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第4話

 俺たちはゴブリンたちが残した宝石を拾い上げて、それぞれのポケットに入れると、再び森の中の獣道を歩き始める。

 すると、倉橋先輩がすぐに、「あっ」と声を上げた。


「どうかしました、先輩?」

「レベルが上がってる」

「なんと?」


 先輩に言われて俺も、自分のステータスを確認してみる。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


相沢凍夜

種族:人間

クラス:勇者

レベル:2(+1)

EXP:15/30


HP:33/36(+8)

MP:14/14(+2)


STR:19(+4)

VIT:18(+4)

DEX:13(+2)

AGL:16(+3)

INT:12(+2)

WIL:14(+2)

LUK:15(+3)


ATK:19(+4)

DEF:11(+2)


スキル

・ステータス鑑定

・魔術師魔法(Lv1)

・僧侶魔法(Lv1)


魔法

・ファイアボルト

・ヒーリング


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 確かにレベルが1から2に上がっていた。

 レベルアップして最初に見たせいか、前回確認時からの差分が、明滅する文字で表示されている。

 スキルは増えてないけど、ステータスがいい感じに上がってるな。


 ちなみに、HPが3点減ってるのは、さっきの戦闘でゴブリンに殴られた分だろう。

 実は最初の一発以外にも、あの後もう一発直撃をもらっていたのだけど、それでこれなんだから、ゴブリンの攻撃はやっぱり大したことないんだな。




 そんな風にステータスを見ながら歩いていると、前方で鬱蒼としていた森の木々が途切れ、まばゆく視界が開けている場所が見えた。

 俺と先輩は互いに顔を見合わせ、うなずきき合ってから、その場所まで走ってゆく。


「うわあ……」


 倉橋先輩が、風にたなびく髪を手で押さえながら、感嘆の声を漏らした。


 俺たちの出てきたそこは、小高い丘の上だった。

 そこから見ることのできる雄大な景色を、俺はしばし、時間を忘れて眺めてしまう。


 空は青く、多少の雲が見える程度の、気持ちのいい快晴だ。

 眼下に視線を移すと、今俺たちがいる場所からもうしばらく森が続いていて、その先には、一面の畑が広がっていた。

 そして、その畑の間に、ぽつりぽつりと民家のような木造の建物が点在している。


 さらに──空気が澄んでいるせいか、驚くほど遠くまで見渡せるのだけど──畑の広がる向こう側に小さく、石の壁に囲われた場所が見えた。

 壁に囲われた範囲には、黄緑色やだいだい色といった色とりどりの住居の屋根が所狭しとぎっしり敷き詰められていて、壁内のその中央付近には、ヨーロッパ風のお城らしき立派な建物も見える。


「街だ……」

「街ですね……」

「あそこまでどのぐらいあるかな」

「2~3時間ぐらい歩けば、多分」

「行ってみる?」

「行かない選択肢はないかと」

「だよねー」


 方針を決めた俺と先輩は、その小高い丘から下る道を、のんびり歩いてゆく。

 すると突然、先輩が爆弾発言をしてきた。


「ふふっ……なんか嬉しくて、何かに抱きつきたい気分」


 子どものように無邪気に、そんなことを言う倉橋先輩。

 えっ……それは、何、どゆこと?

 そういうことなの?


「……だ、抱きついて、みます?」

「……へっ?」


 俺が聞くと、先輩は顔をボンッと真っ赤にして、で上がった。


「あっ、いやっ、今のはそういう意味じゃなくて……ただちょっと口が滑ったっていうか、思ってたことが口に出ちゃったっていうか、いや、それもそういう意味じゃないんだけどっ!」


 しどろもどろに弁明を始める先輩。

 どうも俺の勘違いだったららしいが……それはそれとして、先輩が殺人的に可愛い。


 ……ちょっとぐらい、からかってみてもいいかな?

 いいよね?


「お、俺はいいですよ、どうぞ」


 俺は両手を広げて、先輩に抱き付いていいですよの姿勢を取る。

 ところで、からかうつもりが、俺自身が恥ずかしくなってしまっているんだがどうしたらいい?


「えぇぇぇえええええっ!? あ、相沢くんって、そういうキャラだっけ?」

「俺は倉橋先輩ラブですから、いつでもウェルカムです」


 あ、言っちゃった。

 話の流れって恐ろしい。


「えっ……はえっ? ……い、いいの?」


 倉橋先輩は、俺の言葉をどこまで本気だと受け取ったのか。

 それはそれとして、その眼鏡の下からの上目遣いはヤバイです、先輩。


「いいですよ。むしろ早くしないと、先輩が可愛すぎて、俺のほうが抱きしめちゃいますよ」

「ふぇっ!? ま、待って、今やるからっ」


 先輩はそう言って、恥じらいながら、腕を広げて待つ俺の胴に、恐る恐る控えめに抱き付いてくる。

 先輩の顔が、俺の胸に預けられる。


 俺はもう我慢できなくなり──腕を先輩の背中へと回して、その小さな体をぎゅっと抱きしめる。

 そして俺は、先輩とたった二人しかいないその場で、叫んだ。


「──倉橋先輩、大好きです! 付き合って下さい!」




 ……はい、もう言い逃れできませんね。

 場の流れってホント怖い。


「ふぇっ……ふぇぇぇぇ……」


 先輩は俺の腕の中で茹ったようになっていたが、しばらくして、俺を抱く力をギュッと強める。

 そして、


「……はい。不束者ふつつかものですが、よろしくお願いします」


 先輩は消え入りそうな声で、そう言った。


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