砂糖過多の恋人。
竹野内 碧様 恋愛糖分過多企画に参加させていただきました。
一応ヴァレンタイン企画です。
ヴァレンタインは恋人とそれは…。
甘い誘惑…。
「まったく、チョコレート会社の陰謀よね。」
「僕は全く構わないよ。」
「そのホワイトチョコレートなんなの?」
「一緒にお風呂に入ろうね。」
「御断りよ。」
今日もエルアスド家の居間で恋人たちの攻防が起こっていた。
当主オーランド・エルアスドはかわいい恋人、笠田 海にメロメロなのである。
今日も海の故郷、ニホンの風習にちなんでホワイトチョコレート風呂に一緒に入ろうと多量に準備したのである。
パーウェーナ世界のヒデルキサム大陸のエルアスド山脈の向こうにあるクレシア芸術国は明正和次元的にいはフランス系と似た文化を持っている、最近では明正和次元のヴァレンタインというお祭りを庶民から貴族まで取り入れているようである。
エルアスド家は貴族でもエルアスド山脈地帯の守護を任された大貴族なのであるが、当主のオーランドは最近できた、恋人海にベタぼれである。
「このマカロン美味しいわ。」
海はそうにいいながら美しく盛られたガラスの器からピンクのマカロンを取った。
異世界である以上マカロンはマカロンではないはずなのだが、自動翻訳機構はマカロンと訳している。
「海のために有名店から取り寄せたんだよ、これもね。」
エルアスドが箱に入って多量につまれたホワイトチョコレートを優雅にカフェオレを飲みながら見た。
「だから、ホワイトチョコレート風呂なんて入らないわ!なんでそれにホワイトチョコレートなのよ。」
「海の黒髪に白がよく似合うからだよ。」
「なんか、エッチ臭い発言よね。」
「もちろん、ホワイトチョコレートごと海を堪能するためだよ。」
「この外見詐欺!」
海は高級ソファーに優雅に腰かけて笑うオーランドを見てため息をついた。
クレシア王家に連なるオーランドは確かに銀の長い髪と薄紫の瞳の整った顔立ちをしている。
それなのに恋人の海をよく言えばあまやかな、悪く言えば色ボケした目で見てるのはどういうわけであろうか?
「そろそろ僕の膝の上においで。」
「いやよ、おば様に見られちゃうわ。」
「海は恥ずかしがりだね。」
オーランドは隣に座る海を抱き寄せて左頬にキスを落とした。
ついでにそのまま海の体勢を倒して上から海の唇を奪った。
音が聞こえそうな貪り方である。
「すぐに孫かしらね。」
「奥様、その前に婚姻していただきませんと。」
オーランドによくにた中年の銀髪の美女といかにも良家の執事と言ったお仕着せの髭のナイスミドルが部屋の入口から覗いて言った。
「キャー。」
「海、愛してるよ。」
視線に気がついて海は逃げようとしたがオーランドはそれを許さずさらに首もとにキスを落とした。
温度差がありまくりのカップルである。
二人のであいそれは明正和次元から海がクレシア芸術国に旅行したことから始まる。
こちらで明正和次元文化の流行があるように明正和次元でもパーウェーナ世界観光が流行っていてそのため海が来たのである。
「ここが有名なクレシア王宮ね…中の観光なんかできないわよね。」
観光客な海は芸術的な王宮の前でしばしば眺めた。
優美なラインはモダンなアートのようでそれでいて歴史的な古さを感じさせるのである。
明正和次元のスペインの某有名な巨匠が作ったようだと海は思った。
もちろん、王宮に一般人が入れるコースなどない。
逆にみすぎて、衛兵に見とがめられるのが落ちであろう。
事実不審者な海に声をかけようと衛兵は動こうとしているようだ。
「あまり見てると捕まるよ。」
低い美声が背後から聞こえて海は振り返った。
銀髪の長い髪を一つにまとめた薄紫の瞳の青年がたっていた。
服装的にこちらの正装なのでこれから公の場に出ると思われる。
裾の長い上着はシルバーで紫の三角の模様がはいったモダンな作りとなっているようだ。
「なにも悪いことしてないですわ、あなたはどなたですの?」
「僕はオーランド・エルアスド。」
青年、オーランド・エルアスドはにこにこ言った。
若い女の子が王宮をキラキラした目で見てるのを見て興味を持って声をかけたのである。
「エルアスド公。」
「僕の知り合いだから大丈夫だよ。」
ついに動いた衛兵にオーランドはいった。
まったく嘘なのはわかりきったことであろう。
オーランドはニコニコと押し通した。
「こういう建物好きなの?」
「…あの、お偉いさんですの?」
「警戒してるね。」
「……ええ、まあ。」
人懐こいオーランドは警戒気味の海に微笑んだ。
女の一人旅ならば当たり前であろう。
「大丈夫、僕の身分は保証するよ、エルアスド山脈守護公だから。」
「身分は保証なんてならないわ。」
「面白いね、君。」
オーランドは心底面白いと思った。
今まで山脈守護公の身分をいえばしっぽを振ってついてくるやからばかりだったからである。
「ありがとうございました。」
海はかかわり合いになりたくなくて愛想笑いを浮かべて通り過ぎようとした。
「王立美術館に案内してあげるよ。」
「王立美術館?」
「うん、王宮と同じデザイナーが作った権威ある建物で裏側はなかなか見れないんじゃないかなぁ」
オーランドが人の悪い笑みを浮かべて言った。
王立美術館は常設展示に先代王妃製作の王妃千嘉・クレシアの像があることで有名である。
シグルト国王が愛する妻、千嘉王妃を書いた絵画も多々飾られている。
もちろんみられるのは展示室のみである。
なぜ、王宮と同じデザイナーが設計したのか、それはかつての離宮を改装したからである。
「僕なら裏側まで案内してあげるよ。」
「そんなことしてもいいんですの?」
「権力の正しい使い方だと思うけどね、それで、いつまでいるの?」
「明日までかしら?グーレラーシャ傭兵国も観光したいので。」
「わかった、明日迎えにいくね。」
「え?困るわ。」
かくしていつにまにやら二人はデートをすることになった。
それから、色々あってめでたく恋人同士になったのである。
世の中わからないものである。
「さてと、本格的に海を堪能しようかな。」
オーランドはそういって海を抱き上げた。
「オーランド、見られてるわ、やめてちょうだい。」
「おことわりだよ、ホワイトチョコレート風呂は後で一緒に入ろうね。」
あまやかにわらってオーランドは海を自室のベッドに引きづりこんだ。
「本当に孫かしらね。」
「先に婚姻からです、奥様。」
今日もエルアスド山脈守護公家は平和のようだ。
多量のホワイトチョコレートを本当に風呂に入れたのかどうか?
それは、次の日の風呂が甘い香りが漂っていたことから一目瞭然といえよう。
オーランドの顔に見事なアザができていたのはご愛敬である。
「海、僕の事好きだよね。」
「好きよ。」
今日もエルアスド山脈守護公家の居間では恋人たちの甘い会話?が繰り広げられている。
海は本日は逃げられなかったようでオーランドの膝の上である。
その様子をニヤニヤニコニコしながら見つめる奥様、その他大勢のいる風景は恒例となっていると言えよう。
駄文をよんでいただきありがとうございます。