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11話 錬金術

 早朝いつもの雑貨屋に寄り、狩りで貯めた金で俺はアイテムを買い込んでいた。

 今日は狩りはせずに、前からやってみたい事に挑戦するつもりだ。

 買い物を済ませて、部屋に戻るとアナマリアはいまだ気持ち良さそうな表情を浮かべスヤスヤとベッドで眠っていた。


 可愛らしい寝顔を見ていると心がほっこりしてくる。


 窓から太陽の高さを確認してみると、かなり高い位置まで上ってきており、体感で言えば正午前後と言った所だろう。

 それにしてもこいつは一体いつまで寝る気なんだろうか。


「おい、そろそろ起きろよ」


「フニャ? 相馬くぅーん。愛しているのです~ 誓いのキスを……」


 眠ったまま唇を尖らせながら抱きついてきた。


「だぁーー!! お前は痴女か!!」


 アナマリアをベッドに放り投げたが一向に起きる気配が無い。


「ハァハァ、危ない…… こんな所で俺のファーストキスが奪われてしまう所だった。まさか眠っている幼女が襲ってくるなんて想像もできんわ。コイツは一体どんな夢を見ていやがる! おい起きろってもうすぐ昼だぞ」


 多少の事では効果が無いと判断した俺はアナマリアの頭を掴みブンブンと振り回す。


「うううぅ…… 良い夢を見ていたのに、なんだかとっても気持ち悪くなって来たのです…… ん? あっ相馬くん、おはようなのです。昨日は疲れていたのでちょっと寝過ごしたのです」


「やっと起きたか…… 寝過ごしたの範囲超えてるっての!! まぁ今日は狩りには行かないから、お前は部屋でゆっくりしていてもいいけどさぁ」


「ふにゃ、狩りにはいかないのですか? お休みなのですか?」


 ベッドの上で上半身だけを起こしたアナマリアは眠そうに目を指でこすっていた。


「ふっふっふ、今日は錬金術の実験をする予定なんだよ。わかるか錬金術。前から挑戦してみたかったんだよなぁ。まさに男のロマンだぁ!!」


「錬金術…… それで何が出来るんですか?」


「それを調べる為に俺はさっきまで買い出しに出ていた訳だ。ほら見てくれこの素材を」


 備え付けのテーブルの上に雑貨屋で買い込んだ。アイテムを並べていく。


「まずは雑貨屋で買ったアイテムが、ポーション、毒消し、目薬、気付け薬、麻痺薬、パン、水、、クルルの実だな」


「おぉ。いっぱい買ったのです。お金は大丈夫なのですか?」


「心配ないぞ。実験だから全部安い商品を選んだし、スラ男達との狩りでかなりの余裕があるからな! それにだ。ここだけの話し今も金が少しづつ増えているんだよ。きっとスラ男達が倒したモンスターのお金が入ってきているんだとおもう」


「凄い、働かなくてもお金がはいるんですか!? 相馬くんは、いつでもニートになれるのです!! すねかじりの天才なのです」


 曇り一つ無いキラキラとした瞳をむけやがって!! 

 こいつはチョイチョイ無自覚で人をコケおろしてきやがる。

 悪気がある訳では無く、思っている事を口にしているだけにたちが悪い。

 

 普段ならアイアンクローの一つでもかましてやる所だが、今回は寛大な心で許してやる。

 

 なにせ俺は目的の為にはどんな苦行でも乗り越えられる男! 今は錬金術と言う未知のスキルが俺を待っているんだからな。


「次に俺が集めた薬草。アラクネ草だろ、マンドラゴラ草、忘れ草、粘着の樹脂……」


 テーブル一面に並べられたアイテムを見下ろし俺は笑みを浮かべた。


「何にせよ。錬金術の実験の開始だ!!」





★ ★ ★ ★





 ステータス画面を開き、錬金術のスキルを初めて使う。

 すると目の前に魔法陣が現れる。何重にも描かれた円形の内側には読めない文字が書かれ、中心部には三角形が描かれている。


「これが錬金術…… んで、どうやるんだ? なんでもやってみない事には前に進まないからな、ポーションで試してみるか」


「おぉ、これが錬金術ですか?」


「アナマリアにも魔法陣が見えるんだな。俺のスキルだから俺しか見えないと思っていたけど」


「普通に見えるのです。昔、こういう魔法陣を書いていた人達を沢山見てきたのです」


「昔って…… 何百年前の話をしているんだよ。じゃあ早速はじめるぞ」


 アイテムを魔法陣の上に載せてみると自動的に中心の三角形の頂点へと設置される。


「なるほど…… ならもう一つ載せてみるか」


 二つ目のポーションも残りの頂点に自動的に設置された。


「三角形の頂点に一アイテムって感じか。なら錬金術を使うにはアイテムが三つ必要って事になるな。それじゃ最後のポーションを載せて、錬金術開始だ」


 ポーションを三つ載せた魔法陣から光が溢れ出した。

 どうやら準備が完了したようだ。


「スキル【錬金術】」


 俺がスキルを唱えると、魔法陣の光が大きくなりアイテムが光に包まれ見えなくなっていった。


「おぉぉーー。すっげー」


「凄いのです」


 光が収まると魔法陣の中心に一つのアイテムが置かれていた。

 

【錬金術成功:上級ポーションを錬成しました】


「やった! 成功だ。これが錬金術か……」


「相馬くん三つのアイテムが一つになったのです」


「でもポーションが上級ポーションにランクアップしているぞ! 要はアイテムを掛け合わせて違うアイテムに産まれ変わるって感じだろう。 今度は毒消し薬でやってみるか」


【錬金術成功:上級毒消し薬を錬成しました】


「また成功だ。同じ素材を合わせれば一つ上のアイテムに変わるかもしれないな。次は種類が違うアイテムを掛け合わせてみるぞ」


 ポーション+毒消し薬+目薬


【錬金術:失敗】




「失敗したら最初に載せたアイテム以外が無くなってしまうと……まっ想定の範囲だけどな! 次は何個か上級ポーションを作ってみるか」


 俺はその後、4個の上級ポーションを錬成させた。


「同じポーションばかり作っているのは何故なのです?」


 実験を眺めていたアナマリアが疑問を投げつける。

 

「こう言う錬成や強化系の作業は、大きく分けて2パターン化される事が多いんだよ。一つ目はレシピさえ合っていれば100%成功するパターン。失敗すればアイテム消失してしまう事が多い。二つ目はレシピがゲーム中に手に入るパターン。素材は判るのだが、錬金術自体に確立が設定されている。もちろん失敗したらアイテム消失」


「どっちもアイテムが無くなっちゃうのです。クソゲーなのです」


「そう思うのも無理はないが、そうじゃないんだ。下位のアイテムで上位のアイテムが手に入るって事は凄い事なんだよ。序盤でいうなら、絶対に手に入らないアイテムを使ってプレイ出来るからな」


「そう言うものなのですか?」


「そう言うもんさ。じゃあ俺は色々試してレシピを見つける作業に入るから、アナマリアは食事でもしてこいよ」


「了解なのです。実はお腹がペコペコだったのです。相馬くんも頑張ってくださいなのです」


 俺は何度も実験し幾つかのみレシピを見つけ出す。


ポーション×3=上級ポーション

毒消し薬×3=上級毒消し薬

毒消し薬+目薬+気付け薬=万能薬

アラクネ草×3=蜘蛛の糸

マンドラゴラ+マンドラゴラ+毒消し薬=上級鎮痛薬

マンドラゴラ+マンドラゴラ+マンドラゴラ=幻惑の粉


 ストック切れで実験を終了した。


「マジかぁ…… 知らないアイテムが増えていくぞ。どんだけチートなんだよ全く…… それにしても錬金術、面白いスキルだ。これからはドンドンとレシピを増やして行くぞ」


 新しいスキルに満足した俺は気合いを入れ直した。


「相馬くん、相馬くん、外に凄い人だかりが出来ているのです」


 一息付いたとき、食事を終えたアナマリアが飛び込んできた。


 「人だかり? それがどうかしたのか?」


「どうやら近くの広場でプレーヤーの人が演説をするみたいなのです。食堂でも話題になっていたのです。私も行ってみたいのです」


 ずっと気になっていた俺以外のプレーヤー達。

 このゲームが開始されて既に数日が経過していた。


「プレイヤー達もいよいよ動き出したって訳か!! よし俺達も見に行くぞ」


「アイアイサーなのです」


 プレイヤー達の動きを知る絶好のチャンスだ。

 俺は興奮気味に宿屋から飛び出し広場へと向かった。

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