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小さな兎と猛獣2匹  作者: こころ
学園祭スタート
19/20

第19話

おひさしぶりです。去年の11月に投稿してからすごく経ってましたね。ごめんなさい。

さぁ気持ちを切り替えて今日から学園祭編!体育祭は3話くらいで終わらせます!完結に向かわなければ!!

それでは本編へどうぞ!!!



晴れ渡った空に秋風が生徒の間を吹き抜ける。


壇上に上がったライオンはマイクスタンドから豪快にマイクを引き抜いた。


「お前ら、準備はいいか~!」


「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ」」」」」」

「「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁ」」」」」」


叫び声にライオンはニカッと笑った。


「これより多彩高等学園祭を開幕する!生徒会長、珀獣雷怨からは以上だ」


「ちょっと待て!まさか、それで終わる気か!!」


生徒会長様が勝手に切り上げたことでほかの生徒会役員の声がマイクに入る。


グラウンドにどっと笑いが起きた。


「学園祭ってこんな感じなんですね」


「俺は1回見たことあるから分かるけど、まさかあの会長がここまで崩れるなんて思わなかった」


隊列の中で狼君と2人でこそこそと話す。


私も生徒会長様があんな人だとは思わなかった。


「まぁ冗談は置いといて、だ。先輩後輩関係なく競って協力して楽しい学園祭にしよう。まずは『体育祭』だ。お前たちの底力、見せてみろ!」


爽やかな笑顔とともに壇上から降りる生徒会長様。


倒れた音が聞こえるが、きっと季節外れの熱中症で倒れたのだ。


「雷怨様…ステキ」


近くで目がハートになっている西明寺さんを見つけた。


頬を真っ赤に染めた姿は恋する乙女そのもの。


そんな彼女の手に優しく握られている小さな人形。


「あの…あれって生徒会長様ですよね?」


「大小さまざまな人形が何十体もあるらしいぞ。虎が言ってた」


「生徒会長様への愛が重い……」


そうして2人で生徒会長様に生暖かい視線を送るのが精一杯だった。




開会式も終わり、グラウンドに設けられたテントへぞろぞろと生徒が帰っていく。


今日は待ちに待った学園祭。1年4組も例にもれず朝から盛り上がっていた。


わけでもなく今日の競技の戦術を見直したり応援のうちわを作ったり、割と大忙しだった。


綱引きとソフトボールとサッカーは前日までに学年別の予選があり当日に先輩方と試合することになっている。


私たちが出られるのはソフトボール、騎馬戦、障害物競走、玉入れ、借り物競争、クラス対抗リレーである。


「サッカーは他のクラスにサッカー部が固まってたからなぁ」


「ソフトボールは私たちのクラスが固まっててよかったじゃないですか。それよりも、明日の競技が気になります」


「学園祭のしおり」と書かれたパンフレットを開けると、狼君が覗いてきた。


「サプライズ競技ってなんですか?」


「俺も気になってた。生徒会がシークレットで作った競技らしいけど変なのじゃなかったらいいなぁ」


そう言いながら、わたしの髪をさりげなくいじっている狼君。


まぁ、いじりたくなるのも無理はないと思う。


普段は髪を下の方で2つにくくっており、今のように頭の上でお団子にしているわけではない。


朝、学校に来ると羊飼さんと西明寺さんに「今日はお団子!」と言われ拉致された。


今日は・・・ということは明日はどうなるのだろう。恐怖である。


「そんなに気になりますか?これ」


「うん。いつもとは違ううさちゃんだし、たまにはこういうのもいいね」


にっこり笑った狼君に「おや?」と違和感を覚えた。


作り笑いではなくなっている。やっぱり昨日何かあったのだろうか。



昨日は放課後に急遽きゅうきょ呼び出されて学校を訪れると狼君が寝ていた。


不思議なこともあるなぁと思いながら、起きた狼君と話していたけど何かに吹っ切れたような顔つきだった。


あとは……決意したような顔だ。どんな夢を見ていたんだろう。


「兎ちゃーん!ちょっとこっち来てー!」


「はーい!狼君、呼ばれたので私行きますね」


「うん、行ってらっしゃい」


手を振る狼君はずっとニコニコしていた。だから……


「良かったでしょ?一匹いちひき君」


「明日はポニーテールにするつもりなんですがどうですか?一匹君」


「うさちゃんが可愛すぎて萌え死にしそう。ポニーテールよろしくお願いします!」


そう言って頭を深々と下げている狼君を私が知ることはない。



作戦会議に参加し終えると第一種目開始の放送が始まる。


「先輩上手いからなぁ。2回戦目でよかった」


「ちょっと!ソフト頑張ってよね夜鷹よたか


秧鶏くいなも頑張れよ。負けると思うけど」


「なんだとこらぁぁぁ!!!」


「あいたたたた!!!!」


なんか秧鶏さんが技をかけてるけど本当に2人は仲良いのかな?


謎は謎のままがいいよね。バナナみたいに。


「兎ちゃん?」


「バナナの謎が解明されなくてよかった」


「……」


「あっ虎君。どうされました?」


さっきの独り言聞かれてたら恥ずかしいな。


「ソフト頑張れよ」


「…っ!はい、お役に立てるように頑張ります!」


「それとさ…いや何でもない」


「…?はい、分かりました」


思いつめた顔で虎君は本部に行った。大丈夫かな?




ソフトの結果はやはり実績の違いで全敗となり、3年1組の勝利。


ちなみに生徒会長様はこのクラスで去年と一昨年の総合成績を2連覇しているそう。


「今年も兄貴のクラスが優勝だろうなぁ」


午前の部のソフトとサッカーが終わり昼食の時間。


ソフトもサッカーも生徒会長様のクラスが勝利。


いつもは猛突猛進な虎君もどうやら敵前逃亡をしているようです。


「虎、まだ終わってないぞ」と狼君。


「そっそうですよ。まだ1日目じゃないですか」と羊飼さん。


麗瑠うるの言う通りだ。明日のリレーは勝つぞ!」と樋野ひの君。


「それってリレーしか勝てないって言ってるようなものじゃん」と阿部さん。


「まぁ、生徒会長様ですから負けるのは仕方ないですよ」と私。


「「「「「「……」」」」」」


黙るみんな。虎君まで黙ってしまった。


最初に口を開いたのは狼君。


「前々から気になってたけど…生徒会長『様』って何?」


「ライオンの前ではウサギなど風の前の塵に同じです。媚びを売ってなんぼですよ」


その瞬間、その場が極寒と化した。


その寒さはクラス中に広がりシンと静まり返る。


正直、ご飯の味が分かりません。


そしてその原因がニッコリと素敵な笑顔を向けてきます。


めめめめめ目が笑ってませんが。


「そっかぁ。うさちゃんは雷怨会長に良い顔したいんだねぇ」


「いいいいえ!!ほっ本能でしゅからどどどどどうかお慈悲をぉぉぉ!」


なっななななんか狼君が怒ってるぅぅぅ!!


それにみんな、触らぬ神に祟りなしみたいな雰囲気で助けてくれなさそうだし。


「うさちゃん?雷怨会長って言ってもいいんだよ?歳なんてそんな変わらないじゃん」


「はっはい!狼君の言う通りでありゅますでしゅ!!たたたたた直ちに生徒会長と呼ばせていちゃだこうかとっ思っておりましゅ!」


それは軍人さながらというべき素早さで敬礼をした。めっちゃ噛んだけど。


狼君はそれを聞くと「まぁ妥協点」と言って顔から笑みをなくしていった。


そして、何事もなかったようにお弁当を食べ始める。


沈黙と困惑のランチタイムだった。


そのあとの騎馬戦、私たちは狼君の極寒の元、死にもの狂いで挑み結果は全学年中2位だった。




「やっぱり生徒会長さ…んのクラスは強いなぁ」


狼君がいないはずなのに治しちゃうって本当に弱虫なのかな。知ってたけど。


午後の部は騎馬戦と綱引き。ここでも生徒会長さ…んのクラスが圧勝だった。


明日もこんな調子なのかなぁ?


はぁ…とため息を吐いたとき聞き覚えのある声がした。校舎と校舎の間あたり。


さっと壁にへばりついて盗ちょゲフンゲフン…盗み聞きをする。


「お前も心が狭いなぁ」


「仕方ないじゃないですか。自分でも驚いてるくらいなんですから」


この声は生徒会長さ…んと狼君?


もう競技は終わってるけどこんなところで何してるんだろ?


それに狼君の心が狭い?ありえないありえない。逆に広すぎるくらいなのに。


「まぁ安心しろ。俺は別に狙ったりしてねぇよ」


「雷怨会長にもそうあっていただきたいです。うさちゃんを落とすのも手に入れるのも俺1人で十分です」


……うん?ちょっと話が掴めなくなってきたぞ。というより私の脳が追い付いてないぞ!


「それ、小乃さんが聞いたらドン引くぞ。せめて好きにさせるって言えよ」


「そんな恥ずかしいこと言えませんよ。それに好きだけじゃ収まりきらなくて困ってるぐらいなんです。どうしましょう?」


「知るか。俺は恋愛方面は音痴って言われるぐらいだぞ」


「あぁだから…早く収まるところに収まってくださいね、雷怨会長」


「何言ってんだ…っとすまん。生徒会があるんだった。先に行く」


「はい。お時間いただきありがとうございます」


男の子の恋バナって初めて聞いた。


ていうかなんか…聞いちゃいけないこと聞いた気が……。


「あれ、小乃さん?こんなところで何してるんだ?」


「ひゃぃあ!!」


全然足音に気付かなかった。オスのライオンはたてがみで目立つことで有名なんだぞ!


じゃなくて今わたしの名前を言ったら、もれなく


「えっうさちゃん?」


ひょっこり顔を出したのは狼君。やっぱりぃぃぃぃ!!!


「ああああああのっ、ちょっとジュース買おうとおみょってっ!そそそっしょしたらきょえがききょえて!!」


「「落ち着いて」」


「ふぁっふぁい……」


はっ恥ずかしい。今絶対、私はタコだ。それかリンゴ。


「俺はもう行くが…あとは2人で話し合え。じゃ」


「はい。うさちゃん、一回ベンチ行こっか」


「ふぁっふぁい……」


なんか今日は噛んでばっかりだな。いや、いつもか。



「それで?どこから聞いてたの?」


ただ今、尋問中!容疑者はこの私、小乃兎でぇす!


すみません。ふざけました。狼君の早くしろっていう目が怖い。


言っていいのかな?でも、嘘ついてもばれちゃうし。それに


『うさちゃんを落とすのも手に入れるのも俺1人で十分です』


狼君のあの言葉が本当か知りたい。


「その…もし聞き間違いじゃなかったら……狼君の心が狭いあたりからずっと聞いてました」


おっ怒られるかな?もしかしたら絶望されるかな?


俯いた視界にこれでもかというほど握られた自分の手。


何を怖がってるのか分からない。でも、震えちゃだめだ。


「聞いたんだ。聞いちゃったのか」


落ち込んだ声の狼君。あぁ、絶望か……。


「あぁぁぁぁ!くっそ恥ずかしい!!」


……ん?恥ずかしい?


そう思って狼君を見ると顔を隠していた。でも真っ赤な耳が丸見え。


「えっ?私のこと責めないの!?」


「えっ!責める要素どこにあった!?」


「だって盗み聞きしてたんだよ!」


「まぁそれは怒らなきゃだめだけど…もっと気にするところとかなかったの?」


「あるけど!怒られると思ったから!!」


「あっうん。ちょっと声大きいかな…」


「っ!ごっ…ごめんなさい……」


放課後とはいえ、人通りが少ないわけではない。


現にこっちを見てる人いるし。


「兄弟喧嘩かなぁ?」


「いやいや、今のは痴話喧嘩だろ?リア充爆発しろ」


「あたしたちもでしょうが」


ひそひそ言ってるみたいですけど聞こえてますからね、カップルさん。


そして狼君は「あちぃ」と言いながら手をうちわ代わりに使っている。


ここは意を決して聞かなければ!


「狼君、それで……私のことがその……」


「好きだよ?でもそれだけじゃ埋まらないくらい、うさちゃんのこと好きでたまらないんだ。どうしよっか?」


困った顔も似合ってますね、じゃなくて。


今度はこっちが真っ赤になる。


「じょっ冗談なら今のうちですよ?それに狼君なら選り取り見取りじゃないですか。よりにもよってこんな小学生選ばなくても」


すると大きなため息を吐かれた。失敬な。


「うさちゃんは高校生で俺と同い年の女の子だよ。俺の気持ちが冗談で済まされると思わないで。中学のときからずっと好きだったんだ」


そっそうだよね。人の気持ち否定しちゃだめだよね。ましてや恋心なんて。


でもなんか…狼君から甘い感じがビシバシ来ててすごい怖いのは気のせい?


「私は…まだそういうの分からないです」


「うん。だけど俺、もうバレちゃったから遠慮なく行くから」


真剣な表情ですけど狼君。


「えっ遠慮なく?ゆっゆっくり待つとか」


「ゆ~っくり待ったよ。でもお母さん扱いされたりモンスターペアレント扱いされたりちょっと我慢の限界なんだよね。明日と言わず今日から」


そう言って私の手をぎゅっと掴んだ狼君。


その顔は獲物を捉えたオオカミ。だた、とっても


「落としにかかるから」


心底楽しそうに笑っていた。


初めての学園祭はどうやら波乱を呼び出してしまったようです。


第20話に続く




ランチタイムの時に狐子さんがいないのは会長といっしょにいるからです。お熱い夫婦だこと。

あと、虎君が本部に向かったのにはこんな理由が……!


虎「あに…雷怨会長はいますか?」


生徒会役員1「今ソフトボールに出ていますが何かご用でも?」


虎「その…バナナの謎が何なのか教えてほしいと伝えてください」


生徒会役員全員「「「(早口言葉だな…)」」」


生徒会役員1「分かりました。伝えておきます」


虎「あっありがとうございます!それじゃあ」(満面の笑み)


生徒会役員全員「「「(あの恋愛音痴会長の弟、くっそかわいい。天使か!)」」」


ということでバナナの謎を聞いてました。

このあと生徒会では密かに「虎天使同盟」が結成されました。

目標は生徒会に入れることだそうです。

次話も楽しみにしてくださるとうれしいです。

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