第14話
(正座をしている作者)申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!!2ヶ月くらいですかね?そうですかね?分かりません。
あっでも嬉しいことが1つ!お気に入り件数がなんと!7です!!誰だ!?少ないっていったヤツ!!出てこい!一本背負いしてやるからな!では、本編へどうぞ!!
小せぇときから俺は兄貴と比べられた。
昔のことなんてほとんど憶えてねぇけど、
「虎君はお兄さんと違ってやんちゃねぇ」
この一言から俺の人生はめちゃくちゃだった。
その時はまだ幼稚園児で元気よく頷いてた気がする。
小学生になってからそれはエスカレートしていった。
「虎君は雷怨君と雰囲気違うよねぇ」
「雷怨君って頭が良くて虎君とはぜ~んぜん違うね!」
「虎君は運動神経良いけど、雷怨君はもっと凄いって言ってたよ!」
1つ上の兄貴は頭が良くて運動神経抜群、先生からも人望が厚いとか言われていた。
しかも女子からはモッテモテ。
狐子が好きになったのも頷ける。
「雷怨様は素晴らしい方ですから。虎は良き友人あたりかな?」
そう言って楽しそうに狐子は笑っていた。
でも、俺は兄貴とは全然違った。
運動神経が良くても、成績は悪くいたずらや喧嘩をしょっちゅうしていた。
先生からの人望なんて目に見えている。
そんな正反対な俺と兄貴だったから、その頃言われ始めたのが
「虎君と雷怨君は兄弟じゃない」。
最初は腹が立って喧嘩を吹っかけることが多かったが、よくよく考えてみれば全然似ていないと思った。
顔も性格も雰囲気も行動もすべて違っていた。
唯一、似ているとすれば髪と目の色だけ。
でも、嫌な顔をせずに一緒に遊んでくれた兄貴だったからどうしても兄貴の弟でいたかった。
だから、兄貴の名に恥じない弟になろうと勉強を頑張った。
喧嘩もやめて、習い事にたくさん入って。
それでも、俺は馬鹿だったから何1つ出来なかった。
それでも中学まで頑張って努力した。
そんなとき、母さんから言われた。
「虎は頑張らなくていいのよ?」
その時の俺はその言葉で一気に力が抜けた。
俺は頑張らなくていいってどういうことだよ。
頑張っても無理って言いてぇのかよ。
今まで一生懸命してきたのにどうして……。
信じていた人からの突然の裏切り。
知り合いからも家族からも比べられる。
どうして俺がこんな目にあわなきゃいけねぇんだよ。
俺はただ…兄貴の隣に立ちたかっただけなのに。
その時、あの言葉が浮かんだ。
「虎君と雷怨君は兄弟じゃない」。
本当に兄弟じゃないかもしれない。
だから、俺はこんなに馬鹿なんだ。
そうか……兄弟じゃないよな。
兄貴もこんな馬鹿、迷惑だよな。
それから、俺は荒れた。荒れまくった。
習い事は全部やめた。勉強なんてクソ食らえだ。
喧嘩も始めて、傷だらけで帰ってくることもよくあった。
そんな俺を母さんは心配した。
その日も喧嘩をして帰ってきた俺を母さんは心配した。
あんなに俺を苦しめたのに今更なんだよ。
俺が可哀想だから?馬鹿だから?
それとも…兄貴より劣っているから?
ぐるぐると頭を駆けめぐっていく言葉、言葉、言葉。
「ねっねぇ、もう喧嘩はよ「うるせぇ!!!」
気付いたら母さんに怒鳴っていた。
それから今まで押さえ込んできた言葉が次々と出てくる。
「母さんは俺の何を知ってんだよ!俺が今までどんなに苦しんできたか、分かるか!俺は比べられて兄貴に腹が立った。母さんにも親父にも腹が立った。俺は兄貴の弟でもねぇかもしれねぇのに何で優しくするんだよ!頑張らなくてもいいって何だよ。俺は母さんの子なのか?それすらも分かんねぇんだよ!!」
何を言っているか自分でも分からなかった。
「どうした?母さん。何かあったのか?」
駆けつけた兄貴が母さんを心配した。
俺のことなんて一切、心配してくれない。
こんな家族…
「虎も「だいっ嫌いだ!!!!」
さっきよりも数倍でけぇ声で叫んで俺は家出した。
兄貴が何かを言っていたけどもう、どうでもいい。
走って走って走って…気がついたら知らない公園のベンチに座っていた。
金もねぇ。親しい友達もいねぇ。泊まる場所がねぇ。
「何してんだか、俺は」
つい頭を抱えてしまった。
たしか今日は…俺の誕生日か。
いつも、祝ってくれていた。
忙しい親父も帰ってきていて。
「……はぁ」
「溜息なんて吐いたら幸せが逃げますよ?」
それは突然だった。びっくりしすぎて反応が遅くなった。
顔を上げると、麦わら帽子を被った10才くらいの女の子がいた。
おいおい…もう、夜の9時だぞ。
「迷子か?」
「どっちかっていうとあなたが迷子ですよね?」
薄明かりで女の子の顔がよく見えないがこてんと首を傾げている。
「俺が迷子ってどの辺が」
「誰かに見捨てられました?」
……迷子ってそういう意味だっけ?
「隣、良いですか?」
「おっおぅ…」
女の子が隣で「よいしょっ」と、可愛らしく言いながら座る。
「あなたの話、聞かせてくれますか?」
女の子がのぞき込むように俺を見た。
麦わら帽子を深く被っててよく見えねぇ。
「どんな話をすればいいか分かんねぇし」
「そうですね…では家族の話をしてください」
なんか勘が鋭いな、この子。
まぁでも、話せば気持ちも楽になるか。
「分かった。親父は仕事人間でいつも家に帰るのは深夜だ。でも、家族の誕生日とか記念日の日は必ず何かを買ってきて早く帰ってくる家族想いの親父だ。母さんは心配性で何度か詐欺にあっててお人好しだな。でも、家族を心から大切にしてくれてる。それに俺には兄貴がいてな!」
そこで口が止まる。俺は何を言ってるんだ。
熱弁している俺を女の子は頷いてくれていた。
「お兄さんはどんな方なんですか?」
「あっ兄貴は…頭が良くて、運動神経抜群で人望があってみんなから頼られる俺の…自慢の兄貴だ。でも…俺は今日、母さんにも兄貴にも酷いこと言って。何も出来やしねぇのに、勝手に自分の考え押しつけて。頭もわりぃし喧嘩するし俺は本当に……」
せみの声がうるさかったのに、遠くで鳴いてるみたいだ。
女の子が腕組みをして「う~ん」と唸っている。
よく見てみると、女の子の手や足にはあざが複数ある。
転んだ…のか?それにしては多いよな。
「そんなことありません」
自信のあるような声が聞こえた。
「はっ?お前、聞いてた?」
「聞いていました。あなたは…人の長所を見つけることが得意です。それに、家族の皆さんは気がついていると思いますよ?気がついているからこそ、大切にしてくれているんです。でもあなたはとても繊細で長所を見つけると自分の劣っている部分を責めてしまう。大切にしてくれている家族に対してもです。違いますか?」
言うことがいちいち大人っぽいな、この子。
「うっう~ん……?よく分かんねぇけど、そう言えば自分のこと責めてるな。でもさ、母さんにお前は頑張らなくていいって言われたことあってさ。そのとき勉強とか一生懸命頑張ってたからなんかやる気なくしてさ。俺は馬鹿だから頑張っても無理って言われたんだろうな」
すると横で深い溜息が聞こえた。おい。
「本当にバカなんですか?」
「そうだよ!馬鹿だよ、それが何だってんだ!」
イラッとした。こんな年下の子に馬鹿って言われた。むかつく。
「そりゃぁ、あなたのお母さんの言い方はダメです。でも、私の想像ですけど一生懸命、はたまに苦しそうに、やっているように見えるんです。もう、倒れそうな程に。お母さんは自分の子どもが倒れそうな勢いでやっていたら心配だってしてしまいます。それにあなたの話からとても心配性なんでしょうね。だから、お母さんは頑張らなくていい、いつものあなたでいてって思って言ったんじゃないかなぁと思うんです」
なんか…妙に納得してしまった。でも……
「俺と兄貴はもしかしたら兄弟じゃねぇかもしれねぇんだぜ?」
「何を根拠に言ってるんですか?戸籍ですか?親から言われたんですか?」
「いっいや…それは……でも、俺は兄貴とは性格が正反対だし」
するとまた、溜息が聞こえる。何だよ。
「人が違うのは当たり前。同じなんておかしいし出来ない。それって兄弟にも関係するんです。顔が違うかもしれない。性格や雰囲気も違う。かの有名な詩人も言っています、みんな違ってみんないい。でも、自慢ができるお兄さんがいるって素敵なことですよ?お兄さんも自慢の弟と思ってくれているはずです。それにきっと、あなたが家に帰れば家族の皆さんは怒るでしょう。でも、きっとおかえりと言ってくれるはずです」
立ち上がった女の子がくるっと一回転し、ニコッと笑った。
でも、とても悲しそうに笑っているような気がした。
「家に帰りましょう?頭も冷えたでしょう」
「そうだな。ありがとう、見ず知らずの…小学生?」
そう言うと、一瞬固まった女の子。あれ、違うのか?
「どういたしまして、見ず知らずの不良さん」
そう言った女の子は走ってどこかに行ってしまった。
名前…聞けば良かったな。
その後、家に着くとまず初めに親父から右の頬にビンタをされた。
それから兄貴に左の頬をビンタされた。
母さんはそれを見て急いで湿布を持ってきてくれた。
それから親父も母さんも兄貴も、
「「「おかえりなさい、誕生日おめでとう」」」
今まで散々迷惑掛けたのに笑顔で言ってくれる。
こんなダメな俺に優しく言ってくれる。
「たっ…ただいま」
俺は愛されてる。どうしようもない俺だけど愛されているんだ。
それが中3の夏だった。
それから兄貴の通う緋ノ光高等学園に志望校を決め、猛勉強した。
母さんにはまた心配されたけど、俺は兄貴の隣に立ちたい。
兄貴も忙しいのに、勉強に付き合ってくれた。
そして見事、合格。たくさんの友達と出会えた。
狼や兎ちゃん、クラスのみんなに。
でも…誰にだってトラウマってやつはあるらしい。
未だに比べられる言葉を覚えている。
母さんから言われた言葉も。
狼や兎ちゃんには知られたくない秘密だったのに。
でも、その秘密を兎ちゃんが取り除いてくれた。
『でも…私は虎君と話してる方が緊張しなくていいです。それに、虎君は面白いことを見つけるのが得意ですし。なんだかんだ、私も助かってます。それに、人が違うのは当たり前のこと。同じになんて出来ない。それは兄弟や姉妹にも関係することだと私は思うんですよね』
呑気にそんなことを言った兎ちゃんだったけど、俺にとっては忘れられない言葉だった。
無意識なのか、聞いていたのか、それとも……
言った本人なのか。
よく分からないけど、俺は2度助けられた。
俺は…必要とされている。自慢の兄貴もいる。
こんな嬉しいこと、どこ探したってきっと
見つけられねぇや。
15話に続く
今回は虎君の過去でした。兄弟ってよくありますよね。比べられること。でも、比べられてなんぼのもんじゃい!!!っていう人もいれば、虎君のように自分を責める人もいるかもしれません。皆さん、そんな人見つけたら話を聞いてあげてくださいね?さぁ、謎の女の子、登場!!皆さんは誰だか分かりますよね?では次の話もお楽しみに!!