プロローグ
俺様はある人物に呼び出されて『地下』に来ていた。
天井も壁も床も真っ白な部屋。決していい気分ではない。落ち着かない。さっさとここから出ていきたかった。
周りを見回す。お目当ての人物はまだ来ていない。自分から呼び出しておいて遅れるとは、いい加減な奴だなと俺様は憤慨する。
後方でガチャっと扉が開く音がした。ようやく来たか。遅いじゃないか。待ちくたびれた。扉も真っ白なのでよく見ないとどこに何があるのか分からない。
遅れたことに対して詫びもせずに、俺様がいるところに向かって歩いてくる。むむぅ。
「早速だが、これを見てくれ」
資料を渡された。
視線を下げると高校生と思われる少女が写っていた。
「これがどうかしたのか」
呆れた表情で、ある箇所を指差す。そこにはある名前が書かれてあった。別にどうという事はない。普通だ。だが、俺様は驚いて目を見張った。
「これは……」
「どう思う」
「どう思うって? 同姓同名なだけだろ」
「写真のほうをよく見てみろ。見覚えがあるはずだ」
言われたとおりに、もう一度少女をよく見てみる。
「あ~この子か。これまた別嬪さんになって、もてるだろうな」
「いや、そんなことはどうでもいいだろう」
「おい、この子に対して失礼じゃないか」
「勝手に別の名前を名乗るほうが失礼だろう。そいつはそんな名前ではないはずだ」
怒ったように言う。
「それはそうだけど、何か理由があってこの名前を名乗っているのかもしれないだろう」
「だとしてもだ。そいつを誘拐する」
「な!? それって犯罪じゃないか。やめとけ。誘拐はたいてい失敗するんだぞ」
「つべこべ言わず準備しろ!」
大変なことになった。
扉を開けて出て行ったのを慌てて追いかける。
感想頂けると嬉しいです。