第15話
こころちゃんの登場だぜ!!(キラン)……ごめんなさい、でしゃばりました。あいもかわらずの亀更新。亀ちゃんな私はやりました!!では、本編へどうぞ!!……寒い。
見覚えのある散らかった部屋。
したたり落ちる真っ赤な血。
遠くで鳴り響くサイレンの音。
見渡せば離れていくみんな。
暗い世界にボロボロの私。
「やっやだ…置いていかないで!!」
「はっ…はぁ…はぁ……」
嫌な夢を見ちゃった。
目をこすると指に冷たいものが当たった。
水だ。泣くのはいつぶりだろう。
それに金縛りにあったように身体が重い。
如何せん身動きがとれない。
辺りを見渡そうと顔を横に向けると、
「スピー…スピー…」
とても気持ちよさそうに虎君が寝ていました。
ベッドにじゃないよ!腕を組んで寝るあれ!
授業中に寝るあの体勢だよ!
凄く近かったから反応に遅れちゃったよ!
それに何だか嫌な予感がする。
そーっと座る体勢になると、私の予感を遙かに超える光景が目に飛び込んできた。
「「「「「スースー……」」」」」
いやいやいやいや、何クラス一同私を取り囲んで寝ちゃってるの?
学園祭の準備は?終わってないよ?
溜息を吐き、辺りを見渡す。
保健室だ。鮃先生はいないみたい。
あれは夢、ここは…現実。
「もう…泣かない」
手をギュッと握り、震えを抑える。
深呼吸もして、気持ちを落ち着かせる。
すると、ガラガラとドアの開く音が聞こえる。
肩が跳ね、視線は扉に向かう。
「あっ、うさちゃん大丈夫?」
「小乃さん、起きてるの?」
ひょこっと顔を出したのは狼君と鮃先生。
一気に肩の力が抜ける。びっくりした~。
「はっはい。何とか起きてます。それで…この状況は?」
私が視線を寝ているみんなに向ける。
それに伴って、2人も視線を向け、納得と呆れたような顔をした。
「離れたくないってうるさくて」
「うさちゃんのことが心配だったんだよ」
「私のことが心配?」
首を傾げると、狼君が隣に座って優しく頭を撫でてくれる。
隣、空いてたんだ。狼君が寝てたのかな?
「うさちゃん、みんな心配してたんだよ、分かる?みんな、うさちゃんのこと大事なんだよ?」
優しく微笑む狼君。髪、くくり直しておけば良かった。
それにあまりにも優しく撫でるから目から水が溢れてくる。
あ~ぁ、さっき決めたのに。
「うわぁ、狼が兎ちゃん泣かしたぁ」
「サイテー」
「いじめっ子はおうちに帰れ」
「女の子の頭撫でるとかセクハラだな」
「兎ちゃん、そんな奴の隣にいちゃいかん」
「「「「「さぁ、こっちにおいで」」」」」
「お前ら、言いたい放題だな。あとで覚えてろよ」
みんながあの体勢のまま、狼君に小言を口々に言う。
狼君の顔は見えないけど、みんなの顔が青ざめてるからきっと怖い顔をしてるんだろうな。
「ふふっ…笑ったから目から水が出てきた」
何度も何度も目をこするけど、止まらない水。
悲しいのか、嬉しいのか。後者であって欲しい。
「水じゃなくて、涙っていうんじゃ」
「気にしない気にしない」
「ほら、俺の胸でお泣き」
「セクハラしてるし!ほら、私の胸で」
「ば~か!こういうときはみんなでだろ?」
「「「「「「さぁ、飛び込んでおいで!」」」」」」
みんなが両手を広げ、さぁ!と笑顔を向けてくる。
「ほらな、みんな心配してくれてるだろ?」
狼君がいたずらっ子の笑みを浮かべる。
「そう…ですね。昔はこんなことなかったのに。こんなにも楽しいなんて想像つきません。私、1人じゃないんですね」
笑っているのが分かる。
震えは止まった。涙も止まった。
でも、不思議なことが一つ。
私が笑ったら、みんなが鼻血を吹いて飛んだ。
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「いや~、面白かったわねぇ」
「私はびっくりしてまた気絶しそうでした」
準備をしながら西明寺さんと羊飼さんと雑談。
綺麗な2人に挟まると、肩身が狭くなる。
今、作っているのはメニュー。
前に作っていたクッキーやジュースを手書きで書く。
そこにイラストや模様を付ければ完成。
イラストは動物。1枚1枚違う動物を描く。
私は文字を書くだけ。あとの二人はイラストを描く。
「でも、まさか兎ちゃんが絵が下手なんて」
「あとで皆さんに見せましょう」
「やっやめてください!はっはっ恥ずかしいです!」
いつの間にか2人は仲良くなってて、「冗談冗談」と言って笑ってる。
「まぁ、それにしては字が丸くて可愛いからOKね」
西明寺さんは髪をお団子にしてる。
どんな髪型でも似合っちゃうからいいよねぇ。
「私も髪型、変えようかな?」
「どうしたの?まさか、恋でもしちゃった?」
「えっ!兎さん、恋してるんですか!誰ですか?」
2人が私に顔を近づけ、「早く早く」と言う。
「まっ待ってください!恋なんて私にはまだ早くてですね、あれは大人の世界なんですよ!」
2人に顔が見えないように覆い隠す。
「ふ~ん…じゃぁ、私は大人ね」
「えっそうなんですか?狐子さん」
「えぇ、だって雷怨会長に恋してるんだもん」
「告白はしたんですか?」
西明寺さんを見ると、手を頬に当て首を振った。
「それらしいことは言ってたんだけど、空回りしちゃって。雷怨会長、ホント超鈍感だからね」
あの威厳のある生徒会長様が超鈍感。ありえない。
「生徒会長が鈍感なんて、想像がつかないです」
「そうよねぇ。で、麗瑠ちゃんの恋のお相手は?」
西明寺さんが怪しい笑みを浮かべる。
「ぅえ!わっわっわっ私は…べべっべべ別にいまっいませんよ」
動揺っぷりが半端じゃない。
「私、見ちゃったんだ。クッキー鬼ごっこしたとき、麗瑠ちゃんが中庭のベンチで」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
西明寺さんが何かを言いかけると、真っ赤な顔をした羊飼さんが叫ぶ。
木霊しましたけど。
今は放課後で私たちはなぜか理科室にいる。
だから、3人しかいないのだ。
ん~でも叫んだら誰か来そうな気がする。
「みっみっみっみっみ見てたんですか……?」
「えぇ。付き合ってるわけじゃなさそうだったけど、なんだかあそこだけ熱々で」
妖艶の笑みを浮かべる西明寺さん。
「うっえっあっ」と言葉を発せない真っ赤な羊飼さん。
沈黙が流れていると、後ろのドアがガラッと開き、
「どうした?なんか叫び声が聞こえたけど」
やっぱり聞こえてたんだ。
ホント、私のクラスってどうしてこう声が大きい人ばっかりなんだろう。
「ひゅるっ!!」
……んをぉ?
羊飼さんは魂が抜けたような音を出して立ち上がった。
「ちっちちちち千唯汰!!なっなっなななななんで」
「はっ?だから叫び声が聞こえたからだって」
「いっいいから!大丈夫!!大丈夫だから、じゅっ準備に…戻って!!」
樋野君を廊下に押し返す羊飼さん。
「おい麗瑠!その態度は何だよ!俺らはおさ「うわぁぁぁぁ!!!」
今日2度目の木霊です。
「いいから!!今日、一緒に帰るから!」
羊飼さんがそう叫ぶと、ちょっと嬉しそうになった樋野君。
「分かった分かった。あっ、2人とも頑張れよ」
ニコニコと笑いながら、理科室を出た樋野君。
「いやぁ、暑かったねぇ」
「そっそうですねぇ。お花が舞っていましたねぇ」
顔に手をパタパタさせて、「あつあつ」と言ってみる。
「で、どういうことですか?」
「あらぁ、兎ちゃんはまだまだ、おこちゃまね。あれが恋っていうのよ」
「そっそうなんですか!だからかぁ、無意識に暑さを感じました」
羊飼さんをみると、プルプルと小刻みに震えている。
「それで…片想いのお相手は千唯汰君ね」
ふふっ、と上品に笑う西明寺さん。
「べっ別にあんな奴、好きじゃないし」
敬語を忘れている羊飼さん。
敬語じゃないほうが素なのかな?
「でも、何だか親しかったし」
「それは幼馴染みで今までずっと一緒だったから…って何言わせてるの!!」
怒った姿は怖いって聞くけど、全然怖くない。
だって、顔を真っ赤にしてるし。
「私は何も言ってないわよ。ふ~ん…幼馴染みなんだぁ。そりゃ、好きになっちゃうよね」
羨ましそうな西明寺さんの顔。ほんのり赤い頬の羊飼さん。
どうしよう…話についていけない。
こういうときはなんて聞くんだっけ?
う~んう~ん…よし、これだ!
「どんなところを好きになったんですか?」
「えっ…そりゃ、カッコイイところ」
「どんなところがカッコイイんですか?」
「そっそれは…楽しそうに走っているところとか、誰かとじゃれ合っているところとか、私のこと心配してくれるところとか、たくさんありすぎて全部言えない。けど、気付いたら目で追ってて、ドキドキして…恋って気付いたんだ」
羊飼さんは楽しそうな、嬉しそうな、恥ずかしそうな、そんなふうに微笑んでいた。
だから、女の私でも「綺麗だな」と心から思う。
恋をすると、人は綺麗になるってどこかで聞いた話だけど、本当のようだ。
私も恋をすれば…綺麗になれるかな。過去も今も未来も。
好きな人に言えるのかな?
「分かるわぁ…すっごく分かる。恋って素敵よね。だ・か・ら!兎ちゃんも早く恋をするのよ!!!」
西明寺さんがギラギラした目で私を見てくる。
あっ、この目見たことある。
大家さんが私に恋バナを振ってくるときの目だ。
「私もそう思います。気になってる男の子とかいないんですか?ドキッってしたことは?初恋は?」
羊飼さんも敬語に戻り、ギラギラした目で私を見てくる。
どうして…どうして…こうなってしまったのか。
きっとこれは、永遠の謎です。
そのあと、散々恋の話をされてしまった。
遠い目になったのは…きっと私のせいじゃない。
第16話へ続く
放課後と言えば、13話の最後に会長がパソコンをカチャカチャしてたときですね。はい、関係ありませんね。すみません。
所変わって、亀ちゃんな私は短編を書こうと思っています。それもただの短編ではないのです!!詳細は活動報告で!!