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10話 変化

 森での狩りを終えて俺たちが迷っている事は理解できた。

 今の状態を整理すれば狩りの間はずっと、敵モンスターを探して森の中をひたすら歩き続けてきたので、方角すらも解らなくなっているって事だ。


 ステータス画面を開いてもマップ機能は存在しておらず、マップを頼りに帰る事もできない。

 まさに八方塞がりの最悪の状況だと言える。


「マジか! やべーぞ。アナマリアは街がある方向わかるか?」


 藁をもすがる思いで、アナマリアに聞いてみた。


「うーん…… 多分…… きっとあっちなのです」


「お前絶対に適当に言っているだろ? はぁ…… これは本気で困ったぞ。遭難して食料不足で死亡ってシャレにもならない……」


 予想通りアナマリアは役に立たないので、俺は腕組をしてどうしたものかと真剣に考えだした。

 幸い食料は予備があるので一晩野宿した位では無くならない。

 

 なので朝まで森を彷徨うことはできるのだが、夜の森はモンスターに襲われる危険も高まってしまう。

 出来れば安心して眠る事が出来る宿屋で休みたい。


 俺が腕組みしながら思案していると突然手を引っ張られた。

 視線を向けるとゴブ太が俺の手を強く引っ張っている。


「ギィー」


「ゴブ太、どうしたんだ?」


「ギィーィ、ギギー」


「そんなに強く引っ張ってどこ行く気だよ? ん? もしかしてゴブ男は出口が分かるのか?」


「ギィィー!!」


 ゴブ太は嬉しそうにその場で飛び跳ねる。

 どうやら本当にゴブ太は出口が解るみたいだ。


 今思えばゴブ太はこの森で仲間にしたのを思い出す。

 それならゴブ太はこの森を熟知している可能性が高く、良い案も浮かばないのならゴブ太に賭けるのも悪くない。


「よし決めた。ゴブ太、道案内を頼む」


「ゴブ太くん凄いのです。格好いいのです」


「ギッ!?」


 アナマリアは飛び跳ねながらゴブ太を褒めている。


「なら、お前の彼氏は格好いいゴブ太で良いんじゃないか?」


「なっ何をいっているのですか!? 私は相馬くん一筋な……」


 一瞬、否定にしようとしていたアナマリアであったが、何かに気づき俺の顔を覗き込んできた。


「もしかして…… 相馬くん妬いているのですか?」


 はぁ? アナマリアは何を言っているんだ。


「ばっバカ。何で俺が妬かないといけないんだよ。逆に付きまとわれなくて清々するわ」


「もぅ、妬かなくても私は相馬くん一筋なのです。安心して欲しいのです」


「妬いてなんかいないっての」


「天使に隠し事はできないのですよ」


 嬉しそうに俺の周りをクルクルと移動しながら、嬉しそうに何度も顔を覗き込んできやがる。


 そんなに俺は変な顔をしていたのか?


 何だが恥ずかしくなり、その後無口を貫き40分程度かけて出口までたどり着く。


「ここまでくればもう大丈夫だ。ゴブ太も案内ありがとうな。申し訳ないがお前たちは街に連れて行けない。だからお前達はこの森の中でモンスターを狩りながら、俺達の事を待っていてくれ。スラ男には以前も言ったが、他のプレイヤーを見つけたら隠れるか離れるかしてくれ。知らない奴らばかりだけど、プレイヤーは一応仲間だからな」


「ギィー」


 手を振って別れを惜しむスラ男達から離れ、俺とアナマリアは街へと帰還する。


 街に戻ったのはいいが、俺が無言を貫いていたので今度はアナマリアが拗ねていた。


 全く、ちょっと無視した程度で拗ねるとは心の狭い天使だ。

 だけどよく考えれば、無視した俺の方が心が狭くつまらないクソ野郎だと考えを改める。


(やっぱ、はやく仲直りした方がいいよな……)


「アナマリア。森でも言ったけど今日は好きな物食べていいからな」


「わかっているのです」


 やはり元気がない。


 落ち込んだアナマリアを見ていると何だか俺の調子も狂ってしまう。


「あのさ、さっきは無視して悪かったな……」


 バツが悪そうに、謝罪を口にする。


 アナマリアは目をパチパチさせて驚いていた。


「ううん。私も悪かったのです。彼女が他の男性を格好いいと思うなんて…… 反省しているのです。相馬くんが不安になるのも分かるのです」


 いやいやいや。ちょっとおかしいよね。相手はモンスターだよね? 今の言い方だと、俺はゴブリンよりかっこ悪い男って事になるよね?


 全力で否定しようとも考えたが、また雰囲気を悪くするのも嫌だったので、ツッコミは入れないでおく。


「まぁそれじゃ。これで仲直りだ」


「仲直りなのです。私はお腹がとってもすいているのです」


 アナマリアの元気が戻り、俺も大きく息をはいた。


「あっそだ。お前もちゃんと謝ったり出来るんだな。マジ感動した」


「私は自分の非もちゃんと認められる出来る女なのです。あっ私はあの店に入りたいのです」


 アナマリアが指差す店に入り、他愛もない会話をしながら食事を食べた。


 近くにいると騒がしく思える幼女だが、俺はアナマリアと出会ってから毎日が楽しいと感じはじめていた。



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