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(2)

  「では、私はこれで」

  「え?」

   い、行っちゃうんですか!?ってここにいるんだ姫様とま、マルク王子だっけ。

   俺は生唾を飲み込む。そして、コンコンっ。一応ノックをすると、

  「はい?」

   と、中から返事が聞こえる。

  「失礼します、この度姫様の護衛を務めさせていただくナイカ・ボルスミスでござい

  ます」

   そう言って即座に俺は頭を下げる。

  「あなたが、私の護衛を」

  「はい!」

  「お顔をお見せださい」

   その綺麗な声に思わずどきりとしてしまう。そして顔を上げると、

   そこには男女ふたりの姿があった。椅子に座って話していたようだ。

   桃色の髪等初めて見る。

  「君が、セシリアの護衛か、よろしくたのむよ」

  「はっ!全力で務めさせていただきます」

  「それにしても若いね、シルビアと同じくらいの歳じゃないか?」

  「はい、年は16です」

  「まあ、私と同い年です」

   そうですか。前には美男、美女というものすごく眩しいふたりがいた。

  「こちらに来てください、お話お聞かせください」

   お話と言われましても。

  「申し訳ございません、もうすぐ船が出発するとのことで、少しだけ説明をさせてい

  頂いてもよろしいでしょうか?」

  「説明というと?」

  「はい、生き残るための」

   俺はそういい、その場である説明をするように言われた。

   それは、もし襲われた時のことや、その時の対処法等を伝授してくれとのこと。

   俺は口だけでなんとか説明が終わる。そこで、コンコンっ。

   また新たにノック音。そこには、

  「出発いたします」

   そう言いに来ただけの老人が立っていた。ついに出発の時が来る。

   気を引き締めてかからねば。

  「では、私もこれで、何かありましたら、これを押してください」

   それは俺の持っている、機会とつながっているもの。これを押すことによって俺へ

  危険信号が送られる。

  「待ってください、お話くらいされていきませんか?これから長旅を一緒にするので

  すから」

  「申し訳ございません、会話は慎むよう言われておりますので」

  「そんなのいいわ、私はあなたとお話したいの」

  「そうだよ、僕も聞きたいな、竜殺しの話などを」

  「恐れ入りますが私は竜殺しではございません」

   そこで、ふたりの目が見開かれる。竜殺しではないのならまさか獣殺しと思われた

  のか。それさえも違うというのに。

  「そうですか、ではそのお話等聞かせてください」

  「恐れ入りますが、私と姫様がお話等あってはなりません」

  「なぜです?」

   本当にわからないかのように首をかしげる。どうやら本気で聞かされてないらしい。

  「姫様の綺麗な声を、その姿を、私によって汚してしまうからでございます」

  「それはどういうことだい?」

   と、マルク王子に尋ねられる。

  「私はアンノーンでございます」

  「「っ!?」」

   二人共本当に驚いている。アンノーンが護衛など、と思っているのだろう。

  「ですが心配はいりません、殺しの腕ならばリヴァイア王国のどんな竜殺しであろう

  と私にはかないません、特務機関をごぞんじで?」

  「ええ、少しだけ」

  「僕も聞いたことがあるよ」

  「私はそこの兵士でございますゆえ、お話と言いましてもこれくらいしかお話できま

  せん、では、私はこれで」

   アンノーンであると言った瞬間、目が変わった。あの王族の目。虫けらを見るよう

  な目。あれはどんなに月日が経っても耐えられるものではない。

   そう思いながら俺はその部屋を跡にした。そして自分の部屋に入ってみると、やは 

  り、こんなにいいものか。特務の部屋とはまるで違う。何から何まで違う。こんな柔 

  らかいベッド。いつでも飲める飲み物。少しつまむもの。すごい。そしてこの任務を 

  こなせば多額な報酬まで手に入る。

   など、考えてみる。俺は思い切ってベッドにダイブしてみた。

  「な、なんだこれ、すごい、すごい柔らかいな」

   そういえば、下の兵士たちはなにをやっているのだろうか。そう思い俺は一度部屋 

  を出て、船の外に向かった。すると何人かが見張りをしている。

  「見張りご苦労様です」

   そう言って、さっきの温かく迎えてくれた竜殺しの男の人だった。

  「ああ、ナイカ、順調だよ、あ、そういえば名を名乗っていなかったね」

  「ええ」

  「みんなも集めよう、おーい!集まってくれ!」

   そう叫ぶと、全員で8人が集まった。

  「今回はこの8人、この8人が選ばれた護衛だよ、そして僕はこの隊の隊長、ジルク

  だ」

   次々と挨拶を交わしていくと、ひとり・・・・・何も言わない。

  「君の名前は?」

   と、この竜殺しの人も聞く。見た限り、紋章すら入っていない。

   俺と同じ特務のような場所から来たのか。この竜殺しの人たちも知らないらしい。

   見た目は本当に子供だ。顔はマスクで見えないが背丈でわかる。

   12歳くらいか。男か女は不明。

  「ま、まあ、こういう子もいるだろう、ということだ、ナイカ、改めてヨロシク」

  「こちらこそ」

   そう言って俺はひとりひとり握手を交わしていく、そして最後のこの子供に握手

  を求めると、すっ。スルーだ。

  「あ、えーっと」

   と、言うと今度は走り去っていってしまった。

  「何なんだ?」

  「ぼくらは皆竜殺しだがあの子だけ違うみたいだね」

  「はい」

  「あ、そろそろ持ち場に戻らないと」

  「はい、失礼しました」

   そう言って俺はまた部屋に戻る。と、なんだろう、階段にあの子供の姿が見える。

   そして俺がきたことを知ると、一気に走り去ってしまった。

  「俺、嫌われてるな」

   そう思い、俺は部屋に戻る。

  「もう、こんな時間か、俺は寝てもいいんだろうか・・・・護衛もあるしな」

   そんなことを考えながらベッドで寝転がっていると、

   こんこんっ!と、ノックされた。俺はとっさに起き上がり、身だしなみを整える。

  「はい」

   そう言ってドアを開けると、

  「すみません、中に入っても?」

  「姫様!?」

   まさかの姫様だった。てっきり俺はあの老人かと思っていたが・・・

  「ど、どうぞ・・・」

  「失礼いたします」

   そう上品に言うと、すっと中に入り、椅子に座り始めた。

  「あの、姫様どういたしました?」

  「いえ、先ほどの無礼を詫びにきました」

  「ぶ、無礼!?姫様が、わ、私にですか!?」

  「はい」

   無礼と言われてもそんなことをされた覚えがない。

  「申し訳ございません、謝られるようなことを姫様がされたとは思いませんのですが」

  「いえ、あなたが先ほど、アンノーンといった時、私はとっさにあんな表情を」

  「え?そんな!とんでもありません、あれしきのこともうなれていますので」

  「なれている?いけません!あんなことになれては!」

  「え?」

   なぜ怒られているんだ。

  「あなたはアンノーンであっても人間です!」

   と、言って俺の手を握ってきた。

  「ひ、姫様、いけません!私のような!」

  「いいのです、あなたはこれから私を守ってくれる方、お話することも私が許します」

   その目はとても真っ直ぐでその汚れを知らない瞳は真っ直ぐに俺を見ていた。

  「・・・・・分かりました、では姫様今日はもうお部屋にお戻りください、王子も心

  配いたします」

  「そうですね、そうしましょう」

   そこで姫は俺にすっとお辞儀をして部屋から去っていった。

   この時思った。この姫様ならきっといい世界を作ってくれると。

  「そのためにも、守らなきゃいけないな」

   俺はこの時そう固く決心した。その夜、俺は船を見回り。そのぐらいしかできるこ 

  とがなかった。と、もう夜中だというのに下の階の部屋の電気がついていた。

   見張り以外はしっかり寝ろというのに。俺は注意しようと考えたが相手は竜殺し。 

  身分の高いものだ。少しあためらいもあったが俺はとりあえず、部屋を覗いてみる。

   ??

   何やら朝あった見張りの者たちの半数が何か髪を広げて誰かと連絡を取り合 

  っているようだ王国の人だろうか。竜殺しなら回線をジャックされることなどもない 

  だろうし、心配はいらないだろう。そうか働いてくれていたのか。

   俺はそう思いそこをさった。

   その夜はなにもおこらず、無事翌日を迎えた。

   だが翌日、俺は様子がおかしいことに気がつかなかった。

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