#1 死、そして転生
「ふぅ、お使いも済んだし、帰るとしますか!」
俺の名前は柳生 樹月。今年高校に入学した16歳だ。
今俺は母親から頼まれたお使いを済まし終わった所だ。よし、やっと帰れるぞ、と思ってた矢先、
「どけっっ!!!」
猛スピードでこっちに走って来る男。手には包丁。え、ちょ、ヤバくね?
「どけって言ってんだろ!!!どかねぇなら刺すぞ!!!」
この男、マジだ。俺の本能が呼び掛けている。避けろ。殺されるぞ、と。だが、俺の脳は恐怖一色に塗り尽くされ、避けたくても避けれなかった。
「邪魔なんだよ!!!」
「え…?………ぐっ…がはっ…」
刺された。何とか刺された位置を確認してみると、左胸に刺されていた。
「う…うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
俺を刺した男は恐怖からか、そこから逃げ出した。俺はどうする事も出来ずに、もう助からまいと、朦朧としていく意識に身を委ねた。
***
「起きよ…若造」
「ん…?」
誰かに呼ばれ、目が覚めた。ここは何処だ…?四方八方、見渡してみたが、真っ白。どこまでも続いていそうな空間に俺は居た。何故、俺はこんな場所に居るんだ?確か俺は通り魔に刺されて…死んだのか?…だとしたら短い人生だったな。しかも親不孝だ。なんてこった…。
「起きたか、若造よ」
「あ、ああ。えっと、はじめまして?」
「はじめまして、若造よ」
…?誰だろうか、この老人は。白い髭を生やし、木の杖を持っている。なんか、俺の想像している神様みたいな人だな。
「その通りじゃ。儂は神。お主らをいつも見させてもらっとるよ」
「はあ。それで、神様は俺に何か様がありまして?」
「うむ。その為に呼び出したのじゃ。若造よ、お主は先程の通り魔に刺され殺されたのじゃ。それはお主自信でも理解出来ておるじゃろ?」
「まあ、大方出来ていましたよ。受け入れたくなかっただけで」
「そうか…。お主は余りに理不尽な死に方をしてしまった。それに儂は同情してのう…。もし、お主が望むのならば、蘇らせてあげようと思ってな」
「おお、それは本当ですか?」
「うむ。しかし、元居た世界には戻せぬのじゃ。それは許してくれぬか?」
「どうして…ですか?」
元の世界には戻れない。もう、父さんや母さんには会えないのだ。畜生…!悔しさや憎しみ、怒りといった感情が、今になって湧き出てくる。が、もう時すでに遅し。遅かったのだ。だから、この感情も、自分の中に呑み込ませる。
元居た世界には戻れない。だが、神様は蘇らせてくださるのだ。なら、それを感謝すべきであろう。今になってあの男を恨んだ所で、もう、どうにもならないのだ。欲を言えば、せめて親孝行はしたかったが。
「ルールなのじゃ。我々、神にもルールがあってのう、そのルールを破る訳にはいかないのじゃ」
ルールなら仕方ない。もう、諦めよう。どうにもならないのだ。
「ルールなら仕方ないですね…。わかりました。では、蘇らせて貰えませんか?」
「勿論じゃ。お主がこれから行く世界はそうじゃの…お主が居た世界での中世ヨーロッパ辺りの世界じゃ。その世界では、魔力によって、電気、火、風、水を作ることが出来るのじゃ」
おお、魔力と言うと、あっちの世界には魔法があるのか。やったね!
「魔法があるんですか?」
「そうじゃ。ああ、お主が先程の様に簡単に死なぬように体力、魔力、力、その他能力を底上げさせてもらったぞ」
「え、いいんですか?そんな事してしまって」
「本来はダメじゃの」
「え、ならどうして?」
「お主が死んだ孫にそっくりでの…。可愛がってあげたくなったのじゃ」
「いいんですか?そんな俺だけ特別扱いみたいな事になってしまって」
「本来はダメじゃが…まあ、大目に見てくれるじゃろ」
「そんな適当な…」
だが、ありがたい。ある意味、チート能力を貰えたんだから。
「あ、後、これから行く世界にはそれぞれ特有の『能力』を持つ事が出来るのじゃ。数少ない事じゃがの」
「わかりました。うーん…」
どんな能力がいいだろ?聞いてみるか。
「どんな能力ならいいんですか?」
「相手を殺傷させるような能力じゃなければ、儂が許そう」
殺傷させるような能力は禁止、と。まあ、殺された側だし、殺す側に回る気なんて更々無いんだけどな。
「じゃあ、『相手の能力を奪う能力』は出来ますか?」
「その能力でいいのじゃな?」
「はい」
「了解じゃ。では、そろそろお別れじゃな」
「そうですね…。短い間でしたが、色々とありがとうございました」
「うむ。礼儀の正しい若造じゃ。…おお、言い忘れておったが、儂とコンタクトを取りたい時は頭の中で儂を呼んでくれれば、大概は対応出来るじゃろう。所謂、念話じゃの」
「わかりました。大概、と言いますと?」
「儂も仕事をしている時は反応出来ん。それは許してくれぬか」
「わかりました。それでは、色々とありがとうございました。また、会える機会がありましたら、お話しましょう」
「うむ。その時はこちらこそ頼むわい。それじゃあ、もう行くか?」
「はい。お願いします」
「うむ。では、新しい人生を満喫してくれ。頑張れよ、若造ーーーーー」
神様はそう言い、俺は、眩しくはない、不思議な光に纏われ、再び朦朧としていく意識に身を委ねた。
初見の方ははじめまして。他作品から来た方はお久しぶりです。水司です。
さて、今回は異世界トリップ系の作品を書かせて頂きました。え、何故?それは、異世界トリップ系が書きたくなったんですよっ!☆っていう、簡単な理由です。(殴
他作品はどうした?ちゃんと更新していきますよ。ええ。
それでは、この作品をお楽しみください。
それでは、今回はこの辺で。ノシ
更新情報
H26.6.25.
サブタイトル、後書きを変更
H26.7.12.
文、能力を変更(後に影響が無いので安心してください。