#8 クエストと傷だらけの少女
「すげぇな…二人して多属性持ちっていうのは…」
「そんなにすごいのか?」
「お前は化け物だとして、普通は一つなんだよ。俺は火属性持ちだからな」
「へぇ…じゃあ良かったじゃないか、ミリア。水属性と光属性を持ってたもんな」
「ええ!でもイツキさんには及びませんでしたが…」
「大丈夫だミリアさんよ。さっきも言ったがこいつが化け物なだけだ。気に病む事はねぇぜ」
「そうですか…」
もちろん、さっき属性検査をやった結果についての話だ。話の通り、ミリアに属性検査をさせたところ、水属性の魔石と光属性の魔石が反応したのだった。どちらも回復魔法が多い属性だった。
全属性を持ってはいるし、回復スキルも取れるには取れるが俺は下級スキルしか取っていなかったのでミリアが取ってくれるのならとてもありがたいが…
「ちなみに水属性と光属性は回復系のスキルが多いな。サポートに回ってみたらどうだ?」
「そうですね!そうしてみます!」
ハウドがそうミリアにアドバイスしてくれた。俺の考えている事を実行してくれてとてもありがたい。
さて、ミリアの属性検査が終わった。この後は何をしようか…
***
とりあえずギルド内の掲示板へと向かい、手ごろなクエストを探す事にした。ミリアはとても楽しそうに掲示板内のクエストを見回している。そういえば俺もクエストを受けるのは初めてだっけか。あの時は確かそのままギルドを出て………それでミリアと出会ったんだ。そんな前の話ではないのだが。
はてさて、どんなクエストがあるかな、と。
「お、薬草を採って来てください、か。なんていうか、オーソドックスだな。まあ、初めてって事もあるし、これでいいだろ」
「それにするんですか?」
「ああ。ミリアもいいか?」
「ええ!」
ミリアの元気の良い返事を聞き、掲示板の張り紙を剥がす。それを受付に持っていく。
「おい、ハウド」
「ん?おお、クエストか」
「ああ。んで、初めて受けるんだけど、どうすればいい?」
「その依頼用紙とギルドカードを出してくれればいいぞ」
「了解。それじゃあ、これを頼む」
「わかった。気をつけてな」
「もちろん」
そうして俺とミリアはギルドを出る。場所についてはあの張り紙に書いてあった。それを憶えておいたから問題ない。さて、初クエスト、頑張りますかね。
***
街から東へと抜けるとそこには大きな森が広がっていた。ちなみに俺が街まで歩いてきた道は西の方向。そこは平地というべきか、何もなかった。
「さて、必要な薬草は…」
とりあえず地図に示されていた場所へと着いた。薬草の図も見せてもらった。が、周りを見渡しても特に何も見つからなかった。…まあ、モンスターは出ないようだし遅くならなければいいか。
ミリアも周りをキョロキョロと見渡し、目的の薬草を探している様子だ。…こんな時に見抜く能力とか使えないかね。“相手を”というのだから、そんなに都合よくはいかないか。
まあ、常時使ってるのに回りの木々が反応しないのだから、当然なのだが。
仕方ない、と思い周囲の足元を確認しつつ、足を前へ動かす。なかなか見つからないが、これで5本見つけて来いというのだから、雑用仕事も甘く見れない。
「あ!これじゃないですか?」
ミリアが声を上げ、一つの場所に指を指していた。そこを見ると、図に描かれていたものと同じものがそこにあった。しかもその周囲には同じものが複数存在している。
「やっと見つかったなぁ…」
「ですね!」
「ありがとな、ミリア」
「いえ!」
見つけられたことが嬉しいのか、とても喜んでいる様子だった。
運良く依頼の分まで摘み取れたので、早く帰る事も出来る。
「さて、それじゃあ帰りますかね」
「そうですね」
帰ろうとしたその時、茂みが小さく揺れた。それに俺とミリアは警戒心を大きくする。ブロードソードを構えつつ、少しずつ茂みに近いづいておく。
「ミリア、もしモンスターだったら援護を頼む」
「はい」
茂みをかぎ分ける。―――――そこには全身傷だらけの怪我を負った少女がいた。
***
「てな訳で、ここに連れてきたんだ」
「事情はわかった」
先ほど茂みが揺れたのは、怪我をおいつつも移動しようとしていたからだそうだ。今ではミリアの回復魔法で回復し、ギルドの酒場で飯を食べていた。
彼女は獣人だそうだ。それもかなり幼い。頭には兎耳、そして青白い髪に蒼い瞳。獣人でも兎族に属するそうだ。
そして、彼女には疑問を抱いた。どうしてこんなに幼い少女が、あんな場所で一人でいたのか。
しかし、それは本人から聞かなければわからない。
「だが、どうしてそんな怪我を…」
「俺にもわからない」
彼女には聴こえないよう、ハウドと会話する。彼女の方へ目を向けると、ミリアが積極的に彼女へ会話を投げかけている。
あそこまで露骨に恐怖心を出されてしまっていてはどうにもならない。…まあ、ギルドに連れて来てしまったのは俺自身で、それが彼女の恐怖心を助長させてしまっているのかもしれないが。
「えっと、お前名前は?」
「……ルア。助けてくれてありがとう。…ごめんなさい、私お金もってなくて…」
だから飯に一切手を出してなかったのか。うーん、幼い子が一文無しとなると……この世界にはある奴隷として生きていて、捨てられた、と考える。いや、あくまでもこれは勝手な俺の予想だ。
「ああいや、気にしなくていい。えっと、俺はイツキだ」
「俺の名前はハウド。ここのギルドの受付員をやってるぜ」
俺とハウドが自己紹介すると、ルアは可愛らしい瞳でじっと見てくる。どうしたのだろうか。と思っているとルアの瞳が紅くなっていた。
能力だろう。身体には今のところ異常はないが…
念のためだ。
(相手を“見抜く”)
ステータスが目の前に表示される中、表示された能力名、それを見た俺は驚愕するしかなかった。
お久しぶりです。またまた改名していたスイです。
実に半年振りの更新で、ほとんど何も覚えていない状態から書いた話なので物凄い事に。
新しいキャラクターも出す事ができたので個人的には満足です。…ペース速いですね、気をつけます。
それでは今回はこの辺で。ノシ




