#4 助けた相手が王女様だった件
「な、なんですかいったい!!」
「あ?聞こえなかったのか?そのアイテムを寄越せっつってんだよ」
「そうそう。ああ、早く渡しちまったほうが身の為だぜ?」
「い、嫌です!これは母の形見なんです!」
「んなもんしったこっちゃねぇよ。さっさと寄越せよ!」
「嫌です…!誰かたすけて…」
なんでこうなったの…?能力さえちゃんと使えれば…。誰か助けて…。
***
「えっと?声がしたのはこっちのほうだったと思うんだけどなあ…」
今俺は退屈凌ぎのために悲鳴がした方へ向かっているのだが…。え?退屈凌ぎなら面倒事に首を突っ込むな?いや、本当に暇なんだって。
「…やです!」
ん?さっきの悲鳴の声と同じだな。という事はこっちか?
向かったのは武器屋と防具屋の間にある路地裏だ。なんでこんな路地裏から悲鳴が聞こえるんだろうな?
「…やです!たすけて…」
さっきよりも声が鮮明に聞こえてきたからかなり近い位置にいることがわかる。だが、なんであんなに大きい悲鳴が聞こえたのに誰も助けに行かないんだろう?俺はただ単に退屈凌ぎと興味本位で来たが、他の人が来たっていいはずだ。この世界の人と俺の価値観の違いなんだろうか?なら、何も言えないが。
、と。
「おら!さっさと寄越せって言ってんだろ!!」
「おいおい、怯えちまってんじゃねえか。しかも他のやつにバレちまうかもしれねえぞ?もう少し声抑えろよ」
「うう…。誰か助けてください…」
「どうしても渡たさねぇって言うんならしゃーねーな。気絶でもさせて奪ってくか」
ビンゴ。見っけ。これはアレだな。カツアゲか。てか、バレてるっつーの。
「楽しそうだな」
「あ?」
「お、おい…。バレちまったじゃねぇか…」
「え…?」
三者それぞれ反応を返してくれた。面白かった。
んで、どうしようか。あ、まずは、
(相手を“見抜く”)
それぞれ三人の頭の上に逆三角形状の矢印が出た。
ちなみに前に実験したが、善人なら黄緑色の矢印が出る。悪人なら赤色の矢印が出るようだ。
見た結果、男二人は赤。女の人のほうが黄緑だった。まあ、見ればわかるんだけどな。
「だれだお前!」
「俺?流離の旅人?」
「兄貴、やっちまおうぜ!」
「チッ…。面倒事が出来ちまったなぁ…」
まだ覚えたばかりだが、この魔法を使ってみるか。
「“ウォーターボール”」
「あ?うっ…ぐぁあ…。目が…目があああああ!!!」
「目が…痛てぇ…!」
お前らは某大佐か。
「とりあえず足止め成功だな。おい、ちょっと逃げるぞ」
「え…?あ、はい!」
唖然としていた女の人の手をひっぱり逃げようとしたが、
「に、逃がすか!」
「逃げんじゃねえええ!!!」
しつこいな。とりあえずこの魔法で足止めだ。
「“ウッドウォール”」
「畜生!なんだこの壁!!」
「びくともしねぇ…。なんだあいつ!!!」
とりあえず“魔法”を使ってみたが、満足だ。悲鳴が聞こえる前、ギルドで少し魔法の使い方を習っていたのだ。あまり自信が無かったが、成功したので良かった。
さっき俺が使った“ウォーターボール”は水属性魔法の初級魔法。“ウッドウォール”は土属性魔法の中級魔法だ。土魔法は自分の中で一番使いやすいらしく、スラスラ頭に入っていった。
まあ、そんな事はどうでもよく。
「おーい、大丈夫かー?」
「は、はい…。えっと…名前を訊いてもよろしいでしょうか…?あ、私の名前はミリア・フィオンといいます」
「俺はイツキ・ヤギュウ。よろしくな。んで、何であんなカツアゲに遭ってたんだ?」
「カツアゲ?」
「ああ、気にするな。んーと、何だ。ああ、強盗みたいなものを受けてたんだ?」
「たぶん、これが原因だと思います」
彼女が差し出してきたのは金のネックレスらしかった。真ん中に大きなルビーがある。これなら確かに盗もうとする輩もいるだろうな。
「これは、母上の形見なんです。だから絶対に手放さないように、いつも身に付けてるんです…。それが仇になるとは思わなくて…」
ああ、なるほど。だからこんなすぐ盗まれそうなものを身に着けてたのか。
大変だっただろうな。ぱっと見彼女は俺と同い年くらいだろう。この歳で母親を失くした気持ちなんか想像もできない。きっと辛さを押し込んで頑張ってきているんだろう。そんな中であんなカツアゲなんかに遭ったらたまったもんじゃない。
「そうか…大変だったな…。大丈夫だったか?」
「はい!ありがとうございます」
彼女は強い。俺だったら恐らく折れてるだろう。たぶん、彼女は“能力持ち”だろう。関係無いって思うかもしれないが、ギルドから聞いた話だが、心や精神が強い人ほど能力を持っている人が多いそうだ。
「あの、お礼も兼ねて家に来ていただけませんか?」
「ん?いいのか?」
「ええ!父上もわかってくださると思います!」
「なら、お言葉に甘えさせてもらうな」
「はい!こっちです!」
***
…。
「…」
「どうしました?早く入りましょう!」
「いや、家でかくね?」
「そうですか?えっと、父親は国王ですからたぶんそのお蔭かと」
は?国王?という事は彼女は王女様?そういえば彼女の名前は…ミリア・フィオンだったか。…フィオン?…国名だ。
と、いうことは王女様と普通に話してたわけか。
「いやいや、国王に俺が易々と会っていいものなのか?てか、易々話してたな。すまん」
「大丈夫ですよ。イツキは助けてくださった恩人です。そんな事気にしないでください」
そんな事って…。結構大事な事だと思うんだけどな。まあ、本人がいいって言うんならそうしようか。
「ただいま帰りました!」
「「「お帰りなさいませ。お嬢様」」」
「えっと、お邪魔します」
うわぁ…執事とかメイドとかたくさんいるよ…。本当にビビったわ…。
「おお、お帰り。ミリア。ん?そちらの方は?」
「ただいま帰りました。父上。この方はイツキ・ヤギュウ。私が襲われているとき助けてくださった方です」
「おお、そうかそうか!私はこの国の王をやらせてもらっている、オルグ・フィオンだ。此度は娘を救っていただき、本当になんと言えばいいか…」
「いやいや、いいですよ。通りかかっただけですから」
半分本当で半分嘘だ。だって、この状況で退屈凌ぎのために助けましたなんてとても言えないではないか。
「ああ、敬語は使わんでいいぞ。娘を救ってもらい、わざわざここまで来てくれたのだ」
「そう…か、わかった」
やっぱり敬語は慣れないため、ありがたかった。さて、とりあえずもう帰りたいんだが…。
「ええ!?折角ですし、ここで夕飯を食べていったらどうですか?」
「いやいや、そこまで世話を焼かせるわけにはいかないし、そろそろ帰ろうかと思うんだが…」
「いいではないか。娘がここまで楽しそうにしているのは見たことが無いんだ。私からも一緒に夕飯を楽しみたいと思うのだが…」
「…はぁ。わかりました。じゃあ、お言葉に甘えて夕飯をご一緒させていただきますよ」
半ば強制的に夕飯にご一緒させてもらい事になった。まぁ、滅多に無い機会だし、楽しませてもらおうか。
…はぁ、今日の帰りは遅くなりそうだ。
さぁて、今日も書き終わったな…。寝るk「おい」はいい!!?
「おい、貴様、なんで助けた相手が王女様なんだ。あぁ?」
い、いや、あの、そのですね。その方が後々面白くなるかなぁって…。
「んで?俺は大変な事になってんだよ!!!」
いやいや!王様と夕食なんて、滅多に無い事ですよ?!楽しんだほうがいいですって!
「お前…覚悟はいいな?」
へ?
「ウォーターボーr「ちょっと待ってください!」ん?」
おお!ミリアさん!助けてくれるの…?
「ん?ミリア?どうした?」
「いや、なんならもっと痛めつけた方がいいかと思いまして」
「そうか、俺もそう思ってたところだ」
え?マジですか。二人ともドS?!
「「問答無用!“ウォーターボール”!!」」
ぎゃあああああああああああああ!!!
~作者はまたもやログアウトしました~
「ああ、また作者ダウンk…『まだだ!!!』またか」
ふふふ。僕は何度でも蘇るッッッ!!!
「…」
ちょ、ミリアさん!?引かないでください!!!
「いや、あの…ああ!今回はこの辺にしましょう!」
あ、逃げ…「そうだな」ええ!?
わかりましたよ…。それでは次回まで
『気長に待ってて(ください)ね!』
〜更新情報〜
H26.12.25. 文章中の矛盾点を訂正




