第2話
誤字・脱字がありましたらどうぞ言ってください。
あれからというもの…2人からの挨拶は絶えなかった。
別に嫌というわけじゃない。
しかしこう…何度も挨拶をされると……
「今日もまた挨拶をしてくるんだろうな…はぁ」
溜息を吐いてしまう。これで何回目?
校門の前で立ち止まり、校門の右にある木をなんとなく、何気なく見る。
入学式を終えての初日、朝早くから学校に来た私。
その時、満開の桜の木が迎えてくれた。
その木が校門の右側にあるこの大きな木だった。
「和むなぁ……」
ポツリと呟いた声は誰にも聞こえない…
「ほんとだよねぇ…」
はずだった。
「おはよう、うさちゃん」
「おっおはようございます…狼君」
いつから私の隣にいたんだ!やはりこの人はオオカミだ!
私が驚いているのが分かったのか狼君は笑いながら、
「うさちゃんがここに立ち止まった時に見つけてさ」
「そうだったんですね…一瞬、オオカミに食べられるウサギを想像しました」
あれ?今、私…なんて言った?自分の思った事…言ってないよね!?
「うさちゃんてそんなこと思ってたんだ…」
狼君が目に涙を溜めている。もしかして私…男の子泣かせちゃった?
「ごっごめんなさい!泣かそうと思って言ったわけではなくてついっていうか何というか…」
すると狼君が左手で自分の口を押さえる。やばい!
「ほっ!本当にごめんな…さい?」
私がもう一度、謝ろうとすると狼君は今にも笑い出しそうな目をしていた。
「ごめん…ちょっ…笑って…良い?」
「はい…どうぞ、好きなだけ」
これはもしかして…
「ふはっ…あはははははは!!うさちゃんて俺の事、オオカミって思ってたんだ!あはははは!!」
案の定、大爆笑をする狼君。というより…私は恥ずかしい。
狼君が大きな声で笑っているため、歩いていた生徒達は自然にこちらを向く。
やっと笑いがおさまったのか、狼君は自分の涙を拭う。
「やっぱりうさちゃんは面白いね」
「どこがですか?」
私はその言葉に驚きすぐに聞き返してしまった。
「うさちゃん、中学の時あんまりそんなこと言わなかったからさ」
狼君は優しい声で私に言った。
「中学の時もそう思ってた?」
「えっと…思ってましたね、背後から近寄ってくるとか、目が誰よりもよかったとか…」
「ねぇ…それ、褒めてるの?貶してるの?」
「褒めているつもりです…」
狼君が「そっか」と言って歩き出そうとした瞬間…
「狼~!おはよ~!」
狼君にのしかかる人物。この光景は何回目?
「あっ兎ちゃんもおはよ!」
「おはようございます…虎君」
今日は茶色っぽい髪留めをしてる。
「似合ってますよ…その髪留め」
「えっ?あぁ!ありがとう!」
ニコッと笑う虎君。ときどきネコに見えるのはトラがネコ科だからかな?
「虎…重いんだけど?」
私と虎君が話していると若干、怒り気味の狼君が虎君に言う。
「さぁ、俺は何キロでしょうか?」
いきなり、問題を出す虎君。もしかして…遊んでる?
「私は60キロぐらいだと思います!」
「うさちゃん!答えなくて良い!!」
私が答えた瞬間に狼君がすぐさまつっこむ。
「ほぼ正解!俺、58キロなんだ!」
そう言うと狼君から下りる虎君。
「それにしても…もしかして2人ともできちゃった?」
「それは…どういう意味ですか?」
やっと歩き始めた私達。
しかし…虎君の言っている意味がよく分からない。
「それは恋び、ぐはっ!」
虎君が何かを言いかけようとした瞬間……
少し頬を染めた狼君が虎君のおなかに拳を入れる。いっ痛そう……。
「うさちゃん…あんまり気にしなくて良いからね?」
「はっはい、分かりました」
私はまだあの言葉の意味を理解していなかったがまぁいっか。
すると虎君がおなかを押さえたまま狼君をきょとんとした顔で見る。
「あれ?狼…」
「なんだ?もう1発、ぶち込んで欲しいのか?」
「ちっ違う!全く違う!!」
狼君が手を握ると慌てて虎君が止める。
「じゃぁなんだ?」
「お前って兎ちゃんのこと、うさちゃんて呼んでたっけ?」
「あぁ…それか」
狼君はニッコリと微笑むと…
「昨日、うさちゃんって呼んで良いか聞いて了承を得たニックネームだ」
「いっ今更かよ!?」
「お前こそ、今更か…」
2人の何気ない喧嘩?が毎日続く。
そう、私はこの喧嘩に困っているのだ。
ここはビシッと言わないと。
「2人とも、少し静かにしてくれませんか!」
しかし2人は聞く耳持たず。喧嘩は止まらない。
「2人とも!喧嘩をやめないと2人とは一切、話しませんからね!」
これでも聞く耳を持ってはくれないだろうな……。
あれ?でも、やけに静かだ。
風の音と少しだけ蝉の声、人の話し声、ざわめきが聞こえるこの昇降口。
私は2人に目を向けると…2人は何度も頷いた。
「ふぅ…2人とも、約束ですよ?」
少し首を傾げ、右手で小指を立てる私。
すると2人はだんだん頬が赤くなっていき、こくりと頷いた。
「もう…どうしちゃったんですか?2人揃って…」
私は自分の靴箱から上履きを取り出し、言う。
「まるでオオカミとトラが同時に高熱を出したみたいですよ?」
私がそそくさと歩き始めるとそこにはたくさんの女の子がいた。
「じゃぁ…行くわよ、みんな!狼様~!虎様~!」
「今日はクッキーを作ってきたの!」
「オオカミとトラのぬいぐるみを作ってきました!」
「花を添えてケーキを持ってきました!」
ざっと30人はいる、女の子達が放心状態の2人に詰め寄る。
「危うく、踏まれそうだった…」
私はそんなことを呟くと今日という日を過ごした。
第3話に続く