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(2)

  「あ、あの、なぜ、服を汚したのは私の方で」

  「そ、そんなことではありません!」

   そう、出る声で叫ばれる。

  「手錠を持ってきたぞ!」

   そう、マルクが叫び部屋に入る。と、その中の空気をなにか察したがま優先するべ 

  きことをわかっている、王子は少女に手錠をかける。

   俺は数秒たじろいだが、なんとか正気に戻る。

  「王子、私はこのモノを連れて行きます」

  「あ、ああ」

  「私の不注意でした、申し訳ございません」

  「いや、君の不注意なんかじゃない、こっちの不注意だ、まさか護衛の中にいるとは」

   と、気のいい、王子はそう言ってくれる。姫に向き直ると、なお俺を鋭い目で見つ 

  める。それにどう対処していいかもわからない俺は、左手で少女を担ぎ上げる。

  「お、下ろせ!」

  「静かにしろ」

   そう暴れる少女の腕が俺の右手にヒット。

  「・・・っ・・」

   我ながら少し声を上げてしまった。

   瞬間、

  「あ!」

   そう、姫が叫ぶ。

  「え?」

   と、思った時、

  「す、すぐに治療を!」

  「え?い、いえ!自分でしますので、本当に」

   そう言って立ち上がる姫。

  「いけません、血が、血が出てるではありませんか」

  「いえ、これくらいなんとも」

  「いいえ!私のために負った傷です!すぐに私の部屋に!」

   なっ!?

   そう言われ、少女もろとも、姫の部屋に連れて行かれてしまった。

   マルク王子は唖然としていたが老人を微笑ましそうにしていた。

  「ひ、姫様、本当にこの程度のけが、なんとも」

  「いけません!さあ、中へ!」

   と、半ば強引に手を引かれる。

   そうして入った部屋は、俺の部屋とはあまり変わらなかった。

  「手を」

  「え、あ、はい」

   姫の迫力にやられ、手を出してしまった。

   すると、すっと、丁寧に治療をしてくれる。

  「よく、私も怪我をして小さい頃お母様に」

   お母様とは王女のことだろう。王女はまだ俺も小さな頃になくなったと聞いた。

   その言葉を聞いて俺はなんと答えていいかわからなかった。

  「できました!」

  「あ、ありがとうございます」

   そういい、俺は手をグーパーしてみる。思ったことはこの程度では貫通した手の治 

  療にはならない。後で自分の部屋で治療しなおすことにした俺は、本題に入った。

  「では、私はこのモノを」

  「待ってください!」

   と、少女を抱え用としたとき、止められる。

  「あなたお名前は?」

   と、姫が少女の前にしゃがみこむ。

  「・・・・・・・・・・・・・」

   やはりだんまり。

  「姫様、危ないです!」

  「大丈夫です」

   そう、答えた姫は、また質問をする。

  「なぜあんなことを?」

  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

  「話してはくれませんか?」

  「・・・・・・・・・・・・・・パパ様を殺したからだ」

  「え?」

  「お前らがパパ様を殺したからだ!」

   と、そう叫んだ。

  「私たちが?」

   そう姫が言うと、キッと少女の目が鋭くなる。

  「そうだ、パパ様は立派な兵士だった!立派な獣殺しだった!でもあるとき帰ってこ

  なくなった!そのとき連絡が来た!パパ様は死んだって!」

   今の話からしてなぜ姫様たちが殺したことに。

  「私は報告に来た兵士たちの後を追って話を盗み聞いた!事実はこうだった!任務で

  失敗しなきゃあんなことにならなかったのに!そういった!」

   任務で失敗。

  「それで私の父上が?」

  「そうだ!私はそう聞いた!」

   と、叫ぶ少女。

  「そんな・・・・・・・・・・・・・」

   姫は絶句した。それはそうだろう。王は確かにそういう仕事もしなくてはならなう。

  さだめである。そんな顔を知る由もない姫は絶句した。でも、よく考えてみればおか 

  しい。リヴァイアの国では死刑制度はないはず。

   そう、任務に失敗した獣殺しは・・・・・・・・・・・・・・

  「父の名前はなんていうんだ?」

  「え?」

  「父の名前だ、覚えているだろう」

  「・・・・・・・・・・・・ゼルド・ルイシス」

   !?

   その言葉に驚いた。俺はその男を知っている。

   多分、いるとは思っていたが、まさか、

  「ゼルド・ルイシス、確かにそう言ったな!?」

   俺はもう一度確かめる。

  「そうだ」

  「どうしましたか?」

   その問いかけに俺は答える。

  「聞け、少女、リヴァイア王国には死刑制度はない」

  「そ、そんなことは知っている!でも、じゃあ、どこに消えたんだ!?」

  「兵士は死んだと言っていたのか?」

  「言ってない!でも、だったらどこに!?」

  「特務機関という場所を知っているか?」

  「特務・・・・機関?」

   やはり知らないらしい。それはそうだ、王族だけの秘密のようなものだ。

  「特務機関、俺はそこに小さな頃から、そこで殺しの術を習った」

  「だからなんだって言うんだ!」

  「そして俺はそこで仲間もできた、アンノーンの俺にだ」

  「アンノーン、お前アンノーンなのか?」

  「ああ、そうだ」

   非常に驚いたをする少女。

   それはそうだ、なぜアンノーンがこの船に、そう思うのは当たり前だ。

  「そして特務機関は任犯罪を起こしたもの、そして任務に失敗したものが派遣される」

  「そ、そんなものが」

  「そして中でも俺に一番良くしてくれた男がいる」

  「どういう意味だ」

  「その男とは昨日も一緒に話、俺の任務も応援してくれた」

   俺は、思った、この子に光を与えようと。

  「特務機関にはひとつルールがある、一度戦争に出たものはその罪を解消するという

  ものだ、だが、ここ最近はめっきり戦争もない、だが、今、この時!戦争は起ころう 

  としている」

  「だから、何が言いたいんだ!」

  「いいかよく聞け!ゼルドは、お前の父は!その特務で、昨日まで俺と話をして、そ 

  してこの戦争に出ることが決まっている!」

  「・・・・・・・・・・・・・・・う・・・そ・・・・」

  「お前は言ったな!?お前の父親は立派な兵士だと!そうさ!そうだとも!任務の失 

  敗!?それは仲間を救うためのものだったと聞いた!悔いはないときいた!ただ娘だ 

  けが心配と嘆いていた!そしてゼルドは確かに強かった!特務でも俺の次の利き腕    だ!あいつは絶対この戦争で生き残る!」

  「・・・・・・・・・・・嘘だ」

   まだ半信半疑の少女の肩を抱き俺は叫んだ。

  

 ―――――お前の父親は生きて、戦争が終わればお前の元へ帰ってくる―――

  

   そう言い放った瞬間、少女は涙をボロボロと、流し始める。

  「・・・・・・・・・・・・・・嘘だ、嘘だ」

  「信じろ、お前の父親、ゼルドは一日たりともお前を忘れたことはない」

  「・・嘘、うそだよぉ」

   俺は確信を付くためにこういった。

  「俺は嘘を付けるほど頭のいい男じゃない、お前の父親もそうだろう?」

   そして、こういった。

  

  「ミーシャ」

  

   そう呼んだ。

   その言葉をつぶやいた瞬間、彼女の顔が、俺を凝視する。

  「どうして・・・・・・・」

   それに言葉は返さず笑顔を向ける。

  「ほ、本当に・・・本当にパパ様は」

  「本当だ、あいつは今もなお、立派な兵士だ」

   そう言うと、

  「うっ、うぇ、うっ、パパ様が、うっ、生きてる」

  「ああ」

  「生きてる」

  「ああ、生きてる、ピンピンしてる」

  「ううっ、ひぐっ、うぅ」

   そう言って俺の胸にうずくまった。そして俺はミーシャの肩を抱く。

  「話に聞いてたミーシャはもっと小さい頃だった、大きくなったな」

  「ひっ、ひっく、うん」

  「お前の父も喜ぶ」

  「うん」

  「絶対にあいつは帰ってくる」

  「うん!」

   そう返事しながらも涙は出続けていた。俺はミーシャを抱きながら、姫をみる。

   姫は驚いたように俺を見ている。

  「ど、どうかしましたか?」

  「あなたは・・・・・・・・・・・・・」

  「え?」

  「あなたはすごい人です」

   と、つぶやいた。

   その日、姫様の願望で彼女は拘束されず、ほかの舞台のものにも何も言わず、ミー

  シャは護衛のまま配属となった。

   そして、それを隠すために、ミーシャは姫様と同室になった。これはすべて姫が決 

  めたことであった。そして俺はこの日思った。彼女はこの日また強くなったと。

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