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小さな兎と猛獣2匹  作者: こころ
第2章 学園祭の準備
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第4話

10月の初旬。


紅葉やいちょうなど秋を代表する木の葉が散る前。


綺麗だな…この言葉、何回目だろう?


「よ~し!お前ら~!もうすぐ学園祭だ~!!」


「「「「「「うおぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」」


先生の大きな叫びとクラスの気合いの入った大声が私を我に返す。


一瞬…校舎が揺れたような気がしたのは私だけだろうか?


あっそういえば、そうか…もうすぐ、学園祭か……。


「たしか、10月の終わりぐらいでしたよね?虎君」


外の方を向いていた顔を隣の虎君に向けると…


「おいおい!兎ちゃん!行事の日にちも覚えてないなんてダメだぞ!?」


張り切っちゃってるよ…意気込んじゃってるよ……。


「すみません…あまり、興味が無くて……」


すると虎君は口を尖らせる。


何だか今にも食べられそうなんですが?


すると机を思い切り叩いた先生がある一言を口にする。


「で、だ!実行委員を決めなくてはならない!!主な仕事は準備などの指揮・生徒会にすることを報告など様々だが……誰がするんだ?」


実行委員か…私には縁のない職だなぁ……。


「先生~!」


先生の目の前、手を挙げる男の子。あれは…


「狼だ……」


虎君が呟く。


狼君って…あの席だったんだ……。


後ろの人がなんだか可哀想になってきた。


「なんだ?狼!お前、もしかし「推薦したい人がいるんですが?」


先生…なんでそんなに悲しそうな顔をするんですか?


まぁ狼君はクラスではリーダー的存在でみんなから慕われかつ、モテています。


「狼…それで誰を推薦するんだ?」


「はい…俺は小乃 兎さんを推薦します」


……私の世界が一瞬、いや数秒間…止まった。


自分でも分からないくらい驚いている。


それから自分の机をバンッ!と叩いた。


「まっ…待ってください……なんで、私なんですか?」


辺りを見渡すと椅子から転げ落ちていたり、目を見開いていたり。


でも、狼君は全く動じずニッコリと笑う。


まるで、ウサギがオオカミに威嚇するも舌なめずりをしているよう。


「うさちゃんはしっかりしてるし良いと思ってさ」


「それなら狼君の方がみんなをまとめるリーダー的存在なんですから狼君の方が向いているのでは?」


「俺はこのクラスの学級委員長で実行委員にはなれないんだ」


うそ。これで私が反抗する言葉がなくなってしまった。


「あのさ~…空気読めないかもしれないけど……」


先生が気まずそうに言う。


「小学生が何で高校にいるんだ?」


すると辺りの生徒達も頷く。


あぁ…これで何回目だろう?


そういえば、私…入学式後の自己紹介でスルーされたんだっけ?


ひしひしと心の底からある言葉がこみ上げてくる。


「私は…小学生じゃありません!!高校生です!!!!」


「兎ちゃん!落ち着いて!悪気があってやったわけじゃないんだ」


虎君があたふたしながら私に言う。


私は我に返るとだんだんと恥ずかしくなってきた。


「すっすっすっ…すみませんでした……」


恥ずかしい。なんで私ってこんなのなんだろう。


「それにしてもさ…」


ある1人の男の子が夜のように静まりかえった教室で呟く。


「可愛くね?」


「だよね!私も思った!」


「俺も!俺も!」


「高校生であんな子いんだな」


「俺、神に拝み中だった」


「なんだよそれ!!ぎゃははは!!!」


静まりかえっていた教室に笑顔が広がる。


でも誰が可愛いんだろう?


「兎ちゃん、人気者~」


虎君がそう言った。えっ…もしかして?


「私のことを、みんな言ってるの?」


恐る恐る聞いてみた。答は案の定…


「気づいてなかったのかよ…ある意味すげ~」


驚きと呆れが入り交じった言葉を返される。


「うるせぇぞ~!!!!で、実行委員は小乃で決まりだな?」


「えっなんでそ「「「「「「はい!!!!」」」」」」


私の言葉を遮るクラスのみんな。


「小乃の意見は?」


こうなってしまえば、断れないのが私の悪い癖だ。


「分かりました…しかし、1つだけ条件があります」


「なんだ?」


先生やみんなが首を傾げる。


こんな小さな私が実行委員をやるのはとてもじゃないけど大変だ。


だから…


「副実行委員を2人、配属してくれませんか?」


「別に構わないが、それだけでいいのか?」


「はい、私だけでは大変ですから…」


私が自分の机から離れ教卓の方へと歩いていく。


この後は学園祭の出し物の話し合いで司会をしなくてはならない。


「それじゃぁ!副実行委員になりたいやつは手を「「「俺だ~~!!!!!!」」」


一斉に生徒達おとこのこが手を挙げる。狼君と虎君を除いては。


「それでは狼と虎で決定な」


男の子達はポカンとしている。えっ?という顔だ。


「俺は手を挙げなかった奴って言ったが?」


「「「何~~~!!!???」」」


それでもみんな文句を言わない。


なぜなら、狼君と虎君だから。男の子達の憧れらしい。


んっ?あれ?何かひっかかる……。


私は隣にいる狼君を見つめる。


「どうしたの?うさちゃん」


「どうして狼君は学級委員長なのに副になれるんですか?」


「よく気がついたね…実行委員になれないのは嘘だから」


ニッコリとした笑顔で言い放つ狼君。


はめられた…オオカミにはめられた……。


「じゃぁ小乃…話し合いをしてくれ、俺は忙しいから教室をあける」


先生追い打ちを掛けるように扉を開け強引に閉めた。


「嘘つきオオカミ…」


ポツリと呟いた言葉は届いているわけで…


「それはそれは嬉しいお言葉だこと……」


「狼!兎ちゃん!話し合い話し合い」


あぁ…そうだった。


「それでは委員も決まったのでこれから出し物の意見を出し合ってください」


この一言が私をどん底へと突き落とすのだった。


第5話に続く

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