第3話
澄み切った空。
秋らしい風が黄色いいちょうを舞い上がらせる。
秋って…こんなにも綺麗だったんだな……。
窓側の1番左端。
小さな私が先生から四角になる場所。
そして、私の隣の席…虎君。
そういえば名字、知らないなぁ……。
にしても…携帯で遊んでる。
「虎君…授業中ですよ?」
元から小さい声だから先生には聞こえない。
すると虎君がこちらに振り向き、にっこりと笑うと
「大丈夫だ…短先には気づかれてねぇし」
短先って…喉を鳴らしながら笑う虎君。
しかし…私は今、虎君ではなくその先を見つめてしまう。
するとその先の「人」は教科書を振り上げる。
私が瞬きした瞬間にその教科書は虎君の頭に落とされる。
するとクラスに歓声のような笑いが起こる。
「虎!!授業中に携帯は弄らないって約束はどうした?」
現代国語の男の先生であり、担任の先生でもある。
生徒からは「短先」と呼ばれているらしい。
「よっよう…たんせ…先生、思い切り叩くこたぁねぇだろ?」
頭を押さえ引き攣った顔の虎君。
まるで気弱になったトラだ。
「毎日毎日、何度言えばお前は分かるんだ?携帯を弄るなと」
それから、虎君は携帯を没収された。
「べっ勉強をしなかった虎君が悪いんですよ?」
黒板に書かれたことをノートにまとめながら話しかける。
あれ?おかしい……。
いつもなら返ってくるのに。
私は大体の予想を浮かべながら虎君の方を向く。
私は開いた口が閉じないくらい自分の的中率に驚いた。
「寝てる…」
あの数分で寝られるなんて…いびきもかいてるし。
「とっ虎く~ん?授業中ですよ~?」
身体を揺らすが一行に起きてくれない。
すると2時限目のチャイムが鳴る。
そのあと、虎君はこっぴどく先生に説教をされていた。
「虎も馬鹿だよな…なっうさちゃん」
狼君が虎君を見ながらこちらに歩いてくる。
私はそのとおりだと、数回頷く。
「でも隣のうさちゃんはもっと災難だね」
苦笑いをする狼君。
何だか……
「優しいオオカミみたい…」
「えっ、俺?」
私は大きく頷くと狼君はプッと吹き出す。
「オオカミはウサギを食べる猛獣だよ?」
「そんなことないですよ!狼君はとっても優しい人です」
私が真剣に言っているのがやっと分かったのか、少し頬を染める。
「じゃぁ俺…席につくわ……」
「はい、分かりました」
私はその時、自然に笑っていたような気がした。
そんなことを知るよしもない私は10月の行事のことなど、
忘れてしまっていたのだ。
第4話に続く