第10話
2月から投稿してないから・・・・・・・・・・3ヶ月くらいが経ってるんだ~。いやホント、すみません。マジで。この3ヶ月の間、何をしていたかと申しますと・・・・・・動画とか他者様の小説を見ておりました。しゅみませんでした~~~!!!(土下座)では、本編へどうぞ!!
「わたっし、も…ぶっぶとうっかいに…いいいっ行きたっいで、です」
「カットォォォォォォォ!!!!」
「すすすすすすみませ~~ん!」
やけに響いた私の声は体育館に木霊する。
何でこういう時だけ大きな声が出るの。
今は体育館で劇の練習中。なんだけど……
自分で自分の出番をなくしてしまいました。
幸い、「シンデレラ」がいない劇が今、行われている。
なんかもう…申し訳ない気持ちでいっぱいでいっぱいで。
私はというと、もう体育館に並べられた、たくさんのパイプ椅子の端の方の椅子に座っている。
みんな、舞台の方にいるから凄く体育館が広く感じられる。
自分が小さいからでもあるんだけどね。
んっ?屋台の件はどうしたんだって?
言っても怒らないでね。って私、誰に言ってるんだろう。
あの後、先生が来たんだけどね……
「お前らなぁ!設計図を見える場所に置くなよなぁ。盗まれるぞ~!」
と、設計図を片手に持つ先生がいたのです。
それから、先生はみんなを肉食動物に変えてしまったのは言うまでもない。
で、それは昨日の話。先生は元気に学校に来ました。
「…さちゃん、うさちゃん!」
「へぁ?うわわわわ!!」
私は声のした方へ顔を向ける。
そこには鼻が付くか付かないかぐらいの距離まで近づいていた狼君の顔があった。
狼君は世間的にはイケメンの類いに入る。
だから、イケメンな顔が目の前にあると…
「しっ…心臓が止まるかと思いました」
「だって何度も呼んだのにボーッとしてたし」
狼君はいかにも自分は悪くないという感じだ。
しかし、ここで怒ってはいけない。
あとで面倒な事が起こるのは目に見えている。
こういう時は……
「それで、私に何かご用でもあるんですか?」
強引にでも、話題を変えるのが1番。
狼君は私が座っている椅子の隣に座り舞台を見る。
「いや、用ってわけじゃないんだけど…今、出番がないしさ」
そう言われ、舞台に目をやると「シンデレラ」のいない劇が続いている。
「頑張ってみるって言ったよね?」
そう言われ、ドキッとした。
「だっだって…迷惑かけてばっかりだし」
俯きながら聞こえないように呟く。
だけど狼君は耳が良いから聞こえるのは当たり前で。
「はぁ…またそんな事言って」
大きなため息を吐きながら言う狼君。
無防備な獲物に呆れているオオカミのようだ。
そんな獲物な私。
まぁ、その前に本能で動いて食べちゃうと思う、オオカミは。
「シンデレラ!お前は屋敷を全部、掃除しなさい!舞踏会になど行かせませんわ!」
聞こえた声ははっきりしてて大きくて堂々としていて。
私なんかが出せるわけないんだ。
「うさちゃんは怖いんだよ」
自信をなくしつつあった私にそんな言葉が聞こえてきた。
驚いて狼君を見る。
とても真剣な目をしている狼君。
それは動物なんか関係ないくらい誰もが動きを止めてしまう程の眼差しだった。
「人からの冷たい視線、自信をなくす言葉…そんなのに怯えているように俺は見える。違うか?」
身体が強張る。自然と目線が下に行く。
確かにそうだ。私はいろんな事に怯えている。
いつもいつも、人の目を気にしてばかりで。
でも、そうするしかないんだ。そうするしか……。
「別に自信がなくたっていいんだよ。人間ってさ、うさちゃんみたいな人が大半を占めてると思うし。それでも、成功しても失敗してもいいんだ。今、目の前のことに一生懸命していれば、誰かが気付いてくれる。俺はそう思うよ」
狼君は優しい笑みを浮かべて私の頭を撫でる。
やっぱり、狼君の手は大きくて優しくて温かくて。
春の太陽が私を包んでくれているみたい。
そうか…ようやく分かった。
「狼君はお母さんみたいです」
「……へっ?」
あれ?すごく間抜けな顔をしてる
そうか!説明をしなかったから分からないんだ。
「その…いろんな事に人生の先輩として相談に乗ってくれるお母さんみたいだなぁと思いまして……」
いつの間にか撫でてくれていた手が止まっている。
というより、狼君までもが止まっている。
何か衝撃的な事を言われたような感じだ。
「兎ちゃ~ん!!休憩は終わりですよ~!」
「はっは~い!それじゃぁ、出番なので行ってきます」
椅子から立ち上がり、狼君に一声かける。
っと、忘れるところだった。
「狼君、ありがとうございます」
よし!心の中のもやもやは少しだけ軽くなった。
みんなのためにも「シンデレラ」の役、頑張らなくちゃ!
―――――――――――――――――――――
放課後。
降り注いでいた太陽が空をたくさんの色で埋め尽くす真っ赤な夕日に変わる。
劇では私なりに頑張ってみた。
あいかわらず、小さな声で途切れ途切れになっちゃったけど。
でもその後、みんなが涙を流していたので私の頑張りが伝わったんだと思う。
で、今はセリフの練習中。
教室で1人、ブツブツと読んでるわけじゃない。
帰りのHRの時、みんなが私の為だけに放課後セリフの練習に付き合ってくれるのだ。ありがたい。
練習の時は男女2人だそうだ。
理由は分からないけど、聞いてくれる人が1人だと私が危ないらしい。
だから、ちゃ~んと聞いてくれる人がいる。
「おっお母っ様…てっ手紙をっ持って…まっまっ参り、ました」
「あまり緊張しないで。ゆっくり、はっきりと読むことが大切よ」
「はっはい、西明寺さん…」
そういうと、口角を控えめに上げる目の前の美人な同級生。
本当に高校生なのか疑いたくなる透き通るような肌と顔立ちの良さ。
黒髪を腰辺りまでストレートに伸ばしている。
「西明寺 狐子」。キツネが入っている。
苗字はいかにもお金持ちって感じだけど…その通りなんだよね。
有名な会社の社長の娘でありながら、漫画に出てくる傲慢さや我が儘なお嬢様じゃなくて今時の女子高生みたいな感じ。
本人曰く、「お父様やお母様の老後を考えれば我が儘なんて言ってられないわ!」と親思いの方で、涙を流さずにはいられなかった。
「兎さん?また考え事?」
「あっすみません!また物思いに耽ってしまって…」
「いいえ。気にしないで。いつもの事でしょう?」
そう言ってにっこり笑う西明寺さん。
眩しい。すっごいキラキラしてる。
思わず、台本に目線を変える。
オレンジがかった教室に2人だけ。
たくさんの物が置かれていても広く感じる。
もう1人の男の子は今、ジュースを買ってきてくれている。
「ふぅ…お母様…手紙を…持って…参りました」
「そうそう。じゃあ、次は繋げて言ってみて」
「はっはい。お母様、手紙を持って参りました……いっ言えた!」
顔を上げて、西明寺さんを見る。
「兎ちゃん、今は私1人だけど本番はたくさんのお客さんがいるのよ?」
「あっ」
わっ忘れてた~!あぁ…ダメだ。無理だ。
「ダメだとか無理だとか思ってるでしょ?」
「えっ!何で分かるんですか?」
「う~ん…顔に書いてあるからかな?」
それって…私が分かり易いってことですよね。知ってました。
「ねぇ…兎ちゃんは好きな人がいる?」
それは突然だった。
さっきまでいたずらっ子な口調とは打って変わって控えめで女の子らしい口調だった。
「いっいえ…私にはまだ、遠い話っていうかなんというか…そっそういう西明寺さんは?」
「いるわよ?」
机に肘をつく西明寺さん。
頬はほんのりと染まっていても、優しそうな笑みを浮かべている。
あっ…この顔、前にも何度か見たことがある。
頬は染まっていなくても、優しそうな笑みを浮かべる人。
「あっあの…失礼になるかもしれませんがその…好きな人って」
「雷怨会長。虎のお兄さんよ」
「へぇ…生徒会長で虎君のおに……お兄さん!?」
いろいろとツッコミどころ満載なんですが!
「えっと…整理させてくださいね。まず、西明寺さんの好きな人はこの学園の生徒会長である珀獣会長なんですね?」
「えぇ」
「珀獣 雷怨」。名前にライオンが入っている。
一言で表すと…まさに頂点に君臨する人って感じ。
1年生の時に生徒会長に立候補し、圧倒的な支持を得て見事、2年生を出し抜き生徒会長に。
2年生になった今でもその座を守り続けている。
さらに、勉強面でも運動面でも常に3位以内に入っている。
出し物の案を見せるため生徒会室に行った時、その堂々たる姿勢と威圧感に倒れそうになった。
さらにさらに、大手企業の社長の息子でもある。凄いね。
よし。ここからが本番だ。
「それで…虎君のお兄さんとは?」
「そのままの意味よ?珀獣 虎。彼の名前。知らなかったの?」
知るわけないじゃないですか~。教えてくれなかったし~。
「本当に分かり易いわね、兎ちゃんは」
フフッと上品な笑い方をする西明寺さん。
「私ってそんなに分かり易いですか?」
「分かり易すぎだよ、マジで」
「そうです…か…」
聞き慣れた声が後ろから聞こえる。
それから、机に種類の違う3つのジュースを置くその人。
そのまま、西明寺さんの隣の席に座る。
いっいつからいた!?
「2人が恋バナを始めた辺りからずっといたけど」
私の気持ちを察したのか、そう言った虎君。
あいにく、私はドアを背にしていたため気付かなかったらしい。
「はぁ…今まで兎ちゃんには隠してたのに、てめぇが余計な事言うから」
「あんたには言われたくないわ!口が軽いくせに」
「はっ、10年間もずっと兄貴に片想いしてきたお前が何を言ってんだか」
「それとこれとは関係ないでしょ!」
と、目の前で繰り広げられる口論という名の口喧嘩。
話を聞く限り、虎君は西明寺さんの好きな人を知っている。
ということしか分からなかった。
「あの…」
「「何!」」
「野菜ジュース…飲んでいいですか?」
耐えられないので、3つの中の1つを指差し、首を傾げ聞いてみる。
阿部さんが「兎ちゃんは首を傾げれば誰でも喧嘩をやめる!」とのこと。
「そっそうね。私も喉が渇いちゃった。いちごミルクちょうだい」
「じゃあ俺はコーヒーで」
阿部さん…本当だね!喧嘩が収まったよ!
「あっそうだ。忘れないうちに…」
「どうした?兎ちゃん」
近くに置いてあった自分の鞄から財布を取り、120円を手のひらにのせる。
「120円で足りますか?」
「うっ兎ちゃん!いいって、マジ」
「いえ…練習に付き合ってもらってますし、これくらいはさせてください」
「うっ…分かった。もらっとくわ」
私の手のひらから120円を取った虎君。
それをいちごミルクを飲みながら見つめる西明寺さん。
「お前は120円、払えよ」
「えっ!ちょっと私と兎ちゃんの態度が違うよね!」
「うるせぇよ。ほら、早く」
「分かったわよ!出せばいいんでしょ、出せば!」
とまた口論を始める2人。
それを野菜ジュースを飲みながら見つめる私。
私もこんなふうに誰かと話せたらなぁ……。
すると、目の前の2人の目がみるみるうちに見開いて。
「「微笑んでる…」」
「2人って息ピッタリですよねぇ」
そしてまた、野菜ジュースを飲む。
やっぱり、野菜ジュースは美味しいなぁ。
第11話に続く
最後の方は自分でも何を書いてるのか分かりつつも、「まぁいっか!」とかあったりします。またまた新キャラ登場でした!さらに!再び、会長の名前が登場!「雷怨」は苗字ではなく名前にしました!誤字・脱字がありましたらどうぞ言ってください!