 :LV2 モンスターランク8までのモンスターを一定確率で改造
【錬金術】 :LV∞ アイテムや武器を錬成
【天使の加護】 :LV∞ 天使の加護を得る
マルチスキル
【援護射撃】 :LV2 後方からの攻撃時における命中率、ダメージ量の補正
【薬草採取】 :LV6 薬草採取量が増える
【逃走】 :LV2 逃走時における速度補正
【以心伝心】 :LV2 仲間モンスターの伝えたい事を理解する
★★★
俺のLVもかなり上昇しており、情報屋から買った情報によればトッププレイヤー達と同程度のLVは有していた。けれど戦闘系では無いので、戦闘力に関しては半分以下しか無いだろう。
新しく覚えた【以心伝心】これは、仲間モンスターの意図を汲み取る事ができる超便利スキルであった。
今まで困っていたコミュニケーションもこのスキルのおかげで解消済みだ。
「スラ男くんのお肌は相変わらず。プニプニしているので、どんな姿になっても可愛らしいのです」
「じゃあ、スラ男に載せて貰って移動を始めよう。目的地はプレイヤーの居ない森の奥地へ向かうぞ」
スラ男は自身の形状を変化させて馬と同じ位の大きさに変わる。
最近知った事なのだが、【変形】のスキルはLVが上がる事に変形出来る大きさが変わる。
最初は自身の体積と同じ大きさで姿を変えるだけで在ったが、LV2で体積の2倍~1/2倍、LV3で堆積の3倍~1/4倍と幅が広くなっていた。
俺達がスラ男の背中に乗ると、スラ男は勢いよく森の中を走り始めた。
森エリアはつい数日前から探索を始めている。けれど広大な森のエリアの把握は時間が掛かりそうだ。
森の奥で高LVはのモンスター達を倒していく。
スキルを使いモンスターを蘇らせようと頑張っていたが、今日は運が悪く一度も成功していない。
「クソ、全然成功しないじゃないか! 一体どうなっているんだよ」
愚痴をこぼしながら狩りを続けていると、スラ男が俺に近づいてきた。
スラ男は俺の身体に自身の身体をこすりつけて何かを訴えている感じだ。
「何だって!? 近くにプレイヤーがいるのか?」
俺はスラ男の意図を汲み取り、驚きを覚える。
「この辺りに居るって事はトップレベルのプレイヤーに間違いないな」
「スラ男くん達が見つかると不味いので、離れるのですか?」
「う~ん。そうだな…… ちょっと遠くから様子をみよう。トッププレイヤー達がどんな狩りをしているか興味もあるしな」
俺達はスラ男に案内を頼みプレイヤー達がいる場所へと向かう。
そこには一人の男性プレイヤーが倒れていた。