キノコ生態レポート 番外編2
「黄色と言ったらレモン!」
れもん、って確か黄色の果物よね。キノコ君が食べてるところは見たことないけど、多分美味しいでしょう。だから…。
「れもん、と言ったら美味しい!」
一瞬ヴィロサが怪訝な表情をしたけど、流れを止めることなくマジカルバナナを続ける。よかった。あんまり自信はなかったけど一応あってたみたい。
そしてヴィロサが羽をパタパタと震えさせながら口を開く。
「美味しいと言ったら松茸!」
「え? いやちょっと待ってヴィロサ」
「あら、何かしら月夜ちゃん?」
「今松茸って言った? え? 貴女松茸食べたの? キノコなのに?」
「それがどうかした? 松茸は美味しいわよ?」
「いやアンタが松茸を食べたら共食いじゃない!!」
にこりとしながら恐ろしい事をさらりと言ってのけるヴィロサ。確か松茸の『キノコの娘』もいたと思うけど、その子は一体どうなったんだろ?
「えー? でも松茸は美味しいわよ?」
「それでもダメなものはダメ! ほら、フリゴも黙ってないで何か言いなさいよ! 貴女の所のリーダーでしょ?」
「私は食べたことないのでわかりません」
「そういう問題じゃないでしょー!? え? 何なの? 私が間違ってるの?」
困ったように肩をすくませるフリゴ。いやいや困ったのは私だっての。それともこんな風に考えることが『人間』っぽい考え方なのかな?
「まぁだったら今回は私のミスでいいわ。月夜ちゃんばっかり負けても可哀想だしっ!」
私が何を言っているのか全くわかっていないようだけど、渋々頷くヴィロサ。
いやいやルール的には問題ないんだけど……。
「は? 何言ってるの私は負けないよ? 頭大丈夫?」
「あらあら必死ね月夜ちゃん。そんなに負けるのが怖いのかしら?」
「は? 負けるのはヴィロサだよ? 頭大丈夫?」
「え? 月夜ちゃんの頭よりは大丈夫よ?」
「何言ってるの頭大丈夫?」
「同じこと何度も聞きすぎじゃない!? 少なくとも目の前にいるポンコツキヨタケよりはよっぽど正常よ!」
「誰がポンコツキヨタケよ! 脳みそテングタケの貴女だけには言われたくないんだけど?」
ヴィロサが鋭い視線で私を睨んでくる。負けじと私も睨みかえしたけど、私達の横でフリゴがまた呆れたように大きな溜め息をついた。
「ほらほら、脳みそテングタケさんも、ポンコツキヨタケさんも、一旦落ち着いてください」
「はぁ!? 貴女も分類はテングタケ科じゃない!? なんで怒らないのかしら? ポンコツキヨタケに貴女もバカにされてるのよ?」
「脳みそテングタケはヴィロサさんへの悪口ですからね。私は脳みそテングタケではありませんし」
フリゴがなだめるように言う。
そして、私もフリゴに追従するように横で口を開く。
「そうよヴィロサ! フリゴは、脳みそテングタケじゃないわ! お尻をフリギネアよ!」
「その名で呼ぶなって言ってんでしょうがぁぁぁ!! このポンコツキヨタケ!」
私がフリゴのあだ名を告げると、ヴィロサは一瞬目を丸くした後口を押さえて笑みをこぼし、フリゴは私に対して大声で怒鳴った。
「ぷぷっ! お尻をフリギネア……。あはははは! そうね! フリゴちゃんは変態ですもんねぇ!」
「はぁ!? 脳みそテングタケさんに言われたくないんですけど!」
「ねぇ月夜ちゃん。お尻をフリギネアちゃんが何か言ってるわねぇ! え? 何て? お尻をフリギネア? お尻をフリギネア?」
「あら本当ね! お尻をフリギネアちゃんは何をしてるの? お尻を振ってるの? 変態だし?」
「殺す! 貴女達いい加減にしてくださいよ!!!」
ヴィロサが笑いを堪えながらフリゴを見つめる。ちなみにフリギネアってのはフリゴの本名で、あの子はフリギネアと呼ばれるのを嫌がってるわ。もちろんそんなこと知ったこっちゃないけどね!
「うふふふふ。あー可笑しい。お尻をフリギネアなんてよく考えたわね月夜ちゃん」
「まぁ脳みそテングタケの貴女では思い付かないと思うよ? でも、あまり自分がバカだからって、気を落とさなくてもいいんだよ?」
「は? ポンコツの頂点ポンコツキヨタケが何かほざいてるわね」
「あ?」
「は?」
激昂するフリゴを他所に、ヴィロサと睨みあう私。そして、ヴィロサはひきつった笑みを浮かべたのち、大声で私に向けて怒鳴る。
「貴女達上等じゃない! 誰が『役場』リーダーで、誰に生意気な口を叩いたのかその身に教えてあげるわ!」
「はん! 脳みそテングタケの貴方に負けるはずありませんがね! 望むところです! 月夜さんもヴィロサさんもまとめて叩き潰してあげますよ!」
「貴女達テングタケごときがツキヨタケに敵うと思ってるの? 格の違いってのを見せ付けてあげるよ!」
そうして私達三人は、表に飛び出して行ったのでした。
突然始まる番外編はこれで終わりです。ちなみにマジカルバナナは結局月夜さんが負けたので、紅さんを煽りに行きました。
今、主人公が紅さんに執拗に狙われてる理由だったりします。
読んでくれてありがとうございました。




