空白の空間
不束者の造る小説ですが、楽しんでいただければ幸いです。
────人は、"死"と言う概念を感じた事はあるだろうか。
少なくとも、俺はつい先刻感じた。感じてしまった。────自分の"死"を。"死"の感覚を、この身を持って、知ってしまった。
それは何の前触れもなく突然で、自分がこの感覚を認識したのはこの身が"死"を受け入れた時だった。
"死"を認識した途端、睡魔が痛みを麻痺させ、意識は朦朧としていく。薄れゆく意識に身を任せ、その儚い命を終わらす。
───そんな体験を俺はしたのだ。
「此処、何処だよ………」
軽く腰を抜かしてしまったかもしれない。
ペタンと座り込み、慌てて座り方を変えようにも思うように身体が動いてくれない。頭の中は混乱状態で真っ白になっている。これではなにも考えられない。
とにかくまず、混乱した頭でも出来るような事を、状況確認をしたほうが良いだろう。俺は辺りを見回すことにした。
────真っ白、だった。いや、真っ白と言うより空白かもしれない。モノというモノはなく、上下左右奥行きすべてがない、悪く言って気味が悪かった。
「何で俺、こんな所に居るんだ………?」
「それは私が説明するよ」
ッ………!!
突然の声に、反射的に飛び退いた。恐る恐る声のした方へ振り向く。
「そんなに驚かれるとね………。ちょっと悲しいよ」
「えっ?あ……すみません?」
「何故疑問系なのかな?」
「と、特に理由って程のモノは……無いですけど」
俺の反応に傷ついたらしい声の人。その人は、男の人だった。銀混じりの金髪に碧い眼をした、はっきり言って無駄がないけど無駄だらけの格好良さをした男の人だった。
「む、無駄だらけは流石に酷い………!!」
いきなり四つん這いになって暗いオーラを纏始めた男の人。思わず引いてしまう程の暗過ぎるオーラだ。
「何で……!?」
引きはしたが、しかし、何かが引っかかった気がして首を傾げる。
「君、余り私が心を読んだ事に驚かないんだね。コッチが驚いたよ。別の意味で」
別の意味とはどんな意味なのだろうか?無駄だらけと言った事だろうか。まあそれは良いとして、この人が違和感の答えを言ってくれたようだ。
「心を読んだんですか?」
「あれ、気付いてなかったからの反応だったの?そうだよ、私は神だ。心が読めるのは当たり前だと思うよ?」
一瞬、耳を疑った。今この人………なんて言った?